21 CFR Part 11が生まれた経緯

21 CFR Part 11 は、電子記録と電子署名を紙の記録・手書き署名と同等に扱うための基準を定めた規則である。1997年3月20日に Federal Register に公示され(62 FR 13430–13466)、同年8月20日に施行された。しかしこの規則は、FDA が業界を締め上げるために作ったものではない。紙でなければ認めないという当時の運用に音を上げた製薬業界自身が、FDA に働きかけて作らせた規則である。本稿では、制定に至る手続の年表ではなく、「なぜ業界がそれを求めたのか」という動機と、当時の実務がどうなっていたのかを、官報 preamble の原文に即して追う。

この記事の守備範囲について。ANPRM から最終規則に至る手続の年表、2003年の Scope and Application ガイダンスが何を撤回し何を維持したのか、そして「タイプライターエクスキューズ」という比喩の出どころについては、姉妹記事タイプライターエクスキューズとはで14行の年表とともに詳述している。本稿ではそれらを再掲せず、制定の動機と当時の実務に絞る。制定後に残った未解決の論点はPart 11の4つの解けない課題で扱う。また、CFRとは何かFederal Registerとはを併せて読むと、本稿で引用する「62 FR 13430」のような表記の意味が分かる。

1990年代初頭の医薬品業界:紙に埋もれる現場

1990年代初頭の医薬品製造現場を想像してほしい。製造記録、品質管理データ、分析結果、承認サイン——これらすべてが紙で管理されていた。巨大な書類保管庫には何十年分もの記録が積み上げられ、特定の記録を探し出すだけで半日かかることも珍しくなかった。

誤解してはならないのは、当時すでにコンピュータは現場に入っていたということである。製造装置は自動化され、分析機器はデジタルデータを出力し、在庫や試験結果はデータベースで管理されていた。技術的には、記録を電子的に作り、電子的に承認し、電子的に保管することは十分可能だった。

それにもかかわらず、最終的にはすべてを紙に印刷し、手書きで署名し、ファイリングする必要があった。理由は単純である。FDA の規制が要求していたのは「記録」と「署名」であり、当時の FDA には電子的な記録や署名を受け入れる判断基準が存在しなかったからである。この点について、FDA 自身が最終規則の preamble で率直に述べている。

Before this rulemaking, FDA did not have established criteria by which it could determine the reliability and trustworthiness of electronic records and electronic signatures and could not sanction electronic alternatives when regulations called for signatures. A primary reason for issuing part 11 is to develop and codify such criteria.

(この規則制定以前、FDA は電子記録および電子署名の信頼性と信用性を判断するための確立された基準を持っておらず、規制が署名を要求している場面で電子的な代替手段を承認することができなかった。Part 11 を発出する主たる理由は、そうした基準を策定し法典化することにある。)

出典:Electronic Records; Electronic Signatures; Final Rule, 62 FR 13436(1997年3月20日)

「二重運用」という当時の日常

この状況は、製薬企業にとって二重の負担を生み出していた。デジタル技術によってより正確で効率的なデータ管理が可能になっているにもかかわらず、規制上の要件がそれを妨げていたのである。現場では次のようなことが起きていた。

  • データは電子、証拠は紙。分析機器が出力したデータはコンピュータ上にあるが、規制上の記録として通用するのは印刷した紙のほうだった。同じ情報が二つの媒体に存在し、しかも「正」は紙のほうだった。
  • 検索は人力。データベースに入っている情報であっても、査察官に提示するのは書庫から探し出した紙である。ある期間のロット記録を横断的に見たいという要求に対して、保管庫を漁る以外の方法がなかった。
  • 署名のためだけの印刷。承認行為を成立させるためだけに電子データを紙に出力し、そこにペンでサインをする。署名が済めば、その紙が原本になる。
  • 保管コストの累積。記録の保存期間は品目によって数年から数十年に及ぶ。紙は減らず、書庫は増え続けた。

FDA が1994年の規則案に寄せられた意見を整理した箇所には、この時代の空気を伝える細部が残っている。FDA は規則案について電子メールでの意見提出を試験的に受け付けたが、実際に電子メールで届いた意見はわずか1件だった。ただし FDA は、これを「業界に電子メールを送る能力がなかったため」とは考えていない。というのも、同じ時期に規則案の本文を電子メールで送ってほしいと要求した者は198名おり、そこには米国外からの要求も含まれていたからである(62 FR 13434)。技術は既にあり、公式な手続だけが紙に縛られていた——当時の構図がよく表れている。

紙と電子が併存する運用そのものの問題については、ハイブリッドシステムとはおよび紙が正か電子が正かで扱っている。また、「印刷すれば紙の記録として通用するのか」という論点はなぜプリントアウトは信頼できないのかで詳述した。

1991年、業界はFDAに何を求めたのか

この矛盾に最初に声を上げたのは、規制当局ではなく製薬企業自身であった。最終規則の preamble は、その始まりを次のように記録している。

In 1991, members of the pharmaceutical industry met with the agency to determine how they could accommodate paperless record systems under the current good manufacturing practice (CGMP) regulations in parts 210 and 211 (21 CFR parts 210 and 211).

