デザインレビューとデザインベリフィケーションの違い――ISO 13485 7.3.5と7.3.6

デザインレビューとデザインベリフィケーションの違い

医療機器の設計開発において、「デザインレビュー」と「デザインベリフィケーション(設計検証)」はいずれも品質を担保するための重要な活動である。しかし、両者は名称が似ているためしばしば混同されることがある。実際には、目的・実施方法・参加者の構成において明確な違いがあり、それぞれが異なる役割を果たしている。本稿では、この二つの活動の違いをわかりやすく整理し、実務上どのように使い分けるべきかを解説する。

デザインレビューとは何か

規格上の根拠

デザインレビュー(Design Review)とは、設計開発の各フェーズにおいて、設計の適切性を体系的に審査する活動である。ISO 13485:2016第7.3.5項(Design and development review)では、設計・開発の適切な段階において、体系的なレビューを計画された取決めに従って実施しなければならないと規定されている。

日本のQMS省令(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令/平成16年厚生労働省令第169号)では、第33条「設計開発照査」がこれに対応する。米国では、2026年2月2日に施行されたQMSR(Quality Management System Regulation)21 CFR 820.7によりISO 13485:2016を参照取り込みしているため、根拠は同じく第7.3.5項となる。

最大の特徴は「多部門・多専門」

最大の特徴は、複数部門の代表者と専門家が一堂に会して実施する点にある。メカニカル設計、電気・電子(エレキ)設計、ソフトウェア設計、品質保証、製造、規制対応など、各専門領域の担当者が参加し、設計全体を多角的な視点から審査する。参加人数は通常3〜10名程度であり、チームとして実施されるものである。

例えるならば、「横串を刺した総合審査」である。一つの設計に対して、異なる専門知識を持つ複数の目が同時に向けられることで、単独の専門家では見落としがちなリスクや矛盾を発見することができる。

デザインレビューで確認する主な観点

  • 設計インプット(要求事項)に対する設計の適合性
  • 各部門間のインターフェースや整合性
  • リスクマネジメントの妥当性(ISO 14971:2019 との整合)
  • 規制要件(QMSR、ISO 13485:2016、QMS省令など)への適合状況
  • 製造可能性・保守性・使用性

デザインベリフィケーションとは何か

規格上の根拠

デザインベリフィケーション(Design Verification:設計検証)とは、設計アウトプット(設計で得られた成果物)が、設計インプット(要求事項)を満たしていることを確認する活動である。ISO 13485:2016 の第7.3.6項(Design and development verification)には、設計・開発の検証は、設計・開発のアウトプットが設計・開発のインプットの要求事項を満たしていることを確実にするために、計画され文書化された取決めに従って実施しなければならないと定められている。QMS省令では第34条「設計開発の検証」が対応する。

1名の専門家からでも実施できる

デザインレビューとの最大の違いは、1名の専門家からでも実施可能である点にある。ベリフィケーションは個別の設計文書や仕様に対して実施されるものであり、必ずしも多部門チームによるレビュー会を必要としない。ただし実務上は、試験実施者と承認者を分けるなど、ベリフィケーション記録に複数の担当者が関与するケースが多いことに留意が必要である。

具体的な検証方法

手法 内容
試験・テスト 実際に製品や部品を動作させ、規定の性能を満たすか確認する
検査 図面・寸法・外観などを基準値と照合する
分析 計算・シミュレーションによって要求事項への適合を確認する
比較 類似した実績のある設計との比較によって妥当性を確認する

例えば、「耐電圧は1500Vrms以上であること」という設計インプット(要求事項)に対して、実際に耐電圧試験を実施し、その結果が基準値を上回っていることを確認する——これがデザインベリフィケーションの典型的な姿である。

二つの活動の比較

両者の違いを一覧で整理すると、次のとおりである。

観点 デザインレビュー デザインベリフィケーション
目的 設計の適切性を体系的に審査する 設計アウトプットが設計インプットを満たしているか確認する
参加者 多部門の代表者・専門家(3〜10名程度) 専門家1名以上
性格 横串の総合審査 個別文書・仕様の検証
実施タイミング 設計の各フェーズの節目 設計アウトプットが確定した段階
主な手段 会議・討議・レビュー会 試験・検査・分析・比較
規格の根拠 ISO 13485:2016 第7.3.5項 ISO 13485:2016 第7.3.6項
QMS省令の根拠 第33条(設計開発照査) 第34条(設計開発の検証)
旧QSRの根拠 21 CFR 820.30(e)(Design review) 21 CFR 820.30(f)(Design verification)
混同しやすいもう一つの用語:デザインバリデーション(Design Validation:設計妥当性確認、ISO 13485:2016 第7.3.7項/QMS省令第35条)は、最終製品が意図した用途・使用者のニーズを満たすかを確認する活動であり、ベリフィケーションとも別物である。「要求どおりに作れたか(Verification)」と「作ったものが目的に適うか(Validation)」の違いと覚えるとよい。

