医療機器に関する品質規則

医療機器に関する品質規則は、2026年に大きな転換点を迎えた。米国FDAが約30年にわたり運用してきた「品質システム規則(Quality System Regulation:QSR)」は、2026年2月2日をもって「品質マネジメントシステム規則(Quality Management System Regulation:QMSR)」に切り替わり、21 CFR Part 820 は ISO 13485:2016 を参照によって取り込む構造へと全面的に姿を変えた。日本でもQMS省令が2021年に改正され、2024年3月25日をもって経過措置が終了している。本稿では、医療機器の品質規則がなぜ「作り方の管理」だけでは成り立たないのかという原点を押さえたうえで、現行規則であるQMSRの中身、日米欧の対応関係、そして2026年時点で企業が取るべき対応を整理する。

医療機器の品質保証はなぜ「製造と検査の管理」だけでは足りないのか

医薬品の品質保証は、化学物質としての規格を定め、その規格どおりに製造し、検査で確認するという枠組みで相当程度まで成立する。しかし医療機器は事情が異なる。医療機器は化学物質ではなく、機構・電気・ソフトウェア・材料が組み合わさった「製品」であり、決めたことを守り不良品の発生を防ぐというGMP的な発想だけでは、その安全性を確保できない。

医療機器に固有の事情として、少なくとも次の四点が挙げられる。

  • 設計そのものが安全性を決める。製造工程が完璧であっても、設計が誤っていれば不安全な機器が量産されるだけである。したがって品質保証の対象は製造工程だけでなく、設計・開発の段階にまで遡らなければならない。
  • 使用方法というユーザー要素が大きい。誰が、どのような環境で、どのように使うかによって危害の発生確率が変わる。予期し得ない使われ方まで含めて安全性を評価する必要があり、ここでリスクマネジメントが不可欠となる。
  • 据付や付帯サービスを要する機器がある。据付の不備や保守の不履行が直接に患者リスクへ結び付くため、出荷後の活動も品質システムの範囲に入る。
  • 品質保証活動は製品提供の全分野に及ぶ。設計、購買、製造、包装、表示、保管、据付、付帯サービスまでが一続きの管理対象となる。

FDAが早くから設計管理(Design Control)の重要性を認識し、規則に組み込んできたのはこのためである。そして、この「設計から付帯サービスまでを一つのマネジメントシステムとして管理する」という考え方こそ、ISO 13485が体系化してきたものであり、QMSRはその体系をFDAの規則本体に取り込んだものにほかならない。

現行規則はQMSR:2024年2月2日公布、2026年2月2日施行

FDAは2024年2月2日、連邦官報に最終規則「Medical Devices; Quality System Regulation Amendments」(89 FR 7496、RIN 0910-AH99)を公布した。この最終規則は、21 CFR Part 820 の医療機器CGMP要求事項を改正し、名称を Quality Management System Regulation(QMSR) に改めたうえで、医療機器の品質マネジメントシステムに関する国際規格 ISO 13485:2016 を参照によって取り込むものである。

施行日は公布から2年後の 2026年2月2日 と定められた。すなわち、米国市場に医療機器を上市するすべての製造業者は、2026年2月2日以降、QMSRへの適合が求められる。

さらにFDAは2025年12月4日、既存の各規則中の参照条文や用語をQMSR最終規則に整合させるための技術的修正規則(90 FR 55978)を公布している。FDA自身が「本規則は新たな要求事項を課すものではなく、誤りの訂正・参照の整合・明確化を目的とした編集上の措置である」と明言しているとおり、内容の変更ではなく整合作業である。

「QSR」はもはや現行の呼称ではない

2026年2月2日以降、21 CFR Part 820 の正式名称は「Quality Management System Regulation」である。社内規程、手順書、教育資料、供給者との契約書に「QSR」「品質システム規則」の表記が残っていないか、まず棚卸しを行うべきである。呼称だけの問題ではなく、参照している要求事項の構造そのものが変わっている点に注意を要する。

QMSRの中身:21 CFR Part 820 はこう変わった

条文構成が15サブパートから2サブパートへ

旧QSRは、一般規定からサービシング・統計的手法まで、サブパートAからOまでの15区分に細かく要求事項を書き下していた。QMSRでは、その大半を ISO 13485:2016 の該当箇条に委ね、Part 820 側には「ISO 13485に従うこと」と、米国固有に上乗せする事項だけを残す構成に改められた。現行のeCFRで確認できる条文構成は次のとおりである。