(1991年、製薬業界の関係者が FDA と会合を持ち、21 CFR Part 210 および Part 211 の CGMP 規則のもとでペーパーレス記録システムをどのように受け入れられるようにするかを検討した。)

出典:62 FR 13430(1997年3月20日)

ここで注意すべき点が二つある。

第一に、業界が求めたのは「新しい規制を作ってくれ」ということではなかった。原文が言っているのは「既存の CGMP 規則のもとでペーパーレス記録システムをどう受け入れられるようにするか(how they could accommodate paperless record systems under the current CGMP regulations)」である。出発点は、新規立法の要求ではなく、既にある規則の枠内で電子化を成立させる方法を探る相談だった。

第二に、この会合の主体は「製薬業界の関係者(members of the pharmaceutical industry)」であって、特定の業界団体名は preamble に記されていない。元記事にあった「複数の業界団体と企業が要望を始めた」という記述は方向としては誤っていないが、1991年時点で具体的にどの団体が動いたのかは、この一次資料からは特定できない。本稿ではそのため団体名を書かない。

FDA はこの相談を受けて省内に Task Force on Electronic Identification/Signatures(電子識別/署名タスクフォース)を設置し、全プログラム領域で統一的に電子署名・電子記録を受け入れる方法の検討に入った。その下部組織である Electronic Identification/Signature Working Group が1992年2月24日付の報告書で ANPRM(事前規則制定通知)の公表を勧告し、ここから正式な規則制定手続が動き出す。

その後の手続の流れ——1992年7月21日の ANPRM(57 FR 32185、意見53件)、1994年8月31日の規則案(59 FR 45160、意見49件)、1997年3月20日の最終規則公示と同年8月20日の施行——については、タイプライターエクスキューズとはに14行の年表として整理してある。本稿では再掲しない。

なお細部として、1994年の規則案の表題は “Electronic Signatures; Electronic Records”(電子署名が先)であり、1997年の最終規則で “Electronic Records; Electronic Signatures”(電子記録が先)へと語順が入れ替わっている。3年の議論を経て、規則の重心が署名から記録そのものへ移ったことがうかがえる。

誰が意見を出したのか

1994年の規則案に寄せられた49件の意見について、FDA はその内訳を明示している。この数字は、Part 11 が製薬業界だけの規則ではないことを示している。

意見提出者の区分 件数
業界団体(trade associations) 11
製造業者(manufacturers) 25
連邦政府機関 1
上記のほか、ヒト用・動物用医薬品、生物学的製剤、医療機器、食品の各分野の関係者を含む(合計49件)

出典:62 FR 13430。意見提出期限は1994年11月29日。

業界は何を主張し、FDAはどう応じたか

ここが本稿の核心である。Part 11 の preamble には、業界が電子化の利点として何を挙げ、FDA がそれをどう受け止めたかが記録されている。抽象論ではなく、原文に何が書かれているかを見る。

業界が挙げた利点

FDA は、規則案に対する意見の中で業界が挙げた便益を次のように列挙している。

Several comments also noted that both industry and the agency can realize significant benefits by using electronic records and electronic signatures, such as increasing the speed of information exchange, cost savings from the reduced need for storage space, reduced errors, data integration/trending, product improvement, manufacturing process streamlining, improved process control, reduced vulnerability of electronic signatures to fraud and abuse, and job creation in industries involved in electronic record and electronic signature technologies.

(複数の意見が、電子記録・電子署名の利用によって業界と FDA の双方が重要な便益を得られると指摘した。情報交換の高速化、保管スペース需要の減少によるコスト削減、エラーの減少、データの統合/トレンド分析、製品の改善、製造プロセスの合理化、工程管理の改善、電子署名における不正・濫用に対する脆弱性の低減、そして電子記録・電子署名技術に関わる産業での雇用創出である。)

出典:62 FR 13431(1997年3月20日)

注目すべきは、この一覧に「電子署名は紙の署名より不正に強い(reduced vulnerability of electronic signatures to fraud and abuse)」という主張が含まれていることである。業界は、電子化を単なる効率化ではなくデータインテグリティの向上策として位置づけていた。

さらに、ある意見は紙のシステムに対する電子システムの優位を4点に整理している(62 FR 13431)。

  1. 高度な検索自動化されたデータベースにより、紙の記録を人手で探す必要がなくなる。
  2. 多面的な参照同じ情報を複数の観点から見ることができる。
  3. 傾向の把握トレンド、パターン、挙動を判定できる。
  4. 誤綴じの回避人為的ミスによる当初および事後の綴じ間違いを避けられる。

FDAの応答——便益は認める、しかし条件が要る

FDA はこれらの主張を否定していない。むしろ正面から認めている。

The agency acknowledges the potential benefits to be gained by electronic record/electronic signature systems. The agency expects that the magnitude of these benefits should significantly outweigh the costs of making these systems, through compliance with part 11, reliable, trustworthy, and compatible with FDA’s responsibility to promote and protect public health.