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混同しやすいポイントと注意事項

両者が混同される背景には、「どちらも設計の問題を見つける活動である」という共通点がある。しかし、その本質的な目的と構造は異なる。

プロセスの評価か、アウトプットの確認か

まず、デザインレビューはプロセスの評価である。設計が適切な方向に進んでいるかどうかを、多様な視点からチームで判断する活動である。一方、デザインベリフィケーションはアウトプットの確認である。個々の要求事項に対して、設計の成果物が確かにその要求を満たしているかどうかを客観的に確認する活動である。

「レビューで承認したから検証は不要」は誤りである

また、「デザインレビューで全員が承認したから、ベリフィケーションは不要である」という誤解も見られる。しかし、両者は代替関係にはなく、相互補完的に実施されるべきものである。デザインレビューはプロセス全体を俯瞰し、ベリフィケーションは個別の要求事項との整合を客観的に証明する。この二つが揃って初めて、堅牢な設計管理が成立する。

誤解しやすいポイント

  • デザインレビューの議事録に「異議なし」と書いただけでは、設計インプットへの適合を客観的に証明したことにはならない。
  • 逆に、個別の試験成績書が揃っていても、部門間のインターフェースやリスクの見落としは検出できない。
  • レビューと検証の記録は、いずれも設計・開発ファイル(旧DHF)に保存され、査察・審査の対象となる。

参加者の要件――規格が求めるのは「関連機能の代表者+他の専門家」

実務上の注意点として、ISO 13485:2016 第7.3.5項はデザインレビューの参加者について、レビュー対象となる設計・開発の段階に関連する機能の代表者、ならびに他の専門要員の参加を要求している。したがって、デザインレビューを特定部門のみで完結させることは規格要件を満たさない可能性がある。

レビューの参加者には、レビューの対象となる設計・開発の段階に関連する機能の代表者、および他の専門要員を含めなければならない。
――ISO 13485:2016 第7.3.5項(趣旨・筆者訳)

QMSR移行で「独立レビュアー」の明文要求はどうなったか

2026年2月2日に施行されたFDAのQMSRは、21 CFR Part 820の設計管理条項(旧820.30)を条文ごと[Reserved]とし、ISO 13485:2016 第7.3節の参照に移行した。これにより、旧QSR 21 CFR 820.30(e) が明確に義務付けていた「審査対象の設計段階に直接責任を持たない者を1名以上含めること」という要件は、規制テキスト上の明文としては存在しなくなっている。

ただし、これを「独立した視点はもう不要になった」と読むのは早計であろう。ISO 13485:2016 第7.3.5項が求める「他の専門要員」の参加は、審査対象の設計段階に直接責任を負わない立場からの貢献を含み得るものと解し得る。また、MDSAPの監査アプローチをはじめ、国際的な監査実務では設計段階に直接責任を持たない者の関与を確認する運用が定着している。独立レビュアーを参加させることは、業界の良好な実務慣行(グッドプラクティス)として引き続き推奨されると考えるのが安全である。

FDA査察の運用面がどう変わったかについては、QSITはこう変わったもあわせて参照されたい。また、施行日をまたぐ設計記録の扱いについてはなぜ事後法が適用されたのかで解説している。

レビュー参加者の力量をどう担保するか

デザインレビューの実効性は、参加者の力量に大きく依存する。形式的に人数を揃えても、設計の妥当性を判断できる知識がなければ「横串の総合審査」は成立しない。参加者の力量確保は教育訓練の問題でもある。教育と訓練の違いを踏まえた計画的な力量管理が求められる。また、レビューの結論に対する責任の所在を明確にするという意味では、トップダウン型管理の考え方も参考になる。

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まとめ――3つのポイント

  1. デザインレビューは「横串の総合審査」多部門の専門家が集まって設計全体を体系的に審査する活動であり、ISO 13485:2016 第7.3.5項/QMS省令第33条を根拠とする。
  2. デザインベリフィケーションは「客観的な確認」個々の設計アウトプットが設計インプットの要求事項を満たしているかを試験・検査・分析・比較によって確認する活動であり、専門家1名からでも実施できる。根拠はISO 13485:2016 第7.3.6項/QMS省令第34条である。
  3. 両者は代替関係になく、補完関係にある医療機器の開発において、この二つの活動を混同せず、それぞれの目的と役割を正しく理解した上で計画・実施することが、製品の品質と規制適合性を確保するための基本となる。QMSR移行で独立レビュアーの明文要求は消えたが、独立した視点の確保は引き続き良好な実務慣行である。

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