21 CFR Part 820(QMSR)の現行条文構成
区分 条番号 表題
Subpart A
General Provisions
§ 820.1 Scope(適用範囲)
§ 820.3 Definitions(定義)
§ 820.5 [Reserved](欠番)
§ 820.7 Incorporation by reference(参照による取り込み)
§ 820.10 Requirements for a quality management system(QMSに関する要求事項)
Subpart B
Supplemental Provisions
§§ 820.20-820.30 [Reserved](欠番)
§ 820.35 Control of records(記録の管理)
§ 820.45 Device labeling and packaging controls(表示及び包装の管理)
Subparts C-O は[Reserved](欠番)。出典:eCFR, 21 CFR Part 820(Source: 89 FR 7523, Feb. 2, 2024)

参照によって取り込まれた二つの規格

§ 820.7 は、参照によって取り込む規格を次のとおり特定している。版数まで規則本文で指定されている点は実務上きわめて重要である。

(a) ISO 9000:2015(E)(「ISO 9000」), Quality Management systems—Fundamentals and vocabulary, Clause 3—Terms and definitions, Fourth edition, September 15, 2015. IBR approved for § 820.3.

(b) ISO 13485:2016(E)(「ISO 13485」), Medical devices—Quality management systems—Requirements for regulatory purposes, Third edition, March 1, 2016; IBR approved for §§ 820.1, 820.3, 820.10, 820.35, and 820.45.

出典:21 CFR § 820.7(eCFR)

すなわちQMSRは、要求事項の本体として ISO 13485:2016(第3版)を、用語・定義の基礎として ISO 9000:2015 の箇条3を取り込んでいる。ISO 13485については2025年に定期見直し(systematic review)が行われ、改訂ではなく「確認(Confirmed)」という結論となったため、2026年8月時点でも ISO 13485:2016 が現行版である。QMSRが指定する版と現行版が一致している状態であり、当面この整合が崩れる懸念はない。

ISO 13485に上乗せされるFDA固有の要求事項

ISO 13485に従えばQMSRを満たす、というほど単純ではない。§ 820.10 以下で、FDA固有の要求事項が明確に上乗せされている。主なものは次のとおりである。

QMSRがISO 13485に上乗せするFDA固有の要求事項(抜粋)
条番号 対応するISO 13485の箇条 上乗せされる内容
§ 820.10(b)(1) 7.5.8 識別 21 CFR Part 830 に従い機器固有識別子(UDI)を割り当てる仕組みを文書化する
§ 820.10(b)(2) 7.5.9.1 トレーサビリティ(一般) 該当する場合、21 CFR Part 821 に従うトレーサビリティ手順を文書化する
§ 820.10(b)(3) 8.2.3 規制当局への報告 21 CFR Part 803(MDR)の報告基準に該当する苦情をFDAへ通知する
§ 820.10(b)(4) 7.2.3/8.2.3/8.3.3 アドバイザリーノーティスは 21 CFR Part 806 に従って取り扱う
§ 820.10(c) 7.3 設計・開発 クラスII・クラスIII、および規則本文の表に列挙された特定のクラスI機器(ソフトウェアで自動化された機器を含む)は設計・開発要求事項に適合すること
§ 820.10(d) 7.5.9.2 植込機器のトレーサビリティ 生命維持・生命支持機器の製造業者にも同要求を適用する
§ 820.35(a) 4.2.5/8.2.2 苦情処理 機器名、受領日、UDI/UPC、苦情申立者情報、苦情の内容、修正・是正処置、回答内容の記録を義務付ける
§ 820.35(b) 7.5.4 附帯サービス業務 機器名、UDI/UPC、実施日、実施者、実施内容、試験・検査データの記録を義務付ける
§ 820.45 7.5.1 製造及びサービス提供の管理 表示・包装の完全性、検査、保管、作業に関する詳細な手順を文書化・維持する
出典:21 CFR §§ 820.10, 820.35, 820.45(eCFR)

また § 820.3 では、ISO 13485 の用語定義がそのまま適用されるわけではないことが規定されている。連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act)第201条の定義が優先し、「organization」は本規則の「manufacturer」の意味に読み替えられ、「safety and performance」は ISO 13485 箇条0.1 の「safety and effectiveness」の意味を持つ、といった読み替え規定が置かれている。ISO 13485 の条文と規則本文を突き合わせて読む作業が、実務上避けられない。

