
CFRとは何か
製薬・医療機器・ライフサイエンスの分野で働いていれば、「21 CFR Part 11」という表記を目にしない日はない。しかし「CFR とは何の略か」「Part 11 の 11 は何を指すのか」「§11.10(a) の (a) はどの階層なのか」を正確に説明できる人は意外に少ない。本コラムでは、米国法体系のなかでの CFR の位置づけ、50 のタイトルによる分類、Title 21 の内部構造、そして実務でいちばん役に立つ「引用の読み方」までを、原典に当たって整理する。あわせて、eCFR と紙版 CFR の違い、条番号は動くという事実という、初心者が必ず一度は足をすくわれる二点を扱う。
CFR とは何か
正式名称と役割
CFR は Code of Federal Regulations(連邦行政規則集)の略称である。米国連邦政府の行政機関が制定した「一般的かつ恒久的な(general and permanent)」規則を、主題別に体系化した公式の法典である。米国政府出版局(GPO)の説明では、CFR は次のように定義されている。
――GovInfo「Code of Federal Regulations」(趣旨:CFR 年次版とは、連邦政府の各省庁が連邦官報に掲載した一般的かつ恒久的な規則を法典化したものである)
ここで重要なのは、CFR は「新しく規則をつくる場所」ではないという点である。規則が世に出るのはあくまで Federal Register(連邦官報)であり、CFR はそこに掲載された最終規則を主題別に並べ替えて編纂した「編集物」にすぎない。この関係は規則で明文化されている。
――1 CFR §5.5(趣旨:連邦官報は CFR の日次の追補として機能する。法典化の対象となる各文書は、CFR に対応づけられなければならない)
規則制定のプロセスそのもの(ANPRM → NPRM → パブリックコメント → 最終規則)については、姉妹記事「Federal Register とは」で詳しく扱っている。
米国法体系の階層――憲法・法律・規則
米国の法体系は階層構造をなしている。最上位に合衆国憲法があり、その下に議会が制定する法律(Statute/Act)が置かれる。そして、法律が行政機関に授権した範囲で、各機関が具体的な運用ルールである規則(Regulation/Rule)を定める。この規則を編纂したものが CFR である。
ここで初心者がつまずくのが、「法律」と「規則」のそれぞれに、官報形態と法典形態の2つの姿があるという点である。整理すると次のようになる。
| 層 | 制定主体 | 公示される場(時系列) | 法典化された姿(主題別) | 医薬品分野の例 |
|---|---|---|---|---|
| 憲法 | ― | ― | U.S. Constitution | 州際通商条項(規制権限の根拠) |
| 法律 | 連邦議会 | Statutes at Large(成立順) 例:52 Stat. 1040 |
U.S.C.(United States Code、合衆国法典) 例:21 U.S.C. §301 |
連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act) |
| 規則 | 行政機関(FDA 等) | Federal Register(掲載順) 例:62 FR 13430 |
CFR(連邦行政規則集) 例:21 CFR §11.10 |
電子記録・電子署名規則(Part 11) |
つまり U.S.C. : CFR = Statutes at Large : Federal Register という対応関係が成り立つ。左が「法律」の系列、右が「規則」の系列であり、それぞれに「時系列で積み上げた原本」と「主題別に並べ替えた法典」の2形態があるのだ。
U.S.C. と CFR の対応関係――授権の鎖をたどる
行政機関は無制限に規則を作れるわけではない。必ず法律による授権(rulemaking authority)を必要とする。そしてこの授権関係は、CFR の各パートの冒頭に置かれた「Authority(授権規定)」を見れば一目で分かる。
21 CFR Part 11 の Authority は次のとおりである。
Source: 62 FR 13464, Mar. 20, 1997, unless otherwise noted.
