ISO-13485改定の要点

ISO 13485の「改定の要点」を検索する読者の多くは、いま二つの問いを抱えている。ひとつは「2003年版から2016年版で結局何が変わったのか」、もうひとつは「ISO 13485:2016はこの先すぐに改訂されるのか」である。結論から述べる。ISO 13485:2016は2026年8月現在も現行版であり、改訂作業は進行していない。2025年の定期見直し(Systematic Review)において「確認(Confirmed)」とされ、ISOのステージは90.93にとどまっている。そして、この「変わらないこと」こそが2026年の最大のニュースである。米国FDAが2026年2月2日に施行したQMSR(Quality Management System Regulation)が、ISO 13485:2016を丸ごと引用組み込みしたからである。本稿では、2003年版→2016年版の新旧対照を整理したうえで、2026年時点でISO 13485:2016がどう位置づけられているかを、日米欧の規制と突き合わせて解説する。

1. まず結論:ISO 13485:2016に改訂予定はない

ISO規格には定期見直し(Systematic Review)という仕組みがあり、原則として5年ごとに「改正(Revise)」「確認(Confirm)」「廃止(Withdraw)」のいずれかが決定される。ISO 13485:2016は、この定期見直しの結果として「確認(Confirmed)」とされ、規格ステージは90.93(International Standard confirmed)である。すなわち、現時点でISO/TC 210において第4版の作成作業(CD/DIS/FDISといった策定段階)は走っていない。

「ISO 13485はまもなく改定される」は2026年時点では誤りである

かつて「ISO 9001:2015に合わせてAnnex SL(現Harmonized Structure)構造へ移行する改定が近く行われる」という観測が広く語られた。しかし2026年8月現在、ISO 13485:2016は定期見直しで確認され、改訂に向けた作業項目は立っていない。したがって、社内のQMS再構築計画において「次期改訂待ち」を理由に着手を遅らせる合理性はない。

むしろISO/TC 210が現在進めているのは、規格本体の改訂ではなく適用ガイドラインの整備である。ISO/TS 23485(Guideline for the application of ISO 13485:2016)が作成作業中であり、これは要求事項を追加・削除・変更するものではなく、要求事項の意図と実装例を示す文書である。要求事項そのものは動かない、というISO/TC 210の姿勢がここに表れている。

2. ISO 13485の沿革

表1 ISO 13485の版の変遷
発行年 状態 位置づけ
ISO 13485:1996(第1版) 1996年 廃止 ISO 9001:1994を補完する医療機器向け規格
ISO 13485:2003(第2版) 2003年 廃止(2016年2月24日付) ISO 9001:2000をベースとする独立規格化
ISO 13485:2016(第3版) 2016年 現行 2025年の定期見直しで「確認」。ステージ90.93
第4版 2026年8月時点で作業項目なし

注意すべきは、ISO 13485:2016がISO 9001:2015には追従していない点である。ISO 13485:2016はISO 9001:2008をベースとした構造(4章〜8章)を維持しており、マネジメントシステム規格共通の上位構造(Annex SL/Harmonized Structure)を採用していない。この設計は意図的なものである。医療機器のQMSは各国規制当局の要求と一対一で対応させる必要があり、汎用マネジメント規格の構造改編に振り回されることを避けたのである。そして2026年、FDAがISO 13485:2016をそのまま引用組み込みしたことで、この判断の正しさが結果的に裏づけられた。

3. 2003年版から2016年版で何が変わったか(新旧対照)

ISO 13485:2016の改定目的は、大きく次の二点であった。

  • QMS要求事項の明確化(解釈のばらつきを減らす)
  • 各国規制要求事項との整合(特に米国FDA QSRおよびMDSAP参加国の要求)