ISO 13485認証はFDA査察を免除しない

FDAはQMSRのFAQにおいて、ISO 13485への適合証明書を要求することも発行することもないと明言している。ISO 13485認証を保有していてもFDA査察が免除されるわけではなく、FDAは自ら製造業者のQMS要求事項への適合性を評価する。「認証を取ったからQMSR対応は完了」という理解は誤りである。

査察手法も変わった:QSITの引退

規則の変更に伴い、FDAの査察手法も変更された。FDAは2026年2月2日をもって、長年用いてきた QSIT(Quality System Inspection Technique)の使用を終了し、更新されたコンプライアンスプログラム「Inspection of Medical Device Manufacturers, 7382.850」に記載された査察プロセスへ移行した。従前の 7382.845(Inspection of Medical Device Manufacturers)および 7383.001(Medical Device PMA Preapproval and PMA Postmarket Inspections)は、同日以降使用されない。

QSITの4サブシステム(経営管理、設計管理、CAPA、生産・工程管理)を前提に組み立てられた査察対応マニュアルや模擬査察シナリオは、そのままでは通用しない。査察対応の準備資料も更新が必要である。

QSRとQMSRの新旧対照

QSR(旧)とQMSR(現行)の主な相違
観点 QSR(〜2026年2月1日) QMSR(2026年2月2日〜)
正式名称 Quality System Regulation Quality Management System Regulation
根拠となる官報 61 FR 52602(1996年10月7日公布、1997年6月1日施行) 89 FR 7496(2024年2月2日公布、2026年2月2日施行)
条文構成 Subpart A〜O の15区分に要求事項を自前で記述 Subpart A・B のみ。要求事項の本体はISO 13485:2016に委ねる
国際規格との関係 ISO 9001を参考にしつつ独自に規定(整合はしていない) ISO 13485:2016 と ISO 9000:2015 箇条3 を参照により取り込み
用語・定義 § 820.3 に独自定義 ISO 13485/ISO 9000の定義を基礎とし、FD&C Actの定義が優先
リスクに基づくアプローチ 明示的な要求は限定的 ISO 13485を通じてQMS全体にリスクに基づく考え方が組み込まれる
設計管理 § 820.30 Design controls ISO 13485 箇条7.3 + § 820.10(c) による適用対象の指定
記録要求 DMR/DHR/DHF/苦情ファイル ISO 13485の医療機器ファイル(MDF)等 + § 820.35 の上乗せ記録
査察手法 QSIT(4サブシステム) コンプライアンスプログラム 7382.850 に基づく査察プロセス

年表:医療機器品質規制の歩み

QMSRは突然現れたものではなく、30年以上にわたる国際整合の帰結である。歴史の詳細を追う必要はないが、流れを一望しておくと現行規則の位置付けが理解しやすい。

医療機器の品質規制をめぐる年表
米国 日本・国際
1978 医療機器GMP規則を公示
1990 医療機器安全法(SMDA)成立。GMP規則への設計管理の導入等を求める
1993 EUで医療機器指令(MDD)93/42/EEC が成立
1994 日本:医療用具のQAシステム基準(GMPの改正)
1995 日本:医療用具GMPの省令化
1996 10月7日、品質システム規則(QSR)を公布(61 FR 52602)。設計管理を明文化
1997 6月1日、QSR施行
2003 ISO 13485:2003 発行(ISO 9001から独立した規制目的の規格へ)
2004 日本:QMS省令(平成16年厚生労働省令第169号)制定
2005 日本:JIS Q 13485:2005 としてJIS化
2011 GHTFの成果を引き継ぎ、IMDRF(国際医療機器規制当局フォーラム)が発足
2014 日本:11月25日、薬事法が「医薬品医療機器等法(薬機法)」へ改称・施行
2015 日本(厚生労働省・PMDA)がMDSAPに参加
2016 ISO 13485:2016(第3版)発行(3月1日)
2021 日本:3月26日、QMS省令を改正(令和3年厚生労働省令第60号)、ISO 13485:2016と整合/EUでMDR(規則(EU)2017/745)適用開始(5月26日)
2024 2月2日、QMSR最終規則を公布(89 FR 7496) 日本:3月25日、改正QMS省令の経過措置が終了
2025 12月4日、QMSR技術的修正規則を公布(90 FR 55978) ISO 13485:2016 が定期見直しで「確認(Confirmed)」
2026 2月2日、QMSR施行。QSIT運用を終了し 7382.850 へ移行
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日本のQMS省令との対応関係