(FDA は電子記録/電子署名システムによって得られる潜在的便益を認識している。FDA は、これらの便益の大きさが、Part 11 への適合を通じてそれらのシステムを信頼できるもの、信用に足るもの、そして公衆衛生を促進し保護するという FDA の責務と両立するものにするための費用を、大きく上回るはずであると考えている。)

出典:62 FR 13431(1997年3月20日)

また FDA は同じ箇所で、この規則制定を「生産的なパートナーシップの表れ(representative of a productive partnership)」と評し、規則の形成に業界からの広範な意見と協働があったことを明記している。実際、複数の意見が「この規則案は、ANPRM に対して業界が提出した提案の多くを取り入れており、技術的課題の解決における当局と業界の協力の好例である」と述べていた。

主張と応答の対照

業界の主張と FDA の応答を、preamble の記述に基づいて突き合わせると次のようになる。FDA が「反対した」のではなく、「認めたうえで条件を付けた」構図であることが読み取れる。

業界の主張 FDAの応答 規則上の帰結
データインテグリティが向上する。電子署名は紙の署名より不正・濫用に対して脆弱でない(62 FR 13431) 条件付きで同意。ただし電子記録は「データベース内に分散した情報の一時的な表示(transient views or representations)」であり、同じソフトウェアが情報を歪めて表示することもできる。データベースの要素は変更の痕跡を残さず、元の情報を破壊する形で、いつでも容易に変更できる(62 FR 13432) 監査証跡の義務化(§11.10(e))、アクセス制限(§11.10(d))、権限チェック(§11.10(g))
効率が上がる。検索・集計・分析が瞬時に行え、査察対応も速くなる(62 FR 13431) 同意。FDA 自身も規制影響分析で「FDA による審査・承認の効率化」を便益に挙げた(62 FR 13463)。ただし検索ソフトウェアへのアクセスを制限する管理が必要(62 FR 13433) 電子記録の正確・完全な複製を FDA に提供する義務(§11.10(b))
コストが下がる。印刷・保管・管理の費用を削減できる 同意。「保管スペースの費用削減」「FDA へのデータ送付にかかる輸送費の削減」を FDA 自身が便益として列挙(62 FR 13463)。そのうえで「業界にはこの規則による純費用は生じない」と結論(62 FR 13462) 規制影響分析。小規模事業者への重大な経済的影響なしと認証
紙に適用されない管理を電子に課すべきでない。電子記録固有のリスクに対処する場合を除き、紙にない管理を要求するな(62 FR 13432) 部分的に不同意。FDA は可能な限り紙との類比を試みたが「その類比は常には成立しない(the analogy does not always hold)」。紙の記録は「時間と空間に固定された、耐久性のある一体的な表現」であるのに対し、電子記録はそうでない(62 FR 13432–13433) 電子技術固有の管理を設定(開放系システムの暗号化等、§11.30)
特定技術を指定するな。受入れは特定の技術ではなく、システム管理の妥当性に基づくべき(62 FR 13432) 同意。ID+パスワードから生体認証まで幅広い方式を許容し、セキュリティやバリデーションの水準に数値基準を設けなかった(62 FR 13432) 技術中立性。電子署名と記録の結合方法も手段を限定せず(§11.70)
規則ではなくガイドラインにせよ(2件)。規則化は「コミュニケーション向上の道具」から「エンフォースメントの道具」への転換だ(62 FR 13432) 不同意。「統一的で執行可能な最低限の基準(uniform, enforceable, baseline standards)」を確立するには規則が必要。ただし詳細はガイダンスで補う 規則として制定。補足ガイダンスの発出を予告
「conclusively(決定的に)」は達成不可能な水準だ。紙の記録には適用されない基準である(62 FR 13444) 同意。FDA は「電子記録・電子署名システムにも紙のシステムと同じバリデーションの概念と基準を適用する意図である」とし、この語を最終規則から削除した §11.10(a) は “the ability to discern invalid or altered records” となり、”conclusively” が消えた
市販ソフトは検証済みだからバリデーション不要(62 FR 13445) 不同意。市販されていることは十分なバリデーションが行われた保証にはならない。市販ソフトには適合性の表明ではなく「用途適合性に関する免責条項」が付いてくるのが通例である バリデーション要件を維持(§11.10(a))
既存システムを適用除外(grandfathering)にせよ。改修は高コストであり、事後的な要件追加は遡及立法にあたる(62 FR 13436) 不同意。一律の適用除外は記録改ざんの機会を温存する。ただし施行日前に作成された電子記録は、作成に関わる規定の遡及適用を受けないと整理 施行日を公示から5か月後に設定(規則案の90日から延長)
従業員の誠実性に依拠すべきだ。Subpart C は製薬業者に改ざん動機があるとの前提で書かれている(62 FR 13433) 部分的に同意。「システムの完全性は従業員の誠実さに大きく依存し、大半の者は記録を改ざんする動機を持たない」ことは認める。しかし「容易に実行でき、発覚の可能性が低い状況では、改ざんする者が現に存在する」 Part 11 の目的を「改ざんの機会を最小化し、発覚の可能性を最大化すること」と明示