以下に主要な変更点を対照表として整理する。品質保証担当者が自社の手順書を点検する際のチェックリストとして使えるよう、条項単位で並べた。

表2 ISO 13485:2003 → ISO 13485:2016 主要変更点の新旧対照
領域 2003年版 2016年版 2016年版の該当箇条
リスクベースドアプローチ 設計・開発(7.1)を中心に限定的に言及 QMS全体に「リスクに応じて」の考え方を展開。資源配分・供給者管理・教育訓練・プロセス管理にまで適用 4.1、6.2、7.1、7.4 ほか
ソフトウェアバリデーション 製造設備等に用いるソフトウェアが主対象 QMSに使用するコンピュータソフトウェア(文書管理・CAPA管理・監視測定等)へ対象を拡大し、明示的に要求 4.1.6、7.5.6、7.6
医療機器ファイル 独立した箇条なし 「医療機器ファイル」として独立。FDAのDMR(Device Master Record)、本邦の製品標準書に相当する概念を明文化 4.2.3
記録の管理 保管期間・可読性等が中心 健康機密情報(患者データ)の保護要求を追加 4.2.5
設計・開発の移管 設計・開発計画の記載事項の一部 独立した箇条として要求事項化。量産移行とは別概念であることに注意 7.3.8
設計・開発ファイル 規定なし 新設。FDAのDHF(Design History File)に相当 7.3.10
設計へのインプット 機能・性能・安全・法令要求等 ユーザビリティおよびインターフェース(ネットワーク接続等)を明示的に追加 7.3.3
設計変更 簡潔な規定 変更の重要性評価、機能・性能・使用性・安全性・法規制への影響評価と記録保持を詳細に要求 7.3.9
購買情報 購買製品の要求事項の明確化 供給者との合意に「変更の事前通知」を含めることを要求。供給者評価・再評価の基準を文書化 7.4.1、7.4.2
識別 「識別」と「製品状態の識別」に分離 「識別」に統一。あわせてUDI等の規制要求に対応可能な構成へ 7.5.8、7.5.9
苦情処理 「製品受領者からの意見」および改善の中に包含 独立箇条として新設。すべての苦情について原則調査を要求。修正と是正処置の区別を明確化 8.2.2
規制当局への報告 限定的 規制当局への報告および助言的通知(Advisory Notice)を独立箇条化 8.2.3、8.3.3
不適合製品の管理 一括して規定 「引渡し前」と「引渡し後」に区分。手直し(Rework)も独立 8.3.2、8.3.3、8.3.4
是正処置・予防処置 期限に関する明示的要求なし 「不当な遅滞なく(without undue delay)」の実施を要求。CAPAの期限管理が必要 8.5.2、8.5.3
汚染管理 作業環境の中に包含 独立箇条化。無菌医療機器の微生物汚染管理を明確化 6.4.2
用語定義 定義数が少ない 大幅に拡充。「苦情」「製造業者」「輸入業者」「販売業者」「無菌バリアシステム」「ライフサイクル」等を新規定義・再定義 3

3-1. 用語定義の拡充が実務に与えた影響

2016年版で最も実務インパクトが大きかったのは、実は用語定義の拡充である。とりわけ「苦情(Complaint)」の定義変更は重い。2003年版では顧客からの申し出が中心であったが、2016年版では市場に出た医療機器の同一性・品質・耐久性・信頼性・使用性・安全性・性能に関する欠陥の申し立て全般が対象となり、サービスレポートに含まれる情報も苦情処理の対象となり得る。FDAのQSRにおける苦情の定義に接近したものであり、この定義変更に手順書が追随していない企業は少なくない。

また「製造業者」「輸入業者」「販売業者」の区別が明確化されたことも重要である。サプライチェーンが国際化し、設計主体・製造主体・上市主体が分離する現代において、どの主体がどの要求事項を負うのかを規格上明示する必要があったためである。

3-2. 「リスク」の定義はISO 14971のままである

ISO 9001:2015では「リスク」がISO 31000の定義(諸目的に対する不確かさの影響)に整合されたが、ISO 13485:2016は従来どおりISO 14971の定義(危害の発生確率とその危害の重大さの組合せ)を採用している。医療機器分野において「リスク」とは患者・使用者・第三者への危害を指すのであって、経営上の不確実性を指すのではない。この点を混同したまま「リスクベースドアプローチ」を語る資料が散見されるので注意されたい。

3-3. 修正・是正処置・予防処置の区別

2016年版は、あえて「修正(Correction)」と「是正処置(Corrective Action)」を併記する箇所を設け、両者が異なる概念であることを明確にした。修正は検出された不適合そのものを取り除く処置であり、是正処置は不適合の原因を除去して再発を防止する処置である。この区別は、後述するFDA QMSRの下での査察においても引き続き頻出する論点である。