薬事法は「薬機法」である

日本の医療機器規制を語るうえで、まず用語を正しておく必要がある。薬事法は2014年11月25日をもって「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法、通称:薬機法)へ改称され、施行された。現在「薬事法」という名称の法律は存在しない。医療機器の製造販売業許可、QMS適合性調査、品質管理の基準(GQP)といった枠組みは、いずれも薬機法を根拠としている。

QMS省令は2021年に改正され、経過措置は2024年3月25日に終了した

医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(QMS省令、平成16年厚生労働省令第169号)は、2021年(令和3年)3月26日に改正省令(令和3年厚生労働省令第60号)が公布・施行された。厚生労働省の通知は、この改正が「医療機器の品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 13485:2016と整合を図ることを目的」とするものであると明記している。改正では、リスクマネジメント、製造工程の外部委託、ソフトウェアのバリデーション、製品標準書の作成、滅菌医療機器の汚染防止管理などに関する要求事項が整備された。

この改正には「改正省令の施行の日から起算して3年を経過する日までの間は、なお従前の例によることができる」との経過措置が置かれていた。すなわち 経過措置は2024年(令和6年)3月25日をもって終了しており、現在は改正QMS省令が全面適用されている。

結果として、米国のQMSRも日本の改正QMS省令も、いずれも ISO 13485:2016 を共通の土台としている。日本企業にとっては、改正QMS省令対応で構築した仕組みがQMSR対応の出発点になり得るという意味で、追い風となる状況である。ただし前述のとおり、QMSRには UDI(Part 830)、MDR報告(Part 803)、アドバイザリーノーティス(Part 806)といった米国固有の上乗せ要求があり、日本の省令対応をそのまま流用できるわけではない。

日米欧の対応関係

医療機器QMS規制の日米欧対応関係(2026年時点)
地域 根拠法令 QMS要求の中核 ISO 13485:2016との関係
米国 FD&C Act/21 CFR Part 820(QMSR) ISO 13485:2016 + Part 820 の上乗せ規定 参照により規則本体へ取り込み(2026年2月2日〜)
日本 薬機法/QMS省令(平成16年厚生労働省令第169号、令和3年改正) 改正QMS省令 ISO 13485:2016と整合を図って改正(2021年)。経過措置は2024年3月25日終了
欧州 規則(EU)2017/745(MDR) MDR第10条等が求める品質マネジメントシステム EN ISO 13485が整合規格として機能

国際整合の枠組み:GHTFからIMDRF、そしてMDSAPへ

医療機器の規制要求事項をグローバルに整合させるため、官民合同の会議体としてGHTF(Global Harmonization Task Force)が組織され、欧州連合・米国・カナダ・オーストラリア・日本の5極が創設メンバーとして活動した。GHTFのSG3(品質システムおよびプロセスバリデーションのガイドライン)は品質システムとしてISO 13485の採用を推奨し、日本のQMS省令も、また各国の規制も、この流れの中で整備されてきた。

GHTFの成果は、2011年10月に発足した IMDRF(International Medical Device Regulators Forum:国際医療機器規制当局フォーラム) に引き継がれた。IMDRFは、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、欧州連合、日本、米国の規制当局とWHOがオタワに集まって設立された、規制当局主体のフォーラムである。GHTFの成果文書は現在もIMDRFのアーカイブで参照できる。

実務上さらに重要なのが MDSAP(Medical Device Single Audit Program) である。MDSAPは、認定を受けた監査機関が単一の監査を実施することで、参加規制当局の該当要求事項を満たす仕組みであり、参加当局はオーストラリアTGA、ブラジルANVISA、カナダ保健省、日本の厚生労働省・PMDA、米国FDAである。日本は2015年6月23日に参加した。FDAはMDSAP監査報告書を定期査察の代替として受け入れ、日本の厚生労働省・PMDAは市販前および市販後の調査において活用する。MDSAPの監査モデル自体がISO 13485を土台としているため、QMSRへの移行によってMDSAPとFDA要求の整合性はさらに高まったといえる。

リスクマネジメント:ISO 14971という前提

ISO 13485:2016 は、製品実現の全般にわたってリスクマネジメントの適用を求めている。その具体的な手法を規定するのが ISO 14971:2019(第3版)「医療機器 — 医療機器へのリスクマネジメントの適用」である。適用の手引きとしては ISO/TR 24971:2020 が用意されている。