――eCFR「21 CFR Part 11―Electronic Records; Electronic Signatures」
これは「Part 11 は 21 U.S.C. §321〜§393(=FD&C Act の主要規定)および 42 U.S.C. §262(公衆衛生法の生物学的製剤規定)を根拠に制定された」という意味である。同様に、医療機器の 21 CFR Part 820 の Authority は「21 U.S.C. 351, 352, 360, 360c, 360d, 360e, 360h, 360i, 360j, 360l, 371, 374, 381, 383; 42 U.S.C. 216, 262, 263a, 264.」である。
FD&C Act は 21 U.S.C. Chapter 9 に編入されており、その第1条にあたる 21 U.S.C. §301 は「This chapter may be cited as the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act.(本章は連邦食品医薬品化粧品法と引用することができる)」と定めている。
最大の落とし穴:FD&C Act の条番号と U.S.C. の条番号は一致しない
- FDA の文書は「section 501(h) of the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act」のように法律そのものの条番号で引用する。
- 一方、CFR の Authority や判例は「21 U.S.C. 351(h)」のように合衆国法典の条番号で引用する。
- この2つは同じ規定を指している。FD&C Act 第501条=21 U.S.C. §351(Adulterated drugs and devices)である。実際、21 U.S.C. §351 の末尾には制定経緯として「(June 25, 1938, ch. 675, §501, 52 Stat. 1049; …)」と記されている。
- 同様に、医療機器 GMP の授権規定である FD&C Act 第520条(f) は 21 U.S.C. §360j(f) である。
- 「§501 と §351 は別の条文だ」と誤読すると、査察指摘の根拠条文を追えなくなる。両者を突き合わせる癖をつけること。
この二重番号の実例は、現行の 21 CFR §820.10(e) にそのまま現れている。同項は「The failure to comply with any applicable requirement in this part renders a device adulterated under section 501(h) of the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act(本パートの適用要求事項に適合しない場合、当該機器は FD&C Act 第501条(h)にいう不良品となる)」と規定する。他方、Part 820 の Authority は同じ規定を「21 U.S.C. 351」と書いている。条文の中では法律の条番号、Authority では U.S.C. の条番号――同一文書内でさえ2つの体系が併存しているのである。
CFR の構成――50 のタイトルによる分類
CFR は50 のタイトル(Title)に分類されている。各タイトルは連邦規制が及ぶ広い主題領域を表し、関連する規則が集約されている。GovInfo は「The CFR is divided into 50 titles that represent broad areas subject to Federal regulation.」と説明している。
ただし、ここには2つの注意点がある。
「50 タイトル」に関する2つの注意
- Title 35 は現在[Reserved](欠番)である。番号としては 1 から 50 まで存在するが、実際に規則が収録されているタイトルは 49 である(eCFR の Titles API で 2026年8月17日時点の実測)。
- 「1タイトル=1省庁」ではない。タイトルは「主題」で区切られており、所管機関で区切られているわけではない。所管機関の単位は、タイトルの下の Chapter(章)である。GovInfo も「Each title is divided into chapters, which usually bear the name of the issuing agency.(各タイトルは章に分かれ、章は通常、規則を発する機関の名を冠する)」と明記している。
主要なタイトルは次のとおりである。「所管機関」欄は代表的な機関であって、そのタイトルが単一の機関のものであることを意味しない点に注意されたい。
| Title | タイトル名(原文) | 分野 | 主たる所管機関 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 7 | Agriculture | 農業 | 農務省(USDA) | Subtitle A(長官府)/Subtitle B(省の規則)に大別 |
| 14 | Aeronautics and Space | 航空・宇宙 | 連邦航空局(FAA)・NASA | ― |
| 17 | Commodity and Securities Exchanges | 商品・証券取引 | CFTC・SEC | ― |
| 21 | Food and Drugs | 食品・医薬品 | FDA(Chapter I のみ) | Chapter II は DEA、Chapter III は ONDCP(後述) |
| 26 | Internal Revenue | 内国歳入 | 内国歳入庁(IRS) | ― |
| 35 | Reserved | ― | ― | 欠番 |
| 40 | Protection of Environment | 環境保護 | 環境保護庁(EPA) | Chapter V は環境諮問委員会(CEQ)等、EPA 以外の章もある |
| 42 | Public Health | 公衆衛生 | HHS・CMS・CDC 等 | ― |
| 45 | Public Welfare | 公的福祉 | HHS 等 | Part 46(被験者保護=Common Rule)を収録 |
