UDI(機器固有識別子)とは何か

医療機器業界に携わる方なら、「UDI」という言葉を一度は耳にしたことがあるだろう。UDI(Unique Device Identification:機器固有識別)は、医療機器一つひとつを流通から使用まで一意に識別するための仕組みであり、米国では2013年9月24日公布のUDI最終規則(78 FR 58786)、欧州ではMDR(規則 (EU) 2017/745)第27条、そして日本では令和元年改正薬機法 第68条の2の5によって、いずれもすでに法的義務として確立している。本稿では、UDIの基本概念から、DIとPIの役割分担、表示要件、データベース登録、そして米国・欧州・日本の制度比較と実務への影響までを、一次情報にあたりながら整理する。

本稿の前提:本稿は2026年8月時点で確認できる一次情報(連邦官報・eCFR・EUR-Lex・厚生労働省通知・e-Gov法令データ)に基づいて記述している。UDIは各極で段階適用の途中にある制度であり、適用時期は機器のクラス・種別・包装階層によって異なる。自社製品への適用可否は、必ず最新の条文・通知にあたって確認されたい。

1. UDIとは何か――基本的な定義

UDI(Unique Device Identification:機器固有識別)とは、医療機器の流通から使用に至るまでの全過程において、その機器を適切に識別するための仕組みである。個々の機器に付与される識別子そのものは UDI(Unique Device Identifier:機器固有識別子)と呼ばれる。簡単に言えば、医療機器一つひとつに付けられる「身分証明書」のようなものだと考えれば理解しやすいだろう。

この「身分証明書」は、DI(Device Identifier:機器の種類を識別する固定部分)PI(Production Identifier:製造情報を識別する可変部分)の2つの要素で構成される。UDIは、FDAまたはFDA認定の発行機関(issuing agency)が運用する体系のもとで発行されなければならない(21 CFR §830.20(a))。米国でFDAが認定している発行機関は、GS1・HIBCC・ICCBBAの3機関である。

1-1. なぜUDIが必要になったのか

従来、医療機器の識別方法は製造業者ごとにバラバラであり、回収が必要になった際や不具合報告があった際に、迅速に対象機器を特定することが困難であった。UDIの導入により、この課題が大きく改善されることとなった。

UDI規則を公布した際、FDAはその目的を「流通と使用を通じて機器を適切に識別する体系を確立すること」と説明している。単なるラベルの体裁の問題ではなく、不具合報告・回収・市販後安全監視といった規制インフラ全体を支える識別基盤として設計された点が重要である。

本規則は、医療機器のラベルにUDIを表示することを求め、ラベラーは当該機器の製品情報をFDAの Global Unique Device Identification Database(GUDID)に提出しなければならない。本規則が確立する体系は、各医療機器のラベルおよび機器包装にUDIを表示すること、そして各UDIを平文(plain-text)の形式と自動識別・データ取得(AIDC)技術を用いた形式の双方で提供することを求める。UDIは、機器が複数回使用されることを意図し、かつ各使用前に再処理されることを意図している場合には、機器本体に直接表示されなければならない。
――Unique Device Identification System(最終規則)78 FR 58786、2013年9月24日(要旨訳)

2. UDIの構造――2つの重要な要素

UDIは、以下の2つの要素から構成される。

2-1. DI(Device Identifier:機器識別子)

DIは、ラベラー(製造業者など)と機器の特定のバージョン・モデルを識別する必須(mandatory)の固定部分である。同じモデルの医療機器であれば、すべて同じDIが割り当てられる。例えば、特定のメーカーの血圧計の特定モデルであれば、そのモデル全体に共通のDIが付与される。これにより、「どのような機器なのか」を特定することができる。

DIは単なる番号ではなく、データベース検索のアクセスキーとして機能する。GUDIDに格納された製品情報は、DIをキーとして引き出される。

2-2. PI(Production Identifier:製造識別子)

PIは、ロット番号、シリアル番号、製造日、有効期限などの変動情報を含む条件付き(conditional)の可変部分である。先ほどの血圧計の例で言えば、同じモデルであっても製造された時期やロットが異なれば、PIも異なる値となる。これにより、「いつ、どこで製造された機器なのか」を特定することができる。

ここで重要なのは、「PIに何を含めるか」を決めるのは規則ではなく、ラベルに何が書かれているかであるという規則の建て付けである。21 CFR §801.40(b) は、機器ラベルにロット番号・バッチ番号・シリアル番号・製造日・有効期限(およびHCT/Pの識別コード)のいずれかが記載されている場合には、UDIはそれらの情報を伝えるPIセグメントを含まなければならないと定めている。つまりPIは「ラベル記載事項の写し」として構成される

また、Class I機器については、UDIにPIを含めることを要しない21 CFR §801.30(d))。逆に言えば、Class I以外の機器では、ラベルにPI要素が表示されている場合は、必ずUDIのPI部分にも含めなければならない。

区分 DI(機器識別子) PI(製造識別子)
性格 必須(mandatory)・固定 条件付き(conditional)・可変
識別する対象 ラベラー+機器のバージョン/モデル 個々の製造単位(ロット・個体)
含まれる要素 発行機関の体系に基づくコード(GS1ならGTIN等) ロット/バッチ番号、シリアル番号、有効期限、製造日、HCT/Pの識別コード(§1271.290(c))
含める/含めない の判断 常に必須 ラベルに当該要素が記載されているかで決まる(§801.40(b))。Class Iは不要(§801.30(d))
変更が必要になるとき 新しいバージョン/モデルになったとき、新しい機器包装を作ったとき(§830.50)、再ラベル時(§830.60) ロット・個体が変わるたびに変わる
GUDIDへの登録 登録される(検索キーになる) 登録されない