元記事にあった記述のうち、官報 preamble で裏付けられなかったものを明記しておく。

  • 「環境への配慮」を業界の主張として挙げていたが、preamble の便益一覧に環境に関する記述はない。業界が実際にそう主張した証拠が見つからないため、本稿では業界の主張としては扱わない。
  • FDA の懸念として「ウイルス攻撃、ハッキング」を挙げていたが、官報全文(約278,000バイト)に “virus” は0件である。「ハッキング」に相当する語も見当たらない。FDA が実際に懸念として記述したのは、後述するとおりデータベース要素の痕跡なき改変、アクセス可能者の多さ、改ざん検知手法の未成熟であり、外部攻撃ではない。裏取りできないため採用していない。
  • 「1991年頃から複数の業界団体と企業が要望を始めた」——1991年の会合は preamble に明記されているが、参加した団体名・企業名は記載がない。特定できないため書かない。

FDAが本当に懸念していたこと

FDA が慎重だった理由は、規制当局としての責務からくるものである。医薬品の安全性と有効性を保証する記録には、絶対的な信頼性が求められる。では preamble は、電子化の何を危険とみなしていたのか。原文は「紙と電子の違い」という切り口で整理している。

電子記録は「一時的な表示」にすぎない

[E]lectronic records built upon information databases, unlike paper records, are actually transient views or representations of information that is dispersed in various parts of the database. … In addition, database elements can easily be changed at any time to misrepresent information, without evidence that a change was made, and in a manner that destroys the original information. Finally, more people have potential access to electronic record systems than may have access to paper records.

(情報データベース上に構築された電子記録は、紙の記録とは異なり、実際にはデータベースの各所に分散した情報の一時的な表示ないし表現にすぎない。……加えて、データベースの要素は、変更が行われた証拠を残さず、かつ元の情報を破壊する形で、いつでも容易に変更して情報を偽ることができる。さらに、電子記録システムには紙の記録よりも多くの者がアクセスしうる。)

出典:62 FR 13432–13433(1997年3月20日)

この一節は、Part 11 のほぼすべての要求事項の源泉である。監査証跡(§11.10(e))、アクセス制限(§11.10(d))、権限チェック(§11.10(g))は、いずれもここで指摘された性質への対処として設けられた。

紙は「時間と空間に固定された」記録である

FDA は対比として、紙の記録の性質を次のように描いている。

The traditional paper record, in comparison, is generally a durable unitized representation that is fixed in time and space. Information is recorded directly in a manner that does not require an intermediate means of interpretation. … Although paper records may be falsified, it is relatively difficult (in comparison to falsification of electronic records) to do so in a nondetectable manner. In the case of paper records that have been falsified, a body of evidence exists that can help prove that the records had been changed; comparable methods to detect falsification of electronic records have yet to be fully developed.

(これに対して伝統的な紙の記録は、一般に、時間と空間に固定された耐久性のある一体的な表現である。情報は、解釈のための中間手段を必要としない形で直接記録される。……紙の記録も改ざんされうるが、(電子記録の改ざんと比べれば)検知不能な形でそれを行うことは比較的困難である。改ざんされた紙の記録の場合、記録が変更されたことを証明する助けとなる一群の証拠が存在する。電子記録の改ざんを検知する同等の手法は、いまだ十分に開発されていない。)

出典:62 FR 13433(1997年3月20日)

規制影響分析の箇所でも、FDA は同じ趣旨をより具体的に述べている。「紙の記録の変更を示す科学的手法は多数存在するが(紙質の分析、消去の痕跡、筆跡鑑定など)、これらの手法は電子記録には適用できない」(62 FR 13464)。紙には物理的な証拠が残るが、ビットには残らない——これが FDA の出発点だった。

署名は「貸せる」し「失くせる」

電子署名についても、FDA は紙との差異を明快に述べている。手書き署名は「貸与」や「紛失」によって容易に危殆化することはないが、ID とパスワードの組合せに基づく電子署名は貸与も紛失もできる。逆に、他人の手書き署名を書こうとすれば実行は難しく、それを検知する調査技法も長年蓄積されている。一方で「多くの電子署名は比較的容易に偽造でき、その偽造手法はほとんど検知不可能である」(62 FR 13433)。