| 49 | Transportation | 運輸 | 運輸省(DOT) | Subtitle A(長官府)/Subtitle B(その他)に大別 |
| 50 | Wildlife and Fisheries | 野生生物・漁業 | 内務省・商務省 | ― |
https://www.ecfr.gov/api/versioner/v1/titles.json)で機械的に取得できる。上表のタイトル名は 2026年8月17日時点の同 API の実測値である。所管機関は各タイトルの Chapter 構成(Structure API)から確認した。
【核】CFR 引用の読み方――「21 CFR §11.10(a)」を分解する
ここからが本コラムの中心である。CFR の引用表記を階層に分解して読めるようになること――これができれば、規制文書を読む速度は劇的に上がる。逆にこれができないと、査察指摘や監査所見に書かれた条番号を追えない。
基本構造――「タイトル番号 CFR パート.セクション(段落)」
まず、CFR の階層構造そのものが、CFR に収録された規則によって定められている。根拠は 1 CFR §21.11(Standard organization of the Code of Federal Regulations)である。同条は「The standard organization consists of the following structural units(標準的な構成は次の構造単位から成る)」として、(a) から (h) までを順に列挙している。
| 単位 | 表記例 | 採番方法(1 CFR §21.11) | 必須か | 引用に現れるか |
|---|---|---|---|---|
| Title(タイトル) | 21 | Code 全体を通じてアラビア数字で連番 | 必須 | 現れる |
| Subtitle(サブタイトル) | A | タイトル内で大文字アルファベット | 任意(§21.7(b)) | 現れない |
| Chapter(章) | I | タイトル内でローマ数字大文字 | 通常は置かれる | 通常は現れない |
| Subchapter(小章) | A | 章内で大文字アルファベット | 任意(§21.8(b)) | 通常は現れない |
| Part(パート) | 11 | タイトル内でアラビア数字 | 必須 | 現れる |
| Subpart(サブパート) | B | 大文字アルファベット | 任意(§21.9(b)) | 通常は現れない |
| Section(セクション/条) | 11.10 | パート内でアラビア数字。「パート番号+ピリオド+セクション番号」 | 必須。Code の基本単位 | 現れる |
| Paragraph(段落/項) | (a) | (a)→(1)→(i)→(A) の順(後述) | 必要に応じて | 現れる |
1 CFR §21.10(a) は「The normal divisions of a part are sections. Sections are the basic units of the Code.(パートの通常の区分はセクションである。セクションは Code の基本単位である)」と定め、§21.11(g) は「A section number includes the number of the part followed by a period and the number of the section.(セクション番号は、パート番号にピリオドとセクション番号を続けたものである)」と定める。OFR の Document Drafting Handbook(August 2018 Edition, Rev.2)Table 2-3 も同じ趣旨で、Chapter を「Rules of a single issuing agency(単一の発出機関の規則)」と説明している。
そして引用の書式そのものも規則で定められている。
――1 CFR §8.9 Form of citation(趣旨:CFR はタイトルとセクションで引用してよく、”Code of Federal Regulations” の短縮形として “CFR” を用いてよい。例えば “1 CFR 10.2” は、タイトル1・パート10・セクション2 を指す)
公式の引用形式に Chapter も Subchapter も Subpart も含まれていないことに注意されたい。これが「引用だけ見ても所管機関が分からない」という後述の問題を生む。
これを踏まえて 21 CFR §11.10(a) を分解すると、次のようになる。
| 引用のどの部分か | 階層 | この事案での中身 | 意味するところ |
|---|---|---|---|
| 21 CFR §11.10(a) | Title 21 | Food and Drugs | 食品・医薬品という主題領域 |
| (表記されない) | Chapter I | Food and Drug Administration, Department of Health and Human Services | この規則の発出機関が FDA であること |
| (表記されない) | Subchapter A | General | 特定の製品分野に限らない一般規定であること |
| 21 CFR §11.10(a) | Part 11 | Electronic Records; Electronic Signatures | 電子記録・電子署名という主題のまとまり |
| (表記されない) | Subpart B | Electronic Records | 3つのサブパートのうち「電子記録」の側 |
| 21 CFR §11.10(a) | Section 11.10 | Controls for closed systems. | 条文の実体。「クローズドシステムの管理」 |
| 21 CFR §11.10(a) | Paragraph (a) | Validation of systems to ensure accuracy, reliability, consistent intended performance, and the ability to discern invalid or altered records. | 第1階層の段落。いわゆる「バリデーション要求」 |
引用に現れない階層こそが、意味を決めている