なお、ISO 9001:2015では予防処置の箇条が削除されたが、ISO 13485:2016には8.5.3として予防処置が存置されている。ISO 13485:2016に改訂予定がない以上、医療機器QMSにおいて予防処置の手順は今後も必要である。「ISO 9001で削除されたから不要」という判断は誤りである。

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4. 2026年時点でISO 13485:2016はどう位置づけられているか

ここからが本稿の中核である。ISO 13485:2016そのものは2016年以降変わっていない。しかしISO 13485:2016を取り巻く規制環境は、2021年以降で決定的に変わった。同じ規格が、以前とは比較にならない重みを持つに至ったのである。

4-1. 米国:FDA QMSRがISO 13485:2016を引用組み込みした

米国FDAは、最終規則「Medical Devices; Quality System Regulation Amendments」2024年2月2日に公布(89 FR 7496)し、2026年2月2日に施行した。これにより21 CFR Part 820は名称をQuality Management System Regulation(QMSR)へ改め、ISO 13485:2016を引用組み込み(Incorporation by Reference)した。すなわち、米国で医療機器を上市する製造業者にとって、ISO 13485:2016は「任意の国際規格」ではなく連邦規則そのものとなった。

表3 旧QSRと現行QMSR(21 CFR Part 820)の構造比較
項目 旧QSR(〜2026年2月1日) 現行QMSR(2026年2月2日〜)
規則名称 Quality System Regulation Quality Management System Regulation
基本構造 Subpart A〜Subpart Oの自立した詳細規定 ISO 13485:2016を引用組み込みし、FDA固有要求のみを規定
引用規格 ISO 13485:2016(820.7 引用組み込み)
適用範囲 820.1 820.1
定義 820.3 820.3(ISO 13485の用語とFD&C Actの用語の関係を整理)
QMSの要求 820.5、820.20 ほか 820.10(QMSの文書化、およびPart 803/806/821/830等の遵守)
記録の管理 820.180〜820.198 820.35(苦情記録、サービス記録、UDIを含む機器・ロット記録の追加要求)
表示・包装の管理 820.120、820.130 820.45(ISO 13485に該当要求がないため存置)
査察手法 QSIT(Quality System Inspection Technique) QSITは使用終了。コンプライアンスプログラム7382.850に基づく査察

注意すべきは、QMSRがISO 13485:2016の丸写しではない点である。FDAは、ISO 13485に規定がないか、または米国法上の要求と接続する必要がある事項を、820.10・820.35・820.45としてFDA固有要求に残した。したがって「ISO 13485:2016に適合しているからQMSRにも自動的に適合する」わけではない。ギャップ分析が必要である。QMSRの全体像については、医療機器に関する品質規則(QMSR中心)の記事もあわせて参照されたい。

【重要】ISO 13485の認証はFDA査察を免除しない。ここは誤解が非常に多い。FDAは、QMSRの下でもISO 13485:2016の適合証明書(Certificate of Conformance)を発行しない。また、認証機関が発行したISO 13485認証書を保有していることをもって、FDAの査察が免除されることはない。FDAはISO 13485認証書の提出を求めもしない。「ISO 13485を取っているからFDA対応は済んでいる」という理解は明確に誤りである。認証と規制当局査察はまったく別の枠組みであると認識されたい。

FDA will not issue certificates of conformance to ISO 13485:2016 as a result of an inspection, and manufacturers who hold a certificate of conformance to ISO 13485:2016 are not exempt from FDA inspections.