ここから、電子署名を2要素以上で構成する要求(§11.200(a)(1))や、他人がその電子署名を使おうとすれば2名以上の協働(collaboration)を要する設計にするという要求(§11.200(a)(3))が導かれた。この条項の趣旨についてはなぜ2人以上の共謀が必要とされたのかで詳しく扱っている。

なぜ「規則」でなければならなかったのか

FDA がガイドラインではなく規則を選んだ理由は、寄せられた意見そのものが示していた。preamble は、規則が必要であることを裏づける実例として次を挙げている(62 FR 13432)。

  • ある意見は、上司が部下の署名を記録から削除して自分の署名に置き換えることを認めるべきだと主張した。FDA は、上司が部下の行為を追認する署名を付すこと自体は問題にしないとしつつ、元の署名を削除する行為は改ざんとみなすと応じた。
  • 複数の意見が、電子署名はパスワードのみで足り、パスワードは一意である必要はなく、子どもやペットの名前など私生活に由来する語を使ってよく、変更は2年ごとで十分だと主張した。FDA は、そうした運用ではパスワードが危殆化する可能性が大きく高まり、なりすましや改ざんが長期にわたって継続する危険があるとして退けた。

そのうえで FDA は「したがって、電子署名の受入れ可能な特性を記述する執行可能な規則が必要と思われる」と結論している。1990年代半ばのセキュリティ観念の水準を伝える記録でもある。

長期保存という宿題

電子記録の長期保存の難しさも、この時点で既に論点になっていた。ただしこれは FDA が一方的に懸念を表明したというより、§11.10(c)(記録保存期間を通じた正確かつ即時の検索を可能にする保護)に対して業界が実務上の困難を訴え、FDA が応答したという形をとっている。

ある企業は「自社はおよそ3年ごとにシステムを更改しており、この要件を満たすには旧システムを保持し続けなければならなくなる」と述べた(62 FR 13446 付近、コメント71)。FDA は、更改時にデータ変換の手段を用意していれば旧ハードウェア・旧ソフトウェアを保持し続ける必要は必ずしもない、と応じた。ただし「旧記録を新システムで読める形式に変換できない場合には、旧式化し置き換えられたシステムを保持することを意味する場合がある」とも述べている(62 FR 13439)。この問題は現在も解けていない。詳細は電子記録の長期保存が困難な理由を参照されたい。

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Part 11 は規制強化ではない。電子化を「認める」ための規則である

Part 11 はしばしば「FDA が電子システムに課した厳しい規制」として語られる。これは現在も広く残る誤解である。官報の原文は、この点を繰り返し明示している。

1. 規則の目的は「許可」である。規制影響分析の冒頭で FDA はこう書いている——「この規則の目的は、既存の FDA 規則の大半が書かれた時点では想定されていなかった技術の使用を許可することである。ただし記録・報告の完全性や、法定の健康保護の任務を遂行する FDA の能力をいささかも損なうことなく」(62 FR 13462)。

2. 適用は任意である。「FDA は、これらの規則が電子記録および電子署名の使用を要求するのではなく、許可するものであることを強調する。自社の電子システムがこの規則の最低要件を満たしていることに確信が持てない企業は、記録管理の要求を満たすために従来どおりの署名と紙の文書を使い続けて差し支えない」(62 FR 13434)。

3. だから「純費用は生じない」とされた。「この規則が規制する活動は任意である。……したがって、業界にはこの規則の結果として純費用は生じない」(62 FR 13462)。Part 11 対応に巨額の追加投資が必要になるという議論は制定後に現実の問題となったが、規則本体の規制影響分析はまったく逆のことを述べていた。

言い換えれば、Part 11 は「紙でなければ認めない」という状態を終わらせるための鍵であって、電子化に課された足枷として設計されたものではない。この視点はPart 11の4つの解けない課題で扱う論点にも直結する。

できあがった規則は何を求めたのか

最終的に制定された Part 11 の骨格を、条文に即して確認しておく。条文原文は eCFR の 21 CFR Part 11 で参照できる。

電子記録の要件(Subpart B)

閉鎖系システム(§11.10)に求められる管理は、次の6つを含む。

条項 要求事項 背景にあるFDAの懸念
§11.10(a) システムのバリデーション。正確性・信頼性・一貫した意図された性能、および無効または改変された記録を識別する能力を確保する ソフトウェアが情報を歪めて表示しうる
§11.10(b) 人が読める形式および電子形式で、正確かつ完全な複製を生成し、FDA の査察・照査・複写に供する能力 FDA が記録にアクセスできなくなること
§11.10(c) 記録保存期間を通じて正確かつ即時に検索できるよう記録を保護する システム更改による可読性の喪失
§11.10(d) システムへのアクセスを権限を有する者に限定する 紙より多くの者がアクセスしうる
§11.10(e) 安全で、コンピュータが生成し、時刻印を付した監査証跡。記録の変更は従前の記載を隠蔽してはならない データベース要素は痕跡を残さず変更できる
§11.10(i) 電子記録・電子署名システムを開発・保守・使用する者が、職務を遂行する教育・訓練・経験を有すること 運用者の力量不足