欧州では、1993年のMDD 93/42/EEC の時代からリスク分析(prEN 1441)による基本要件適合の確認が行われ、その後 EN ISO 14971 が整合規格に加えられた。現行のMDR(規則(EU)2017/745、2021年5月26日適用開始)の下でも、EN ISO 14971:2019+A11:2021 が整合規格として欧州連合官報に掲載されている。なお、A11は附属書Z(法令のどの部分に対応するかを示す情報)を追加するもので、ISO 14971 の規定本文を変更するものではない。

QMSRがISO 13485を取り込んだことにより、米国においても、リスクマネジメントは「望ましい活動」ではなく、規則が求めるQMSの構成要素として位置付けられることになった。ISO 14971に基づくリスクマネジメントファイルの整備状況は、査察において当然に確認され得る事項である。

2026年時点で医療機器企業が取るべき対応

  1. 用語と参照の総点検社内の品質マニュアル、SOP、様式、教育資料、供給者契約に残る「QSR」「品質システム規則」「21 CFR 820.30」等の旧条番号を洗い出し、QMSRの条文構成とISO 13485の箇条番号に置き換える。参照先の誤りは、それ自体が文書管理の不備として指摘対象になり得る。
  2. ISO 13485:2016 とPart 820のギャップ分析ISO 13485に適合したQMSを持っていても、それだけではQMSRを満たさない。§ 820.10(b)(c)(d)、§ 820.35、§ 820.45 の上乗せ要求(UDI、MDR報告、アドバイザリーノーティス、苦情記録項目、附帯サービス記録項目、表示・包装の手順)を一つずつ突き合わせ、不足を特定する。
  3. 用語の読み替え規定への対応§ 820.3 により、FD&C Actの定義が ISO 13485 の定義に優先する。「organization=manufacturer」「safety and performance=safety and effectiveness」といった読み替えを、文書と教育の両面で徹底する。
  4. 査察対応資料の刷新QSITの4サブシステムを前提とした査察対応マニュアル、模擬査察シナリオ、フロントルーム/バックルーム運用手順を、コンプライアンスプログラム 7382.850 に基づく査察プロセスに合わせて作り直す。
  5. 設計管理とリスクマネジメントの実質の確認設計・開発(ISO 13485 箇条7.3)と ISO 14971 に基づくリスクマネジメントは、QMSRの中核をなす。設計履歴に相当する記録、設計移管、設計変更、リスクマネジメントファイルの更新が実態として運用されているかを、文書の有無ではなく実施の証跡で確認する。
  6. 日本のQMS省令との一体運用改正QMS省令の経過措置は2024年3月25日に終了している。日米いずれもISO 13485:2016を土台とする以上、日本向けと米国向けで二重のQMSを維持する必然性は乏しい。共通のQMSに各極の上乗せ要求を付加する構成へ再設計することが、コストと品質の双方で合理的である。
  7. MDSAPの活用検討複数国へ上市している企業であれば、MDSAPによる単一監査で日米豪伯加の要求を一度に満たす選択肢を検討する価値がある。ただし、MDSAP監査報告書の受け入れ方は当局ごとに異なる点に留意する。

まとめ

  • 21 CFR Part 820 の現行名称は QMSR(Quality Management System Regulation)。最終規則は2024年2月2日公布(89 FR 7496)、2026年2月2日施行。QSRという呼称はすでに現行のものではない。
  • QMSRは ISO 13485:2016(第3版)ISO 9000:2015 箇条3 を参照により取り込み、Part 820 側にはSubpart A・Bのみを残す構成となった。
  • ISO 13485への適合だけでは不十分であり、UDI・MDR報告・アドバイザリーノーティス・苦情記録・附帯サービス記録・表示包装管理といった米国固有の上乗せ要求への対応が必須である。ISO 13485認証はFDA査察を免除しない。
  • 査察手法も変わり、2026年2月2日をもってQSITの運用は終了し、コンプライアンスプログラム 7382.850 に移行した。
  • 日本では、薬事法は2014年11月25日に薬機法へ改称・施行済み。QMS省令は2021年3月26日にISO 13485:2016と整合させる形で改正され、経過措置は2024年3月25日に終了している。
  • 日米欧いずれもISO 13485:2016を共通の土台とする時代となった。各極の上乗せ要求を付加する形で一つのQMSを設計することが、これからの実務の基本方針となる。

出典(一次情報源)