- Chapter は引用に現れないが、「どの機関の規則か」を決めている。「21 CFR」と書いてあっても、それが FDA の規則だとは限らない(後述)。
- Subpart も引用に現れないが、条文の適用文脈を決めている。§11.10 が Subpart B(Electronic Records)にあるのに対し、§11.100〜§11.300 は Subpart C(Electronic Signatures)にある。同じ Part 11 でも「記録の話」か「署名の話」かで守備範囲が違う。
- セクション番号は「パート番号+ピリオド+連番」である。したがって §11.10 の「11」はパート番号であって、「第11条」という意味ではない。§820.30 の「820」も同様である。
「21 CFR Part 820」と「21 CFR §820.10」の違い
初心者が最も混同しやすいのが、パートを指しているのか、セクションを指しているのかである。
| 表記 | 指しているもの | 範囲 | 実務での使い方 |
|---|---|---|---|
| 21 CFR Part 820 | パート全体 | §820.1 から §820.45 まで(現行)を含む規則の束 | 「QMSR に対応する」のように制度全体を指すとき |
| 21 CFR §820.10 | 単一のセクション | 「Requirements for a quality management system(品質マネジメントシステムの要求事項)」1条のみ | 「§820.10(a) で ISO 13485 適合の文書化が求められている」のように具体的な要求を指すとき |
| 21 CFR 820 | Part 820 と同義 | 同上 | 「Part」の語や「§」を省いた略記。文脈で判断する |
| 21 CFR §§820.20-820.30 | 複数セクションの範囲 | §820.20 から §820.30 まで | 「§§」(セクション記号の重ね打ち)は複数形を意味する |
| 21 U.S.C. §301 et seq. | 法律の条文範囲 | §301 以下(=FD&C Act 全体) | et seq. はラテン語 et sequentes(=以下続く)の略 |
要するに、ピリオドがあればセクション、なければパートと覚えればよい。「21 CFR 820」はパート、「21 CFR 820.10」はセクションである。
段落の指定レベル――(a) → (1) → (i) → (A)
セクションの中の段落には、指定順序が規則で定められている。1 CFR §21.11(h) が定める6段階は次のとおりである(OFR の Document Drafting Handbook Table 2-4「List of paragraph levels」も同じ)。
| レベル | 指定記号 | 読み方の例 |
|---|---|---|
| 第1レベル | (a), (b), (c) … | §11.10(a) |
| 第2レベル | (1), (2), (3) … | §11.200(a)(3) |
| 第3レベル | (i), (ii), (iii) … | §820.10(c)(2) 配下の階層など |
| 第4レベル | (A), (B), (C) … | §233.24(f)(1)(i)(A)(OFR の例示) |
| 第5レベル | (1), (2), (3) …(イタリック) | ― |
| 第6レベル | (i), (ii), (iii) …(イタリック) | ― |
――Office of the Federal Register「Document Drafting Handbook」August 2018 Edition (Rev.2) 2-26(趣旨:1つのセクションで使える指定レベルは最大6段。ただし3段を超えないことを強く推奨する)
この規則を知っていると、「(a)(3)」と「(a)(iii)」は別物であることが即座に分かる。前者は第1→第2レベル、後者は第1→第3レベル(第2レベルを飛ばしているので通常はあり得ない)である。電子署名の共謀(collaboration)要件として知られる 21 CFR §11.200(a)(3) は、「Part 11 → §11.200(電子署名の構成要素と管理) → 段落(a)(生体認証によらない電子署名) → 第2レベル(3)」という位置にある。
▲【動画】FDA規制・査察の基礎とQMSRへの対応およびQMS構築の実践ポイント(株式会社イーコンプライアンス)
Title 21 の構造――食品医薬品分野の規制体系
Title 21 は FDA だけのものではない
「Title 21=FDA」という説明を目にすることがあるが、これは正確ではない。Title 21「Food and Drugs」は、2026年8月17日時点で3つの Chapter から成る。
| Chapter | 所管機関(原文) | 日本語 | Part 番号帯 | 収録内容の例 |
|---|---|---|---|---|
| Chapter I | Food and Drug Administration, Department of Health and Human Services | 食品医薬品局(FDA)/保健福祉省 | Part 1〜1299 | Part 11(電子記録・電子署名)、Part 211(cGMP)、Part 820(QMSR)ほか |
| Chapter II | Drug Enforcement Administration, Department of Justice | 麻薬取締局(DEA)/司法省 | Part 1300〜1399 | Part 1301(規制薬物の登録)、Part 1304(記録・報告)、Part 1311(電子処方箋・電子発注の要件) |
| Chapter III | Office of National Drug Control Policy | 国家麻薬統制政策局(ONDCP) | Part 1400〜1499 | Part 1401(情報公開)、Part 1402(秘密指定解除審査) |
「21 CFR」と書いてあっても FDA の規則とは限らない
- 21 CFR Part 1311 は「Requirements for Electronic Orders and Prescriptions」という、まさに電子記録・電子署名を扱う規則である。しかしこれは DEA の規則であって、Part 11 とは別体系である。所管も要求事項も異なる。