この2つの組み合わせにより、医療機器の種類と個体の両方を正確に識別できる仕組みが実現されている。

2-3. 誤解しやすい点――DIを「割り当てる」のは誰か

「DIは発行機関が割り当てる」は正確ではない

  • 発行機関(issuing agency)は「UDIを発行するための体系(system)を運用する組織」である。21 CFR §830.3 は issuing agency を「FDAによって認定され、機器固有識別子の発行のための体系を運用する組織」と定義している。
  • 個々の機器にDIを割り当てるのはラベラー自身である。§830.50(a) は「機器に変更を加え、新たなバージョンまたはモデルとなった場合、あなた(ラベラー)は新たなDIを割り当てなければならない」と定め、§830.60(a) も再ラベル時に「新たなDIを割り当てる」義務をラベラーに課している。
  • FDAの「UDI Basics」も、UDIを作成するにはラベラーがFDA認定の発行機関に連絡すること、と説明している。つまりラベラーが発行機関の体系(企業コード等)を用いて、自らDIを設計・割り当てるのが正しい理解である。
  • したがってDIの一意性・再利用禁止・変更管理の責任はラベラーにある。§830.40(c) は、廃止したバージョン/モデルのDIを別の機器に再割当てすることを禁じている。

2-4. ラベラーとは誰か

UDI規則の名宛人は「製造業者」ではなく「ラベラー(labeler)」である。§830.3 の定義によれば、ラベラーとは「その後にラベルの差替え・変更が行われないことを意図して、機器にラベルを貼付させる者」および「その後にラベルの差替え・変更が行われないことを意図して、機器のラベルを差し替え・変更させる者」をいう。

FDAは、多くの場合ラベラーは製造業者であるが、仕様開発業者、単回使用機器の再製造業者、コンビニエンスキットの組立業者、再包装業者、再ラベル業者もラベラーになり得ると説明している。自社が「製造業者ではないから関係ない」と早合点しないよう注意が必要である。

3. 表示要件――どのように記載するのか

UDIは、以下の場所への表示が求められる。

  • 機器のラベル
  • 機器の包装(device package。ただし出荷用のシッピングコンテナは対象外――§801.30(c))
  • 機器本体(該当する場合)

3-1. 2つの形式での表示

表示方法も規則で定められている。UDIは2つの形式で記載される必要がある(§801.40(a))。

プレーンテキスト形式(easily readable plain-text)

人間が目視で確認できる通常の文字列での表示である。医療従事者が直接確認できることが重要な場合に有効である。

機械読取可能な形式(AIDC)

バーコードやQRコード(二次元シンボル)など、スキャナーで読み取れる形式での表示である。これにより、手作業によるエラーを防ぎ、迅速な情報入力が可能になる。§830.3 はAIDCを「UDIまたはDIを、自動化されたプロセスによって電子診療記録その他のコンピュータシステムに入力できる形式で伝えるあらゆる技術」と定義している。

なお、AIDC技術の存在がラベルや包装を目視しただけでは分からない場合には、AIDC技術が存在する旨をラベルまたは包装に開示しなければならない(§801.40(c))。

3-2. 見落とされがちな「日付の標準形式」

UDI規則は、しばしば見落とされるもう一つの表示義務を課している。21 CFR §801.18 による日付表記の標準化である。FDAは、機器ラベルおよび包装上の日付を国際標準・国際慣行に整合した形式(YYYY-MM-DD)で表示することを求めている。しかもこの要件は、UDI表示が免除されている機器にも適用される(最終規則の適用期日表は、2018年9月24日以降、UDI表示を免除された機器を含むすべての機器のラベル上の日付が §801.18 の形式に従わなければならないとしている)。

3-3. 機器本体への直接表示(direct marking)

機器本体への表示は、複数回使用されることを意図し、かつ各使用前に再処理(洗浄・滅菌など)が必要な機器に限り、直接マーキングが要求される(§801.45(a))。この要件もリスククラスに応じた段階的な施行が適用された。

直接表示に用いるUDIは、ラベル上のUDIと同一でもよいし、包装された機器と区別するために別のUDIを用いてもよい(§801.45(b))。形式は、プレーンテキストとAIDCのいずれか、または双方でよい(§801.45(c))。

direct marking で誤解しやすい2点

  • 植込み型機器は直接表示の対象ではない。植込み型機器は通常「各使用前に再処理される複数回使用機器」に当たらないため、§801.45(a) の要件がかからない。FDAも「植込み型機器はUDIの直接表示を要しない」と明示している(UDI FAQ Vol.1)。「リスクが高い=直接表示が必要」ではない。
  • 免除は4類型に限られる(§801.45(d))。①いかなる直接表示も機器の安全性・有効性を阻害する場合、②技術的に直接表示が不可能な場合、③単回使用機器であって追加の単回使用のために追加の加工・製造を受けるもの、④既に(a)に基づき表示済みのもの。
  • 免除を使うなら、その根拠を設計文書に残さなければならない(§801.45(e))。後述するとおり、この条項の参照先は2026年2月2日付でQMSRの「設計開発ファイル」に変更されている。