出典:U.S. FDA「Quality Management System Regulation: Final Rule Amending the Quality System Regulation – Frequently Asked Questions」

4-2. 日本:QMS省令はISO 13485:2016と整合済み、経過措置も終了している

本邦のQMS省令(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令:平成16年厚生労働省令第169号)は、もともとISO 13485:2003を基礎として制定されたものであった。その後、令和3年厚生労働省令第60号による改正によってISO 13485:2016との整合が図られた。厚生労働省の通知(令和3年3月26日薬生発0326第10号)は、改正の趣旨を「医療機器の品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 13485:2016と整合を図るため」と明示している。

QMS省令改正の経過措置は2024年3月25日に終了している

改正省令は令和3年3月26日に公布・施行された。経過措置は「施行の日から起算して3年を経過する日まで」とされていたため、令和6年(2024年)3月25日をもって終了している。2026年8月現在、改正後のQMS省令が全面適用されており、旧QMS省令に基づく適合性調査の余地はない。改正内容(品質管理監督システムの文書化、外部委託工程の管理、ソフトウェアの適用に係るバリデーション、製品標準書、滅菌医療機器等の汚染管理 等)への対応は、すでに完了していなければならない。

QMS省令はISO 13485:2016と整合しているが、条文の順序・章立てはISO 13485の箇条構成に対応させつつ、日本独自の要求(第3章の追加的要求事項など)を上乗せする構造となっている。対応関係の概要を以下に示す。

表4 ISO 13485:2016の箇条とQMS省令(改正後)の対応関係
ISO 13485:2016 QMS省令の該当箇所
—(総則・適用範囲) 第1章 総則 第1条〜第3条
4 品質マネジメントシステム 第2章第1節 通則/第2節 品質管理監督システム 第4条〜第9条
5 経営者の責任 第2章第3節 管理監督者の責任 第10条〜第20条
6 資源の運用管理 第2章第4節 資源の管理監督 第21条〜第25条の2
7 製品実現 第2章第5節 製品実現 第26条〜第53条
8 測定、分析及び改善 第2章第6節 測定、分析及び改善 第54条〜第64条
—(日本独自の上乗せ) 第3章 追加的要求事項 第65条〜第72条の3
—(日本独自の上乗せ) 第4章 生物由来医療機器等 第73条〜第79条
—(日本独自の上乗せ) 第5章 放射性体外診断用医薬品 第80条・第81条
—(日本独自の上乗せ) 第5章の2 再製造単回使用医療機器 第81条の2〜第81条の2の6
—(準用規定) 第6章 製造業者等への準用等 第82条〜第84条

ただし、QMS省令に適合していればISO 13485:2016に適合する、という関係ではない。QMS省令はISO 13485:2016と「整合」しているが、条文の表現・用語(「品質管理監督システム」「管理監督者」「製品受領者」等)は独自であり、また第3章以降の追加的要求事項が上乗せされている。逆に、ISO 13485:2016の一部要求がQMS省令では別の条文構成に分解されている箇所もある。両者を1対1で読み替えるのではなく、要求事項レベルでのマトリクス管理が現実的である。

4-3. 欧州・MDSAP:ISO 13485は依然として実務上の共通言語である

EUのMDR/IVDRは、製造業者に品質マネジメントシステムの構築を義務づけているが、規則本文がISO 13485を引用しているわけではない。実務上は、EN ISO 13485に基づくQMSを構築し、Notified Bodyの適合性評価を受けるのが標準的な進め方である。またMDSAP(Medical Device Single Audit Program)は、ISO 13485を基礎に参加各国(米国・カナダ・ブラジル・オーストラリア・日本)の規制要求を組み込んだ単一監査の枠組みである。ISO 13485:2016で多くの注記が本文(条文)に格上げされ、箇条が細分化されたのは、まさにこのMDSAPを実施しやすくし、各国間の差異を最小化するためであった。

結果として2026年現在、ISO 13485:2016は日米欧のいずれの市場でも、QMS構築の出発点となる共通基盤となっている。日米欧の規制枠組みの全体像については規制要件入門1講:日米欧の枠組みもあわせて参照されたい。

4-4. 関連規格・ガイダンスの現行版

ISO 13485:2016本体は動いていないが、参照される周辺文書は更新されている。手順書の引用箇所が旧版のままになっていないか点検すべきである。

  • リスクマネジメント:ISO 14971:2019および解説文書ISO/TR 24971:2020が現行である。ISO 14971:2007を引用したままの手順書は改訂が必要である。
  • ユーザビリティエンジニアリング:IEC 62366-1が現行である。ISO 13485:2016の7.3.3(設計へのインプット)でユーザビリティが明示されたことと連動する。
  • コンピュータ化システムバリデーション:ISPEのGAMP 5はSecond Edition(2022年7月発行)が現行である。GAMP 5初版(2008年)を引用している社内手順は更新されたい。ISO 13485:2016の4.1.6・7.5.6でQMS用ソフトウェアのバリデーションが要求されている以上、その方法論を定めた文書の版数管理も査察対象になり得る。