- 「21 CFR で電子署名を検索したら Part 1311 が出てきた」というのは、初心者がよく踏む罠である。Part 番号が 1300 番台なら DEA、と覚えておけばよい。
- 逆にいえば、Chapter を見れば所管機関が一意に決まる。「Chapter=単一の発出機関の規則」という OFR の定義(Document Drafting Handbook Table 2-3)が効いてくる場面である。
Chapter I(FDA)の Subchapter 構成
FDA の規則である Chapter I は、さらに 12 の Subchapter に分かれている。自社の製品がどの Subchapter に属するかを把握しておくと、関連規則を芋づる式にたどれる。
| Subchapter | 名称(原文) | 分野 | Part 番号帯 |
|---|---|---|---|
| A | General | 一般規定(横断的規則) | 1〜99 |
| B | Food for Human Consumption | ヒト用食品 | 100〜199 |
| C | Drugs: General | 医薬品(一般) | 200〜299 |
| D | Drugs for Human Use | ヒト用医薬品 | 300〜499 |
| E | Animal Drugs, Feeds, and Related Products | 動物用医薬品・飼料 | 500〜599 |
| F | Biologics | 生物学的製剤 | 600〜680 |
| G | Cosmetics | 化粧品 | 700〜799 |
| H | Medical Devices | 医療機器 | 800〜898 |
| I | Mammography Quality Standards Act | マンモグラフィ品質基準法 | 900 |
| J | Radiological Health | 放射線衛生(放射線を放出する電子製品) | 1000〜1040 |
| K | Tobacco Products | たばこ製品 | 1100〜1150 |
| L | Regulations Under Certain Other Acts Administered by the FDA | FDA が所管するその他の法律に基づく規則 | 1210〜1299 |
Part による細分化――代表的な Part
Title 21 Chapter I の代表的な Part を、Subchapter とあわせて示す。Subchapter 欄を見れば、その規則がどの製品分野の文脈にあるかが分かる。
| Part | Subchapter | 正式名称(原文) | 内容 |
|---|---|---|---|
| Part 11 | A(General) | Electronic Records; Electronic Signatures | 電子記録および電子署名。製品分野を問わない横断的規則 |
| Part 210 | C(Drugs: General) | Current Good Manufacturing Practice in Manufacturing, Processing, Packing, or Holding of Drugs; General | 医薬品 cGMP の総則 |
| Part 211 | C(Drugs: General) | Current Good Manufacturing Practice for Finished Pharmaceuticals | 製剤の cGMP。11 の Subpart(A〜K)から成る |
| Part 312 | D(Drugs for Human Use) | Investigational New Drug Application | 治験薬(IND) |
| Part 314 | D(Drugs for Human Use) | Applications for FDA Approval to Market a New Drug | 新薬承認申請(NDA) |
| Part 600 番台 | F(Biologics) | Biological Products: General ほか | 生物学的製剤 |
| Part 820 | H(Medical Devices) | Quality Management System Regulation | 医療機器の品質マネジメントシステム規則(QMSR)。2026年2月2日に旧 Quality System Regulation(QSR)から移行 |
| Part 803 | H(Medical Devices) | Medical Device Reporting | 医療機器の不具合報告 |
| Part 830 | H(Medical Devices) | Unique Device Identification | 機器固有識別子(UDI) |
Part 11 が Subchapter A(General)にあることには大きな意味がある。医薬品でも医療機器でも食品でも、Title 21 のどの Part が要求する記録であっても、それを電子的に扱うなら Part 11 が乗ってくる――この横断性が、Part 11 という規則の性格を決めている。
21 CFR Part 11 の位置づけ
Part 11 が生まれた背景
1997年に FDA が制定した 21 CFR Part 11 は、電子記録と電子署名の使用に関する規則である。医薬品業界では長年、紙ベースの記録と手書きの署名が標準であったが、コンピュータ技術の発展により電子システムへの移行が進んでいた。しかし、電子記録は改ざんが容易であり、その信頼性をどのように担保するかが課題となっていた。
FDA はこの課題に対応するため、電子記録と電子署名が紙の記録や手書きの署名と同等の信頼性と法的効力を持つための要件を定めた。それが Part 11 である。
最終規則は 1997年3月20日に連邦官報に掲載され(62 FR 13430〜13466、文書番号 97-6833)、1997年8月20日に発効した。なお、Part 11 の条文本文そのものが始まるのは 62 FR 13464 であり、それ以前の約34ページは preamble(前文=コメントへの回答)である。Part 11 制定の詳しい経緯は、姉妹記事「21 CFR Part 11 が生まれた経緯」で扱っている。
Part 11 の適用範囲