3-4. スタンドアロンソフトウェア

包装形態で流通しないスタンドアロンソフトウェア(ウェブサイトからのダウンロード等)は、①起動時に表示される平文の表示、または②メニューコマンド(「バージョン情報」等)から表示される平文の表示のいずれか、または双方によってUDIを提供すれば、UDI表示要件を満たしたものとみなされる(§801.50)。この場合、PIにはバージョン番号を用いる。

3-5. UDI表示が不要な機器(§801.30)

UDI表示には11類型の一般的例外がある。主なものは次のとおりである。

  • 適用期日より前に製造・ラベル貼付された完成機器(当該例外は適用期日から3年で失効する)
  • FDAが規則によりQMSR(21 CFR Part 820)の要求から除外したClass I機器(ただし §820.35 の記録管理の継続要求は除く)
  • 単一の機器包装にまとめて流通される同一バージョン/モデルの単回使用機器群(植込み型機器には適用不可。包装自体にはUDIが必要)
  • 研究・教育・化学分析専用で臨床使用を意図しない機器
  • カスタム機器(§812.3(b))、治験機器(Part 812)
  • 輸出専用機器、獣医用機器
  • コンビネーション製品またはコンビニエンスキットの一次容器内に包装された機器(当該製品・キットのラベルにUDIがあること)
  • NDC番号が適正に表示されたコンビネーション製品(§801.30(b))

また、Class I機器のラベルおよび包装にUPC(Universal Product Code)が表示されている場合、そのUPCがUDIとして機能するものとみなされる(§801.40(d))。

4. データベースへの登録――UDIの「もう半分」

UDIは、ラベルへの表示だけでは完結しない。識別子と製品情報を結びつけるデータベースへの登録があってはじめて機能する。この点は、UDIを「バーコード対応」の問題と捉えていると見落としやすい。

4-1. 米国――GUDID

FDAでは、GUDID(Global Unique Device Identification Database)への情報提出が義務づけられている。これは単なるラベル表示以上の重要な規制要件である。

ここで正確に理解しておきたいのは、提出するのは「DIだけ」ではないという点である。21 CFR §830.310 は、ラベラーに関する情報(ラベラー名、連絡先、使用している発行機関名)に加えて、UDIを表示する各バージョン/モデルについて14項目の情報の提出を求めている。主なものは次のとおりである。

  • UDIのうちDI部分(新旧DIの置換を報告する場合は従前のDIも)
  • §801.45により機器本体への恒久的表示が必要な場合、そのDIがラベル上のDIと同一である旨、または本体表示上のDI
  • ラベル上の販売名・商標名、バージョン/モデル番号
  • 滅菌済みである旨、天然ゴムラテックス使用の旨
  • MRI環境での安全性に関する情報
  • サイズと単位、ラベル上に現れるPIの「種類」
  • 市販前届出・承認番号(または届出免除である旨)、FDA登録リスト番号
  • GMDN(Global Medical Device Nomenclature)の用語またはコード
  • 機器包装に含まれる個々の機器の総数

一方で、GUDIDにPIは格納されない。FDAは「GUDIDはUDIを持つ各機器の基本的な識別要素の標準セットを含み、DIのみを含む。DIはデータベース内の機器情報を取得するキーとして機能する。GUDIDはPIを含まない」と明記している。したがって「GUDIDを見ればロット単位の所在が分かる」という理解は誤りである。GUDIDは製品カタログであって、個体追跡データベースではない

提出方法は、①GUDIDウェブアプリケーションによる手入力、②FDA Electronic Submissions Gateway を経由した HL7 SPL(Structured Product Labeling)形式のXMLファイル提出、の2通りである。提出には事前にGUDIDアカウントの取得が必要である。提出期限は、当該機器のラベルがUDIを表示しなければならない日まで(§830.330(a))、変更時は変更後の表示を行う日まで(ラベルに現れない情報の変更は10営業日以内)である(§830.330(b))。

なお、GUDIDの内容は、FDAと米国国立医学図書館(NLM)の連携により AccessGUDID として一般公開されており、患者・介護者・医療従事者・医療機関・産業界の誰もが検索・ダウンロードできる。

4-2. 欧州――EUDAMED

EUでは、UDI情報をEUDAMED(European Database on Medical Devices)のUDIデータベースに登録することが求められる(MDR 第28条・第29条)。製造業者は、上市前にUDIを割り当て、Annex VI Part B の中核データ要素をUDIデータベースに提出しなければならない(MDR 第27条(3))。

EUDAMEDについては、長らく「いつ義務化されるのか」が不透明であったが、2025年11月26日の欧州委員会決定 (EU) 2025/2371(2025年11月27日官報公示)により、①経済事業者登録(Actors)、②UDIデータベースおよび機器登録(UDI and devices)、③ノーティファイドボディおよび証明書、④市場監視――の4つの電子システムが「機能的であり、機能仕様を満たしている」ことが確認された。

MDR 第123条(3)(d) により、これらの電子システムに関する義務は公示日から6か月後に適用される。さらに同(e)により、製造業者は公示日から12か月以内に第29条に基づく情報をEUDAMEDに入力しなければならない(公示から6か月後以降に上市される機器が対象)。つまりEUDAMEDへの登録は「これから」ではなく、すでに具体的な期限が走り始めた段階にある