開放系システム(§11.30)については、閉鎖系の管理に加えて、記録の真正性・完全性・機密性を確保するための文書の暗号化や適切なデジタル署名標準の使用といった追加措置が求められる。

§11.10(a) の条文に「conclusively(決定的に)」の語がないことに注目してほしい。前述のとおり、これは規則案から意見を受けて削除された語である。業界の主張が条文を実際に動かした、数少ない目に見える痕跡のひとつである。

電子署名の要件(Subpart C)

  • 一意性と本人確認(§11.100)。各電子署名は1個人に固有であり、他者に再利用・再割当てされてはならない。組織は電子署名を付与する前に当該個人の身元を検証しなければならない。
  • 署名の明示事項(§11.50)。電子記録への署名には、署名者の印字された氏名、署名を実行した日付と時刻、および署名に付随する意味(照査、承認、責任、著作など)を含めなければならない。この3点については電子署名の3つの明示事項で詳述している。
  • 記録との結合(§11.70)。電子署名および電子記録に付された手書き署名は、通常の手段では切り離し・複写・移転して電子記録を偽造できないよう、それぞれの記録に結合されていなければならない。
  • 2要素と協働要件(§11.200)。生体認証に基づかない電子署名は、識別コードとパスワードのように2つの相異なる識別要素を用いなければならない。また、他者がその電子署名を使おうとすれば2名以上の協働(collaboration)を要するよう管理・実行されなければならない。
  • ID/パスワードの管理(§11.300)。組合せの一意性維持、定期的な失効または改訂、紛失・盗難時の失効手続、不正使用の防止と検知・報告、トークン等の初期および定期的な試験。

バリデーション

電子システムは、意図したとおりに機能することを検証するため、適切なバリデーションを実施する必要がある。これはシステムの設計段階から運用、保守に至るまで、全ライフサイクルにわたって適用される。

preamble は、ここでいうバリデーションの意味を FDA の1987年「Guideline on General Principles of Process Validation」に接続している。同ガイドラインはバリデーションを「特定のプロセスが、あらかじめ定められた仕様および品質特性を満たす製品を一貫して生み出すことについて、高度の保証を与える文書化された証拠を確立すること」と定義しており、§11.10(a) の「consistent intended performance(一貫した意図された性能)」という表現は、性能があらかじめ定めた設計仕様に基づくこと(したがって “intended”)を指す(62 FR 13445)。バリデーションという概念がそもそもなぜ生まれたのかについては、バリデーション概念の歴史的背景~1970年代の薬害事件から学ぶを参照されたい。

Part 11 は既存規則を置き換えたわけではない

ある意見は、医療機器については当時の CGMP 規則 §820.195 が既に自動データ処理を扱っているのだから Part 11 の適用を除外すべきだと主張した。FDA はこれを退け、§820.195 の条文——「製造または品質保証の目的で自動データ処理が使用される場合、不正確なデータの出力、入力、およびプログラミングの誤りを防止するための適切なチェックを設計し実施しなければならない」——を引いたうえで、「この条項は、電子署名、記録の改ざん、電子記録への FDA のアクセスといった、Part 11 が扱う多くの論点を扱っていない」と述べた(62 FR 13436)。Part 11 は既存の CGMP 規則を補完するものであって、置き換えるものではない。

制定後に何が起きたか

21 CFR Part 11 の施行は、製薬業界に大きな変革をもたらした。企業は既存のシステムを見直し、新たな要件に適合させるための投資を行った。初期段階では多くの企業が対応に苦慮した。既存システムの改修、新規システムの導入、従業員の教育訓練、手順書の整備など、取り組むべき課題は山積みであった。

その一方で、効果も実感されるようになった。データの検索性向上により査察対応の時間が短縮され、監査証跡の自動記録によってデータの信頼性が向上した。紙の記録管理から解放されることで、従業員はより価値の高い業務に集中できるようになった。

しかし同時に、規則の解釈が企業によって大きく異なり、過剰な対応を行うケースが広がった。前述のとおり、FDA の規制影響分析は「業界に純費用は生じない」と結論していた。任意の制度であり、便益が費用を上回ると判断した企業だけが電子化を選ぶはずだ、という論理である。ところが実際には、「Part 11 に適合しなければ既存の電子システムを使い続けられない」という理解が広がり、適合コストが規則の想定を超えて膨らんだ。この乖離は、規則本体の欠陥というより、規則の射程がどこまで及ぶのかが明確でなかったことに起因する。