Part 11 は、FDA に提出される記録や、FDA が査察において確認する記録に適用される。条文は §11.1(b) で次のように定めている。
――21 CFR §11.1(b)(趣旨:本パートは、当局の規則が定める記録要求事項の下で作成・変更・保管・保存・検索・送信される電子形式の記録に適用される。ただし、電子的手段で送信された(あるいは送信されたことのある)紙の記録には適用されない)
つまり、「他の規則(predicate rule)が要求する記録であること」と「電子形式であること」の両方が適用の要件である。例えば、医薬品製造において Part 211 で要求される製造記録を電子システムで管理する場合、そのシステムは Part 11 の要件を満たさなければならない。このように、Part 11 は他の Part と連携して機能する横断的な規則である。
なお、紙で出力していれば Part 11 の対象外になるという議論(いわゆる「タイプライターエクスキューズ」)については、2003年ガイダンス「Part 11, Electronic Records; Electronic Signatures — Scope and Application」の解釈をめぐって根強い誤解がある。詳しくは「タイプライターエクスキューズとは」を参照されたい。
Part 11 の主要要件――3つのサブパート
| Subpart | 名称 | 収録セクション | 内容 |
|---|---|---|---|
| Subpart A | General Provisions(一般規定) | §11.1 Scope/§11.2 Implementation/§11.3 Definitions | 電子記録の範囲と定義、電子記録・電子署名が紙の記録や手書き署名と同等とみなされる条件 |
| Subpart B | Electronic Records(電子記録) | §11.10 Controls for closed systems/§11.30 Controls for open systems/§11.50 Signature manifestations/§11.70 Signature/record linking | システムのバリデーション、監査証跡、正確なコピーの生成能力、記録の保護などの技術的要件 |
| Subpart C | Electronic Signatures(電子署名) | §11.100 General requirements/§11.200 Electronic signature components and controls/§11.300 Controls for identification codes/passwords | 電子署名の固有性、署名者の本人確認、生体認証やパスワード管理、署名の意味の明確化 |
とりわけ §11.10 は (a) から (k) まで11の段落を持ち、閉鎖系システムに求められる管理策を列挙している。冒頭の (a) が「Validation of systems …」=バリデーション要求であり、(e) が監査証跡の要求である。署名の3つの明示事項(署名者名・日時・意味)を定める §11.50 も Subpart B に属する。実務上まだ解決していない論点については「Part 11 の4つの解けない課題」を参照されたい。
eCFR と紙版 CFR――「現行版」と「特定日時点の版」
CFR を実務で使うときに最も重要でありながら、最も軽視されているのが「どの版を見ているのか」という問題である。CFR には性格の異なる2つの提供形態があり、これを取り違えると「査察時点で有効だった条文」を再現できなくなる。
2つの提供形態の違い
| ― | eCFR(ecfr.gov) | CFR 年次版(紙版/govinfo.gov の PDF) |
|---|---|---|
| 正式名称 | electronic Code of Federal Regulations | Code of Federal Regulations, annual edition |
| 作成主体 | OFR(連邦官報局)+GPO(政府出版局) | OFR+GPO |
| 法的地位 | 非公式(authoritative but unofficial) ACFR が「情報提供のための資源」として作成を認めたもの |
公式(official edition) 1 CFR §8.6 が認める2形態がこれである |
| 更新頻度 | 日次(おおむね2営業日以内に反映) | 年1回(タイトルごとに決まった基準日) |
| 「今この瞬間」の条文 | 取得できる | 取得できない(最終改訂日時点の内容) |
| 過去の特定日時点の条文 | 日単位で取得できる(日付指定 URL。後述) | 年単位で取得できる(年次版のバックナンバー) |
| 収録期間 | おおむね2017年以降(タイトルにより異なる。後述) | 1997年以降(一部1996年まで)を GovInfo が保持 |
| 実務での使いどころ | 最新条文の確認、施行前後の比較、条文の変遷追跡 | 「何年何月何日時点でどうだったか」を公式な形で示す必要があるとき |
eCFR は「公式版」ではない
ここが実務上きわめて重要である。日常的に誰もが使っている eCFR は、法的には公式版ではない。公式版として認められている形態は、1 CFR §8.6 が次の2つに限定している。
――1 CFR §8.6 Forms of publication(趣旨:ACFR が CFR の公表形態として認めるのは、紙版と govinfo.gov 上のオンライン版の2つである)
eCFR.gov はこの列挙に含まれていない。eCFR 自身も、サイト上で次のように明言している。
The content of eCFR is authoritative but unofficial. While we try to ensure that the material on the eCFR is accurate, those relying on it for legal research should verify their results against the most current official edition of the CFR, the daily Federal Register, and the List of CFR Sections Affected (LSA).