補足:EUDAMEDには、UDI-PIは格納されない。MDR 第28条(2)は「UDIデータベースは、UDI-PIおよび商業上機密の製品情報を含むことができないよう設計されなければならない」と定めている。この点は米国GUDIDと同じ設計思想である。

4-3. 日本――医療機器データベース

日本では、令和4年9月13日付通知(医政産情企発0913第2号・薬生安発0913第2号)の実施要項8において、医療機器等の製造販売業者等は、特定用符号を表示した製品を出荷する段階で、公開されている医療機器データベースに当該製品に係るデータを登録することとされている。実務上は、一般財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)が運営する医療機器データベース、または一般社団法人日本歯科商工協会が管理する歯科用医療機器データベースが用いられる。

ここが米国・欧州との制度上の大きな違いである。GUDID・EUDAMEDが規制当局が運営する法定データベースであるのに対し、日本の医療機器データベースは民間団体が運営し、登録は通知(実施要項)に基づくという建て付けになっている。薬機法第68条の2の5が法的に義務づけているのは、あくまで「符号の容器への表示」である。

5. 米国・欧州・日本のUDI制度比較

米国FDAに続き、欧州と日本でもUDI制度がすでに法制化され、施行されている。「導入されつつある」という段階ではない。日本の読者にとって最も実務的な価値があるのは、この3極の制度の「同じところ」と「違うところ」を押さえることである。

5-1. 3極比較表

項目 米国(FDA) 欧州(EU) 日本
根拠法令 21 CFR Part 801 Subpart B/Part 830
(UDI最終規則 78 FR 58786、2013年9月24日公布)
MDR(規則 (EU) 2017/745)第27条・第28条・第29条、Annex VI Part B/C
IVDR(規則 (EU) 2017/746)第24条ほか
薬機法 第68条の2の5
薬機法施行規則 第228条の10の10
(令和元年法律第63号による改正、令和元年12月4日公布)
識別子の呼称 UDI=DI+PI UDI=UDI-DI+UDI-PI
これに加えてBasic UDI-DI(機器モデルの主識別子。EU適合宣言書と証明書に記載)とUnit of Use DIという独自概念がある
特定用符号商品コード製造識別子
(法令上「UDI」の語は用いられていない)
発行機関 FDA認定の3機関:GS1/HIBCC/ICCBBA
(FDAが自ら発行機関となる場合もある――§830.200)
欧州委員会が指定した4機関:GS1 AISBL/HIBCC/ICCBBA/IFA GmbH
(実施決定 (EU) 2019/939、2019年6月6日)
GS1のみ。商品コードはGTIN(GTIN-13/GTIN-14/GTIN-12)に限定
DI/符号を割り当てる主体 ラベラー(発行機関の体系を用いて自ら割り当てる) 製造業者(MDR Annex VI Part C 2.2「製造業者は自社機器の固有のUDIを割り当て、維持しなければならない」。同2.3「UDIを機器または包装に表示できるのは製造業者のみ」) 製造販売業者(GS1事業者コードの取得が前提)
データベース GUDID(FDA運営・法定)
一般公開は AccessGUDID(NLMとの連携)
EUDAMED のUDIデータベース(欧州委員会運営・法定)
中核データ要素は無償で一般公開(MDR 第28条(3))
医療機器データベース(MEDIS-DC運営)/歯科用医療機器データベース(日本歯科商工協会)
民間運営・通知ベース
PIのデータベース格納 格納しない(DIのみ) 格納しない(MDR 第28条(2)で明示的に排除) 格納しない(製品マスタ情報の登録)
表示形式 プレーンテキスト+AIDCの両方が必須(§801.40(a)) UDIキャリア(AIDC+HRI)。表示スペースの制約が大きい場合はAIDCのみで可。ただし在宅等で使う機器はHRIを優先(Annex VI Part C 4.7) バーコードまたは二次元コード:GS1-128シンボルまたはGS1データマトリックス(当面、GS1データバー限定型・二層型等の継続使用を認める経過措置あり)
本体への直接表示 義務。複数回使用され、各使用前に再処理される機器(§801.45)。免除は4類型 義務。「再使用可能な機器は機器本体にUDIキャリアを表示しなければならない」(Annex VI Part C 4.10)。患者使用の間に洗浄・消毒・滅菌・再生処理を要する機器では恒久的かつ各処理後も読取可能であることを要する。免除は2類型(安全性・性能の阻害/技術的に不可能) 法令上の義務なし。令和4年通知の表は個装・販売包装・元梱包装の3階層のみを対象としており、本体直接表示は求めていない
包装階層 ラベルおよび各機器包装。シッピングコンテナは対象外(§801.30(c)) ラベルおよびすべての上位包装。シッピングコンテナは対象外(第27条(4)) 個装/販売包装/元梱包装の3階層。法定義務は販売包装、元梱包装は通知に基づく必須、個装は機器区分により必須または任意
日付形式の標準化 あり(§801.18、YYYY-MM-DD)。UDI免除機器にも適用 MDRはAnnex I の情報要件で規律 製造識別子の有効・使用期限は YYMMDD形式(ISO 8601)で表示(令和4年通知 実施要項5)

5-2. クラス別・段階適用の年表(米国)