FDA は2003年8月、Part 11 の適用範囲を明確化するガイダンス「Part 11, Electronic Records; Electronic Signatures — Scope and Application」を発行し、リスクベースアプローチの考え方を示した。すべての電子記録に一律の厳格な管理を求めるのではなく、記録の重要性に応じて適切なレベルの管理を行うべきである、という方針である。

2003年ガイダンスは「執行裁量」であって、遵守免除ではない

このガイダンスはしばしば「Part 11 が緩和された」「一部の要件が不要になった」と説明されるが、正確ではない。示されたのは執行裁量(enforcement discretion)であり、規則そのものは一字も改正されていない。また、このガイダンスがいわゆるタイプライターエクスキューズを否定したという理解も誤りである。条件付きで容認している。

何が撤回され、何が維持されたのか、そして「タイプライター」という比喩が誰の言葉なのかについては、タイプライターエクスキューズとはで官報原文に即して整理している。結論だけ先に述べれば、この比喩は業界が編み出した抜け道ではなく、1997年官報のコメント22に対する回答で FDA 自身が用いたものである(62 FR 13437)。

その後の展開は次のとおりである。

  • クラウド・モバイルへの対応。2010年代に入り、クラウドコンピューティングやモバイル技術の進化に伴って新たな技術的課題が生じ、FDA は継続的にガイダンスを更新している。
  • 臨床試験領域のガイダンス。FDA は2024年10月、「Electronic Systems, Electronic Records, and Electronic Signatures in Clinical Investigations: Questions and Answers」を最終化した(2024年10月2日公示)。デジタルヘルス技術(DHT)を用いて臨床試験データを遠隔取得する場合の取扱いに独立の節が割かれている。
  • CSA への転換。FDA は2022年9月13日に Computer Software Assurance(CSA)のドラフトガイダンスを公示し、2025年9月24日に最終化、さらに2026年2月3日に改訂版を発出した。改訂に際して表題が “Production and Quality System Software” から “Production and Quality Management System Software” へ変更されている(docket FDA-2022-D-0795)。従来の Computer System Validation(CSV)からリスクベースのソフトウェア保証へというパラダイムシフトである。経緯はCSAガイダンス発出までの長い経緯、用語の転換の意味はなぜ「バリデーション」から「アシュアランス(保証)」へ変わったのかで扱っている。

元記事の記述からの訂正。元記事は Scope and Application ガイダンスを「2003年9月」、CSA ガイダンスを「2022年に発行」、臨床試験ガイダンスを「AI技術の利用にも言及している」としていた。実際には、Scope and Application は2003年8月、CSA は2022年9月ドラフト→2025年9月最終→2026年2月改訂の3段階であり、2024年10月の臨床試験ガイダンス全28ページには“artificial intelligence”・”machine learning” ともに0件で、言及があるのは DHT である。いずれも一次資料で確認のうえ修正した。

世界への波及

21 CFR Part 11 の制定は米国内にとどまらず、各国・地域の規制に影響を与えた。ただし各制度の成り立ちは同じではないため、正確に区別しておく。

欧州:EU GMP Annex 11

欧州では EU GMP Annex 11(Computerised Systems)がコンピュータ化システムを扱う。ここで注意すべきは所管である。Annex 11 を含む EudraLex Volume 4 を発行しているのは欧州医薬品庁(EMA)ではなく、欧州委員会(European Commission)である。2011年版 Annex 11 の文書冒頭には “EUROPEAN COMMISSION / HEALTH AND CONSUMERS DIRECTORATE-GENERAL” と明記されている。EMA は起草に関与する立場であって、発行主体ではない。

現行版は改訂第1版(revision 1)であり、発効日は2011年6月30日である(2011年版本文に “Deadline for coming into operation: 30 June 2011” と記載)。文書が revision 1 である以上、先行版が存在することは確実だが、その初出年を特定できる一次資料は確認できなかったため、本稿では年を断定しない。

2025年には改訂に向けた意見募集が行われた(2025年7月7日から10月7日まで)。ただし対象は Annex 11 単独ではなく、GMP ガイドライン第4章、Annex 11、および新設の Annex 22(Artificial Intelligence)の3点セットである。Annex 11 の改訂ドラフト本文(全19ページ)に “artificial intelligence” は0件であり、AI を扱うのは新設の Annex 22 のほうである。クラウドサービスの利用増大とサイバーセキュリティについては Annex 11 ドラフトが扱っている。最終化の時期については、欧州委員会の意見募集ページに予定日の記載がなく、確認できなかった。

日本:ER/ES指針とe-文書法

日本では2005年(平成17年)4月1日、厚生労働省医薬食品局長通知「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について」(薬食発第0401022号、いわゆる ER/ES指針)が発出された。同指針は電子記録に求められる要件を3つの観点から整理している。