――eCFR(ecfr.gov トップページおよび「About This Site — Legal Status」。趣旨:eCFR は CFR の公式な法的版ではない。その内容は権威はあるが非公式であり、法的な調査で依拠する場合は、最新の公式版 CFR・日次の連邦官報・LSA と突き合わせて検証すべきである)
実務上の使い分け
- 日々の条文確認・条番号の実在確認は eCFR でよい。日次更新なので最も新しく、日付指定もできる。
- ただし、規制当局への提出文書・契約・法的主張の根拠として条文を引くときは、公式版(紙版または govinfo.gov の PDF)で裏を取る。eCFR 自身がそう指示している。
- ACFR/OFR は「将来的に eCFR を ACFR が公式に認める刊行物とすること」を目標として表明しているが、2026年8月時点でそれを実現する規則は連邦官報に出ていない(OFR・ACFR が発出した全文書を federalregister.gov の API で走査して確認した)。
改訂サイクル――年1回、タイトルごとに基準日が違う
よくある誤解:「CFR は年4回更新される」ではない
- 正しくは、各タイトルは年1回だけ改訂される。ただし全50タイトルを一度に出すのは不可能なので、タイトル群ごとに基準日をずらしている(staggered basis)。その基準日が年4回あるだけである。
- したがって「Title 21 は年4回更新される」というのは誤りで、Title 21 は毎年4月1日現在の内容に、年1回だけ改訂される。
この年1回という改訂頻度は、規則で定められたものである。1 CFR §8.3 は「(a) Criteria. Each book of the Code shall be updated at least once each calendar year.(Code の各巻は、各暦年に少なくとも1回更新されなければならない)」「(b) Staggered publication. The Code will be produced over a 12-month period under a staggered publication system …(Code は12か月をかけて、時期をずらした刊行方式で作成される)」と定めている。さらに (c) は「each title updated as of July 1 each year will reflect all amendatory documents appearing in the daily Federal Register on or before July 1(毎年7月1日現在で更新される各タイトルは、7月1日以前に日次の連邦官報に掲載されたすべての改正文書を反映する)」として、「As of」の日付が締切日であることを明示している。
GovInfo は実際の運用スケジュールを次のように明記している。
――GovInfo「Code of Federal Regulations」(趣旨:50 の主題タイトルは1つ以上の巻から成り、各暦年に1回、時期をずらして更新される)
| タイトル群 | 改訂の基準日 | 含まれる主な分野 |
|---|---|---|
| Title 1〜16 | 毎年 1月1日現在 | 一般規定、農業、銀行、航空宇宙 ほか |
| Title 17〜27 | 毎年 4月1日現在 | Title 21(食品・医薬品)を含む。証券取引、内国歳入 ほか |
| Title 28〜41 | 毎年 7月1日現在 | 司法、労働、国防、教育、環境保護(Title 40)ほか |
| Title 42〜50 | 毎年 10月1日現在 | 公衆衛生、公的福祉、運輸、野生生物 ほか |
だから「21 CFR 310.502 Revised as of April 1, 1997」という引用形式に出会うことがある。GovInfo はこの引用の構造を「Revision Year: Four digit year from the ‘Revised as of’ text represents the year being cited.(『Revised as of』の4桁の年が、引用されている版の年を表す)」と説明している。年次版を引用するときは「何年版か」まで書くのが正式な作法なのである。
eCFR の日付指定 URL――施行前後の条文を見比べる
eCFR には、任意の過去日時点の条文を表示する URLが用意されている。書式は次のとおりである。
https://www.ecfr.gov/on/<YYYY-MM-DD>/title-21/chapter-I/subchapter-H/part-820――eCFR の日付指定閲覧 URL の書式
実際に 2026-01-15 を指定してアクセスすると、ページタイトルに 「eCFR :: 21 CFR Part 820 (Jan. 15, 2026) — Quality System Regulation」と表示される(2026年8月19日 実測)。規則名が現行の「Quality Management System Regulation」ではなく、旧称の「Quality System Regulation」になっている点に注目されたい。この1本の URL で、「2026年1月15日時点では旧 QSR が有効だった」ことが証明できる。
この機能は、次のような実務で決定的に有用である。
- 施行前後の条文の突き合わせ。改正前後の条文を並べて差分を取る。
- 過去の査察・監査の再現。「当時、この条項はどう書かれていたか」を当局サイトの一次情報で示せる。
- 遡及適用の検討。施行日前に作成した記録が、施行後の査察でどう扱われるかを検討する際の前提確認(この論点は「なぜ事後法が適用されたのか」で扱っている)。
日付指定はどこまで遡れるか――無制限ではない
- eCFR のヘルプは「The Timeline view provides an overview of all changes to the content you are viewing since 2017.」として、2017年以降を対象と説明している。
- 実際の最古日はタイトルごとに異なる。Title 21 の場合、
/on/2016-12-30/は404、/on/2016-12-31/は200であり、2016年12月31日が最古である(2026年8月19日 実測)。 - それより前の条文が必要なときは、GovInfo の CFR 年次版(1997年〜)を使う。こちらは公式版でもあるので、法的な根拠として示すにも適している。