米国のUDI規則は、公布日を起点として5段階で適用された。以下は最終規則 Table 6(78 FR 58816)に基づく。

適用日 UDI表示・GUDID登録・日付形式(§801.20/§801.50/§830.300/§801.18) 本体直接表示(§801.45)
2014年9月24日
(公布1年後)
Class III機器、PHS法に基づく承認を受けた機器
2015年9月24日
(2年後)
植込み型・生命維持・生命支持機器 生命維持・生命支持機器
2016年9月24日
(3年後)
Class II機器 Class III機器
2018年9月24日
(5年後)
Class I機器および未分類機器
※日付形式(§801.18)はUDI免除機器を含む全機器に適用
Class II機器
2020年9月24日
(7年後)
Class I機器および未分類機器

「制度が始まった年」と「自社の機器に適用された年」は違う

  • UDI最終規則の公布は2013年9月24日、発効は2013年12月23日(一部の条項は2013年10月24日発効)である。しかし実際に自社製品にUDIが必要になった日は、機器のクラスによって2014年から2020年まで6年の幅がある
  • さらに、FDAはClass I機器および未分類機器(植込み型・生命維持・生命支持機器を除く)について、2022年7月22日付の最終ガイダンスで執行方針を公表し、UDI表示・日付形式・直接表示については2022年9月24日より前、GUDID登録については2022年12月8日より前は執行しないとした。つまりClass I機器の実質的な適用は2018年ではなく2022年である
  • レガシー識別番号(NDC/NHRIC)については、2023年9月24日以降にラベル貼付される機器では使用できない(§801.57、およびFDAの2022年10月19日付更新)。

5-3. クラス別・段階適用の年表(欧州)

EUは、UDIキャリアの表示義務(MDR 第27条(4))について、機器のクラスごとに適用日を分けている(MDR 第123条(3)(f)(g))。IVDについてはIVDR 第113条(3)(e) が別の日程を定めている。

機器区分 UDIキャリアのラベル表示 再使用可能機器の本体直接表示
植込み型機器・Class III 2021年5月26日 2023年5月26日
Class IIa・Class IIb 2023年5月26日 2025年5月26日
Class I 2025年5月26日 2027年5月26日
IVD Class D 2023年5月26日
IVD Class B・C 2025年5月26日
IVD Class A 2027年5月26日

なお、欧州委員会が発行主体(issuing entity)を指定するまでの間、GS1・HIBCC・ICCBBAは指定されたものとみなされていたが(MDR 第120条(12))、2019年6月6日の実施決定 (EU) 2019/939 により、これら3機関にIFA GmbHを加えた4機関が正式に指定された。指定は2019年6月27日から5年間有効で、更新可能とされている。

5-4. 日本の適用時期

対象 適用時期
医療機器(コンタクトレンズを除く)、体外診断用医薬品、医療機器以外の消耗材料 令和4年(2022年)12月1日以降に製造販売業者(消耗材料は発売元)が出荷判定する製品より適用
医療機器(コンタクトレンズに限る) 令和7年(2025年)12月1日以降に製造販売業者が出荷判定する製品より適用

なお、コンタクトレンズは薬機法第68条の2の5の適用対象外であるが、令和4年通知は自主的取組みの対象として扱っている。

6. 日本のUDI制度をもう少し詳しく

日本の制度は、米国・欧州とは用語も建て付けも異なる。日本の医療機器メーカーにとっては、ここが最も実務に直結する部分である。

6-1. 根拠条文

(医薬品、医療機器又は再生医療等製品を特定するための符号の容器への表示等)
第六十八条の二の五 医薬品、医療機器又は再生医療等製品の製造販売業者は、厚生労働省令で定める区分に応じ、医薬品、医療機器又は再生医療等製品の特定に資する情報を円滑に提供するため、医薬品、医療機器又は再生医療等製品を特定するための符号のこれらの容器への表示その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。
――医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第68条の2の5

この条文は、令和元年法律第63号(令和元年12月4日公布)による改正で新設された。厚生労働省令に委任された部分は薬機法施行規則 第228条の10の10が定めており、容器等の記載面積が狭い場合は添付文書への記載、構造・性状により容器等に収められない機器は使用者が情報を把握できる方法による提供、電気通信回線を通じて提供される医療機器プログラムは提供前の情報提供または電磁的記録の併せ提供――といった措置が規定されている。輸出用医療機器については薬機法施行令第74条の2第2項により表示不要とされている。

6-2. 用語――「商品コード」と「製造識別子」

令和4年9月13日付通知の実施要項は、次のように定義している。

  • 商品コード:医療機器等の個々の包装単位及び製品本体を一意に識別する固定的情報。GS1の識別コードであるGTIN(GTIN-13=いわゆるJANコード、GTIN-14、GTIN-12)とする。=DIに相当
  • 製造識別子:有効・使用期限及びロット番号又はシリアル番号(医療機器プログラムにおいてはバージョン番号)等の製造固有の可変情報。=PIに相当

包装階層も、日本独自の3区分で定義されている。

  • 個装:包装されている荷姿の中で一番小さい荷姿の単位で、内容物を直接包装している容器又は被包
  • 販売包装:通常、卸売販売業者等から医療機関等に販売される最小の包装単位(最小販売単位)
  • 元梱包装:通常、製造販売業者で販売包装を複数梱包した包装