5. 2026年時点で取るべき対応

1. 「次期改訂待ち」の凍結を解除する

ISO 13485:2016に改訂予定はない。次期版を待って着手を先送りしていた案件があれば、直ちに再開すべきである。ISO 13485:2016は今後も相当期間にわたり現行版であり続ける前提で計画を立てること。

2. QMSRギャップ分析を実施する(米国上市企業)

2026年2月2日にQMSRは施行済みである。ISO 13485:2016適合のQMSを持っていても、820.10(Part 803/806/821/830の遵守)、820.35(苦情・サービス記録、UDIを含む記録要求)、820.45(表示・包装の管理)といったFDA固有要求への対応が別途必要である。すでに施行済みである以上、これは「準備」ではなく「是正」のフェーズである。

3. QSIT前提の査察対応資料を刷新する

FDAはQSITの使用を終了し、コンプライアンスプログラム7382.850に基づく査察へ移行した。QSITの4サブシステム(マネジメントコントロール、CAPA、設計管理、製造・プロセス管理)を前提に組み立てた査察対応マニュアルや模擬査察シナリオは、見直しが必要である。

4. ISO 13485認証とFDA査察を切り分けて社内説明する

ISO 13485の認証書はFDA査察を免除しない。経営層に対して「認証取得済み=FDA対応完了」と説明してしまっている企業は、直ちに認識を修正すべきである。認証機関の監査と規制当局の査察は、目的・権限・帰結のいずれも異なる。

5. QMS省令改正への対応完了を再確認する

経過措置は2024年3月25日に終了している。外部委託工程の管理、ソフトウェアバリデーション、製品標準書、汚染管理などの改正事項について、手順書だけでなく実施記録が残っているかを確認すること。手順書のみ改訂して運用実績がない状態は、適合性調査で最も指摘を受けやすい。

6. 引用規格の版数を棚卸しする

ISO 14971:2019、ISO/TR 24971:2020、IEC 62366-1、GAMP 5 Second Edition(2022年7月)など、社内手順書が引用する外部文書の版数を一覧化し、旧版参照を洗い出すこと。ISO 13485:2016本体が変わらないからこそ、周辺文書の陳腐化が見過ごされやすい。

7. 用語定義の変更を手順書に反映しているか点検する

特に「苦情」の定義である。サービスレポート由来の情報や製造工程由来の情報が苦情処理プロセスに乗る設計になっているか、すべての苦情について調査の要否判断と記録が残る設計になっているかを確認されたい。QMSRの820.35でも苦情記録に追加要求が置かれている。

まとめ
  • ISO 13485:2016は2026年8月現在も現行版であり、2025年の定期見直しで「確認(Confirmed、ステージ90.93)」とされた。改訂作業は進行していない。
  • 2003年版→2016年版の主な変更は、リスクベースドアプローチの全面展開、ソフトウェアバリデーション対象の拡大、医療機器ファイル/設計・開発ファイルの新設、設計移管の独立箇条化、苦情処理の独立と定義拡大、購買における変更の事前通知、汚染管理の独立箇条化などである。
  • FDAはQMSR最終規則(2024年2月2日公布、89 FR 7496)によりISO 13485:2016を引用組み込みし、2026年2月2日に施行した。ISO 13485:2016は米国では連邦規則の一部である。
  • ただしQMSRにはFDA固有要求(820.10/820.35/820.45)が残る。ISO 13485適合=QMSR適合ではない。
  • ISO 13485の認証書はFDA査察を免除しない。FDAは適合証明書を発行せず、認証書の提出も求めない。
  • QMS省令は令和3年厚生労働省令第60号によりISO 13485:2016と整合済みで、経過措置は2024年3月25日に終了している。現在は全面適用である。
  • ISO 13485:2016本体が動かない以上、いま点検すべきはFDA固有要求への対応状況と、引用する周辺規格・ガイダンスの版数である。

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