項番 要件 指針の定め(要旨)
3.1.1 真正性 電磁的記録が完全、正確であり、かつ信頼できるとともに、作成、変更、削除の責任の所在が明確であること
3.1.2 見読性 電磁的記録の内容を人が読める形式で出力(ディスプレイ装置への表示、紙への印刷、電磁的記録媒体へのコピー等)ができること
3.1.3 保存性 保存期間内において、真正性及び見読性が確保された状態で電磁的記録が保存できること

出典:薬食発第0401022号「3.1 電磁的記録の管理方法」。この3要件の詳細は真正性・見読性・保存性とはで扱っている。

制度面では、e-文書法が電子化の法的基盤となった。同法は2本立てで、通則法が「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(平成16年法律第149号)、整備法が「同法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成16年法律第150号)である。いずれも2004年11月19日に成立し、同年12月1日に公布、2005年4月1日に施行された。これを受けて平成17年厚生労働省令第44号「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」が2005年3月25日に公布され、薬事法(現・医薬品医療機器等法)に基づく文書の電子化が可能となった。

元記事の記述からの訂正(世界への波及の節)。

  • 「EMA が Annex 11 を導入」→ 発行主体は欧州委員会。EMA ではない。
  • 「Annex 11 を1992年に導入」→ 初出年を特定できる一次資料が見つからないため、年を書かない
  • 「2011年1月に大幅改定」→ 公表は2011年だが、発効日は2011年6月30日と併記した。
  • 「2025年7月の改定案は AI 技術に対応」→ Annex 11 ドラフトに AI の記載は0件。AI を扱うのは新設 Annex 22。
  • 「2026年の最終化が予定されている」→ 欧州委員会の公表資料に予定日の記載がなく、裏取りできないため採用していない。
  • 「e-文書法は2004年12月成立」→ 成立は2004年11月19日、公布が同年12月1日
  • 「医薬品医療機器等法に基づく文書」→ 2005年当時の法令名は薬事法。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」への改称は2014年11月25日施行であり、2005年の記述としては9年半の先取りになる。

今後の展望

医薬品業界は、さらなるデジタルトランスフォーメーションの波の中にある。人工知能(AI)、機械学習といった新技術が品質管理や製造プロセスに導入されつつある。21 CFR Part 11 が築いた電子記録管理の基盤は、こうした新技術の導入を支える土台となっている。AI による異常検知、予測的品質管理、リアルタイムのデータ分析——これらはすべて、信頼できる電子記録システムが先にあってはじめて成立する

規制当局自身もデジタル化を進めている。電子申請、データの電子提出など、当局と企業の間のやり取りも電子化が進んだ。1997年の規則が「FDA が受け入れる電子提出の種類を公開ドケットに登録する」という仕組みから始めたことを思えば、隔世の感がある。

ただし、Part 11 が生んだ論点のうち、いくつかは四半世紀を経てなお解けていない。電子記録の長期保存、紙と電子の併存、そして「どこまでが Part 11 の射程なのか」という問いである。それらについてはPart 11の4つの解けない課題で扱う。

まとめ

  • Part 11 は業界が求めて生まれた規則である。1991年、製薬業界の関係者が FDA と会合を持ち、既存の CGMP 規則(21 CFR Part 210・211)のもとでペーパーレス記録システムをどう受け入れられるようにするかを検討したのが出発点である(62 FR 13430)。
  • 当時の現場は「データは電子、証拠は紙」だった。コンピュータは既に入っていたが、FDA には電子記録の信頼性を判断する基準がなく、規制が署名を要求する場面で電子的な代替を承認できなかった(62 FR 13436)。
  • 業界はデータインテグリティ・効率・コストを主張し、FDA は便益を認めた。FDA は「便益の大きさは適合費用を大きく上回るはずだ」と述べ(62 FR 13431)、規制影響分析でも保管スペース費用の削減など5つの便益を自ら列挙している(62 FR 13463)。
  • FDA が懸念したのは外部攻撃ではない。データベース要素が痕跡を残さず変更できること、紙より多くの者がアクセスしうること、電子記録の改ざんを検知する手法が未成熟であることの3点である(62 FR 13432–13433)。官報全文に “virus” は0件である。
  • 業界の主張は条文を動かした。「conclusively」の削除(§11.10(a))、技術中立性、セキュリティ水準への数値基準の不設定、施行日の90日から5か月への延長は、いずれも寄せられた意見への応答である。
  • Part 11 は規制強化ではなく「許可」の規則である。「これらの規則は電子記録・電子署名の使用を要求するのではなく、許可するものである」(62 FR 13434)。規制影響分析は「業界に純費用は生じない」と結論していた(62 FR 13462)。「Part 11 対応に巨額の追加投資が必要」という議論は、規則本体の想定とは正反対である。
  • 過剰対応は規則ではなく解釈から生まれた。2003年8月の Scope and Application ガイダンスが示したのは執行裁量であり、規則そのものは改正されていない。

出典・参考資料

※ 本稿の英文引用はすべて筆者訳。原文の強調は原資料にはなく、読みやすさのため筆者が付した。

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