6-3. どの階層に何を表示するのか

機器区分 個装 販売包装 元梱包装
特定保険医療材料に該当する医療機器
(植込み型/単回使用/再使用可能)
商品コード・製造識別子とも◎(通知に基づき必須) 商品コード・製造識別子とも●(法第68条の2の5に基づき必ず表示) 商品コード・製造識別子とも
上記以外の高度管理医療機器・特定保守管理医療機器 ○(任意)
上記以外の医療機器 ○(任意) 商品コードは、製造識別子も(ただし個装が最小販売単位の場合、販売包装の製造識別子は任意)
体外診断用医薬品 ○(任意)
専ら医療機関で医療用に繰り返し使われる消耗材料 ○(任意) 商品コード/製造識別子○ 商品コード/製造識別子○

記号の意味は、●=法第68条の2の5に基づき必ず表示するもの、◎=通知に基づき必ず表示するもの、○=任意表示である。つまり法的義務の中核は「販売包装への表示」であり、それ以外は通知に基づく取組みという構造になっている。この「●と◎の違い」は、査察・監査の場で問われたときに説明できるようにしておきたい。

6-4. 日本での普及状況

厚生労働省は、一般社団法人日本医療機器産業連合会(JFMDA)の協力を得て「医療機器等における情報化進捗状況調査」を実施している。令和6年(2024年)7月2日公表・令和4年(2022年)9月末時点の結果は次のとおりであった。

区分 JANコード取得割合 データベース登録割合 バーコード表示割合
(販売包装単位)
バーコード表示割合
(個装単位)
医療機器全体 99.8% 93.5% 99.6% 91.9%
特定保険医療材料 100.0% 98.5% 100.0% 98.4%
消耗材料 96.5% 58.0% 90.5%
体外診断用医薬品 100.0% 82.0% 99.7% 99.2%
この数値の読み方:調査主体は厚生労働省(JFMDAの協力による)、調査時点は令和4年9月末、母集団は調査対象企業638社(うち医療機器537社)、有効回答は420社(同331社)で回収率は全体65.8%(医療機器61.6%)である。回答企業ベースの集計であり、業界全体の実態を完全に反映したものではない点に留意されたい。なお、参考値として記載されている「本体直接表示」の割合は、特定保守管理医療機器で32.9%にとどまっている。前述のとおり日本には本体直接表示の法令上の義務がないため、これは自主的取組みの水準を示す数字である。

6-5. 日本の制度と国際制度のギャップ

海外展開を行う日本メーカーにとって、次の3点は特に注意を要する。

  1. 本体直接表示の有無日本では法令上の義務がないが、米国では §801.45、EUではAnnex VI Part C 4.10 により、再使用可能/再処理される機器に本体表示が要求される。国内向けの設計のままでは米国・EUに出せないことがある。しかも直接表示は設計そのものに影響するため、後工程での追加が難しい。
  2. 発行機関の選択肢日本はGS1一択だが、米国はGS1/HIBCC/ICCBBA、EUはこれにIFA GmbHを加えた4機関から選べる。既にGS1で運用しているなら3極で共通化できる可能性が高いが、1つのバージョン/モデルに対して1つの体系からは1つのDIしか使えない(§830.40(a))点に注意が必要である。
  3. データベース登録の位置づけ日本の医療機器データベース登録は通知ベースだが、米国GUDID・EUのEUDAMEDは法定の提出義務であり、記載内容の誤りに対する当局の是正要求権限まで規定されている(§830.350)。国内の運用感覚のまま海外対応すると、データ品質管理の作り込みが不足しやすい。

7. UDI導入がもたらす実務への影響

7-1. トレーサビリティの確保

UDIの最も重要な効果は、医療機器のトレーサビリティ(追跡可能性)の向上である。従来は機器の流通経路を追跡することが困難であったが、UDIにより製造から使用まで、どの機器がどこにあるのかを正確に把握できるようになった。

なお、日本のQMS省令においても、第47条(識別)で製品の識別に係る手順の文書化が、第48条(追跡可能性の確保)で追跡可能性の範囲と保管すべき記録の設定が、第49条で植込医療機器に係る製品の出荷後の追跡可能性の確保が、それぞれ求められている。UDIは、これらのQMS上の識別・追跡可能性要求を実装する手段として位置づけられる。

7-2. 迅速な回収対応

不具合が発見され、特定のロットの機器を回収する必要が生じた場合、UDIがあれば対象機器を迅速に特定できる。これにより、患者の安全を守るための対応速度が大幅に向上した。

EUでは、この点が条文レベルで明示されている。MDR 第27条(5)は「UDIは、第87条に基づく重大インシデントおよび是正措置(FSCA)の報告に用いられなければならない」と定めている。つまりUDIは、ビジランス報告の共通言語として設計されている。

7-3. 在庫管理の効率化

医療機関においても、UDIを活用することで医療機器の在庫管理が効率化される。バーコードスキャンにより、機器の入出庫管理や使用期限管理が自動化でき、人的エラーの削減にもつながる。

EUでは、Class III植込み型機器について、経済事業者および医療機関にUDIの保存・保管義務が課されている(MDR 第27条(8)(9))。それ以外の機器についても、加盟国は医療機関に対しUDIの電子的保存を奨励し、または義務づけることができる。UDIは「メーカーが表示して終わり」ではなく、医療現場での記録に組み込まれてはじめて価値を生むという設計思想が読み取れる。

7-4. データベース登録義務

前述のとおり、FDAではGUDIDへの提出、EUではEUDAMEDへの登録が求められる。これらのデータベースにより、規制当局や医療機関が機器情報にアクセスできるようになり、より広範な安全管理が可能となる。日本では医療機器データベースへの登録がこれに相当する。

8. UDIは査察でどう見られるか

UDIを「ラベル部門の仕事」と考えていると、査察の場面で足をすくわれる。UDIはFDAの医療機器査察において明示的に確認対象とされているからである。

FDAが2026年2月2日から運用しているコンプライアンスプログラムCP 7382.850は、QMSRの要求事項を「6つのQMS Areas」と「4つのOAFRs(Other Applicable FDA Requirements:その他の適用されるFDA要求事項)」に整理している。この4つのOAFRsの1つが、まさに Unique Device Identification(21 CFR Part 801 Subpart B・21 CFR Part 830)である。査察手法そのものについては、別稿「FDA医療機器査察の新時代――QSITからの転換」で詳述しているのでそちらを参照されたい。

実務上、次の点が確認対象になり得ると考えておくべきである。

  • DI割当ての管理手順――どのような変更が新DIを要するかを社内で定義し、運用しているか(§830.50)
  • UDI記録の保管――ラベラーは、UDIを表示すべき機器に使用した全UDIと、各DIに紐づくバージョン/モデルを示す記録を保管し、FDAの要求に応じて提出しなければならない。保管期間は、当該バージョン/モデルの販売を終了した日から3年間である(§830.360)
  • GUDIDデータの正確性――FDAは、GUDIDの情報が誤りまたは誤解を招くおそれがあると判断した場合、ラベラーに通知し、30日以内の訂正または説明を求めることができる(§830.350)
  • 直接表示の免除根拠の文書化――§801.45(d) の免除を用いる場合、その根拠を設計文書に記録しなければならない(§801.45(e))

2026年2月2日から、§801.45(e) の参照先が変わった

  • 従来、§801.45(e) は直接表示の免除根拠を「§820.30(j) が要求する設計履歴ファイル(DHF)」に文書化せよと定めていた。
  • 連邦官報 90 FR 55978(2025年12月4日公布、2026年2月2日施行)の「Medical Devices; Quality Management System Regulation Technical Amendments」により、この参照先は「§820.10(c) が要求する設計開発ファイル(design and development files)」に改められた。
  • 同じ技術的修正により、§801.30(a)(2)(QMSR免除Class I機器のUDI例外)の参照先も、旧QSRの §820.180・§820.198 から、QMSRの §820.35(記録の管理)に変更された。
  • FDAはこれを「非実質的・編集上の変更」と説明しており、新たな要求を課すものではない。しかし社内手順書やラベル関連SOPが旧条番号を引用したままだと、査察で指摘を受け得る。QMSR移行に伴う文書改訂の対象リストに、UDI関連手順書を必ず含めておきたい。

QMSRとISO 13485:2016の関係については「ISO 13485:2016とQMSRとの差異」を、施行前記録の扱いについては「なぜ事後法が適用されたのか」を併せて参照されたい。

▲【動画】FDA規制・査察の基礎とQMSRへの対応およびQMS構築の実践ポイント(株式会社イーコンプライアンス)

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9. 実践的な導入アプローチ

  1. ステップ1:対象機器の特定まず、自社が扱う医療機器のうち、UDI表示が必要な機器を特定する。FDAの規則では、リスククラスに応じて段階的な導入スケジュールが定められているため、優先順位を明確にすることが重要である。
    あわせて確認すべきなのは、①自社がラベラーに当たるか(仕様開発業者・再包装業者・再ラベル業者も該当し得る)、②§801.30の例外に当たらないか、③§801.45の直接表示が必要な機器を含んでいないか――の3点である。とりわけ③は設計に跳ね返るため、最初に洗い出しておきたい。
  2. ステップ2:システム対応の準備UDIを管理するためのシステム構築が必要になる。既存の製造管理システムや在庫管理システムとの連携を考慮しながら、効率的な運用体制を整備する必要がある。
    ここで見落とされやすいのがGUDID/EUDAMEDへ提出するデータの「マスタ」をどこに置くかである。§830.310が求める14項目(滅菌の有無、天然ゴムラテックスの有無、MRI適合性、GMDNコード等)は、設計・薬事・製造・物流の各部門に散在していることが多い。どの部門が正となるデータを持ち、変更をどう検知して10営業日以内に更新するかを、手順として決めておく必要がある。データの正確性そのものが規制要求である点は、データインテグリティの考え方と共通する(「メタデータとは何か」も参照)。
  3. ステップ3:ラベル・包装の変更実際の機器ラベルや包装にUDIを表示するための変更作業を行う。この際、プレーンテキストと機械読取可能な形式の両方を適切に配置することが求められる。
    加えて、日付表記を §801.18 の標準形式(YYYY-MM-DD)に揃える作業を忘れないこと。この要件はUDI表示が免除される機器にも及ぶため、「UDI対象外だから何もしなくてよい」という判断は誤りである。また、ラベル変更は設計変更・変更管理の対象であり、新DIの要否判断(§830.50)とセットで管理しなければならない。

10. 今後の展望

UDIは、単なる規制対応にとどまらず、医療機器業界全体のデジタル化を推進する基盤となっている。今後は、以下のような発展が期待される。

10-1. グローバルな標準化

米国FDAに続き、欧州や日本など各国・地域でもUDI制度が導入され、いずれもすでに施行段階に入っている。将来的には、グローバルで統一された識別システムが実現する可能性がある。

この方向での国際的な調整は、規制当局レベルですでに始まっている。国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)は、次の2つの技術文書を発行済みである。

文書コード タイトル 発行日
IMDRF/UDI WG/N7FINAL:2013 UDI Guidance: Unique Device Identification (UDI) of Medical Devices 2013年12月18日
IMDRF/UDI WG/N48FINAL:2019 Unique Device Identification system (UDI system) Application Guide 2019年3月21日

N48はN7の原則を踏まえ、「UDI体系の適用について国際的に調和されたアプローチを促進する」ことを目的として策定された適用ガイドである。IMDRFの当該ワーキンググループは既に作業を完了している。米国のDI/PI、EUのUDI-DI/UDI-PI、日本の商品コード/製造識別子が、いずれも同じ「固定部分+可変部分」という構造を採っているのは、この国際調和の成果である。

もっとも、完全な統一にはまだ距離がある。EU独自のBasic UDI-DIのように一極にしか存在しない概念があり、日本のように本体直接表示を義務づけていない制度もある。「UDIは国際共通だから一つ対応すれば済む」という前提は、現時点では成り立たない。

10-2. データ活用の拡大

UDIによって収集されるデータを分析することで、医療機器の使用実態や不具合傾向をより詳細に把握できるようになる。これは、製品改良や新製品開発にも活用できる貴重な情報源となる。米国ではAccessGUDIDが誰でも利用できる形で公開されており、EUでもEUDAMEDの中核データ要素が無償で一般公開される(MDR 第28条(3))。

10-3. 患者安全の更なる向上

医療機器の識別精度が高まることで、誤使用や取り違えなどのリスクが低減される。また、電子カルテとの連携により、患者ごとにどの機器が使用されたかを正確に記録できるようになる。EUがClass III植込み型機器について経済事業者・医療機関にUDIの保存義務を課しているのは、まさにこの「患者と機器の紐づけ」を制度的に担保するためである。

MDR 第121条は、欧州委員会に対し、2027年5月27日までに規則の適用状況を評価し報告することを求めており、その際「経済事業者・医療機関・医療従事者によるUDIの保存を通じた医療機器のトレーサビリティ」に特別の注意を払うこととしている。UDIが実際に患者安全に寄与しているかどうかが、制度として検証される段階に入る。

まとめ――5つのポイント

  1. UDIはDIとPIの2階建てDIは「どのモデルか」を、PIは「いつ・どのロットか」を示す。PIに何を含めるかはラベル記載事項で決まる(21 CFR §801.40(b))。Class IはPI不要(§801.30(d))。
  2. DIを割り当てるのはラベラー自身発行機関(GS1・HIBCC・ICCBBA)は「発行のための体系を運用する組織」であり、個々の機器へのDI割当てと変更管理の責任はラベラー/製造業者にある(§830.50・§830.60、MDR Annex VI Part C 2.2)。
  3. 3極とも「すでに施行済み」米国は2013年公布・2014〜2020年(Class Iは執行方針により実質2022年)、EUは2021〜2027年でクラス別に適用、日本は2022年12月1日から薬機法第68条の2の5に基づく法的義務である。「導入されつつある」段階ではない。
  4. 日本の制度は3つの点で国際制度と異なる①本体直接表示の法令義務がない、②発行機関はGS1のみ、③データベース登録は民間運営・通知ベース。海外展開時はこのギャップが設計・運用の追加要求となって現れる。
  5. UDIは査察対象であるCP 7382.850において、UDIは4つのOAFRsの1つとして明示されている。さらに2026年2月2日施行の技術的修正(90 FR 55978)により、§801.45(e) の参照先が設計履歴ファイルから設計開発ファイル(§820.10(c))へ変更された。UDI関連手順書の条番号を点検しておきたい。

UDIは、医療機器の安全管理における重要なインフラである。DIとPIという2つの要素により機器を正確に識別し、プレーンテキストと機械読取可能な形式での表示により、人間とシステムの両方が情報を活用できる仕組みとなっている。

この制度の導入により、回収時のトレーサビリティ確保や迅速な機器特定が可能になり、結果として患者の安全性向上につながっている。製造業者、流通業者、医療機関のすべてが協力してUDIを適切に運用することで、より安全で効率的な医療機器管理が実現される。

規制対応という側面だけでなく、業務効率化や患者安全向上という価値を生み出すツールとしてUDIを捉え、積極的に活用していくことが、これからの医療機器業界において重要となるであろう。

本稿で採用しなかった記述について:初出時の本稿には「DIはFDA認定の発行機関によって割り当てられる」という記述があったが、21 CFR §830.50・§830.60 が割当義務をラベラーに課していることを確認したため、「ラベラーが発行機関の体系を用いて自ら割り当てる」に改めた。また「欧州や日本など各国・地域でもUDI制度が導入されつつある」という記述は、EUがMDR第27条により2021年から、日本が薬機法第68条の2の5により2022年12月1日からそれぞれ施行済みであることを一次情報で確認したため、現状を示す記述に置き換えた。
なお、GUDIDおよびEUDAMEDに登録されている機器レコードの総数については、時点により大きく変動し、かつ本稿執筆時点で一次情報から確定した数値を得られなかったため、記載していない。

参考・出典(一次情報源)

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