https://www.ecfr.gov/api/versioner/v1/…)もあり、条文の XML やタイトル構造を機械的に取得できる。本コラムの各種の実測値もこの API で確認した。ただし数百 KB の生 XML を返すため、社内資料や手順書に貼るリンクとしては上記の閲覧用 URL を使うこと。
条番号は動く――QMSR 施行で §820.30 が消えた
「CFR は毎年改訂される」というのは抽象的な話ではない。条文が丸ごと消え、条番号が[Reserved](欠番)になることが現実に起きる。直近で最も影響が大きかったのが、医療機器の 21 CFR Part 820 である。
FDA は2024年2月2日に最終規則「Medical Devices; Quality System Regulation Amendments」(89 FR 7496〜7525、文書番号 2024-01709)を公示し、2026年2月2日に発効させた。これにより Part 820 は、旧 Quality System Regulation(QSR)から、ISO 13485:2016 を引用組み込みした Quality Management System Regulation(QMSR)へと姿を変えた。
その結果、Part 820 の構造は次のように激変した。
| ― | 2026年1月15日時点(旧 QSR) | 現行(QMSR、2026年8月17日時点) |
|---|---|---|
| 規則名 | Quality System Regulation | Quality Management System Regulation |
| §820.10 | (存在しない) | Requirements for a quality management system(新設) |
| §820.20 | Management responsibility(管理責任) | §§820.20-820.30 [Reserved](欠番) |
| §820.22 | Quality audit(品質監査) | |
| §820.30 | Design controls(設計管理) | |
| §820.35 | (存在しない) | Control of records(記録の管理) |
| §820.40 | Document controls(文書管理) | [Reserved](欠番) |
| §820.45 | (存在しない) | Device labeling and packaging controls |
| Subpart C〜O | 設計管理・購買管理・工程管理等を収録 | すべて[Reserved] |
「§820.30 に基づく設計管理」と書いた手順書は、もう根拠を失っている
- 旧 §820.30(Design controls)は条文ごと消滅した。設計管理の要求が消えたのではなく、ISO 13485:2016 の Clause 7.3 を引用組み込みする形に置き換わった(現行 §820.10(c) が、クラスII・III および一部のクラスI 機器について Clause 7.3 への適合を求めている)。
- したがって、社内 SOP や品質マニュアルに「21 CFR §820.30 に基づき…」と書いてある箇所は、すべて条番号の見直しが必要である。
- 同様に、旧 §820.180(c)(記録の保管期間)など、QSR 時代の条番号を引いている記述はすべて棚卸しの対象になる。
- これが「条番号は記憶で書いてはいけない」ことの最も強い実例である。手順書に条番号を書くときは、必ず eCFR の現行版で実在を確認すること。
QMSR と ISO 13485:2016 の具体的な差異については「ISO13485:2016 と QMSR との差異」を、査察運用の変化については「FDA 医療機器査察の新時代」を、設計履歴ファイル(DHF)という用語の扱いについては「なぜ設計履歴ファイル(DHF)が必要なのか」を参照されたい。
CFR 体系を理解する実践的意義
規制の関連性を把握する
CFR の構造を理解することで、個別の規則がどのような文脈に位置づけられているかが明確になる。例えば、Part 11 を理解する際には、それが単独で存在するのではなく、Part 210、211、312 などの製造や治験に関する規則と密接に関連していることが分かる。
この関連性の理解は、コンプライアンス対応において極めて重要である。Part 11 に準拠した電子システムを導入する際には、そのシステムが最終的に何の規則(例えば cGMP)に基づく記録を管理するのかを明確にする必要がある。Part 11 は「何の記録か」を決めない。決めるのは predicate rule の側である。だからこそ、Part 11 だけを読んでも要求事項の全体像は見えない。
規制動向の追跡
新たな規則の追加や既存規則の改訂が行われるため、最新の規制動向を把握するためには CFR の構造理解が不可欠である。Title 21 のどの Part が改訂されたかを追跡することで、自社の業務への影響を迅速に評価できる。
追跡の手段としては、次の3つを押さえておけばよい。
- Federal Register で「これから起きること」を掴む提案規則(NPRM)とパブリックコメント期間は、すべて連邦官報に載る。federalregister.gov は CFR の Part 単位でも検索でき、API も公開されている。
- eCFR で「今どうなっているか」を確認する最終規則が発効すると eCFR に日次で反映される。条文の実在確認はここで行う。
- LSA と CFR Parts Affected で「変わった箇所」を洗い出すGovInfo が提供する LSA(List of CFR Sections Affected)は、各タイトルの最終改訂以降に変更されたセクションを累積で一覧化したものである。
グローバル規制との整合性
現在、多くの国や地域が FDA の規制を参考にした独自の規制を導入している。例えば、欧州の EudraLex Volume 4 Annex 11(Computerised Systems)や、日本のいわゆる ER/ES 指針は、いずれも 21 CFR Part 11 を参照して策定されている。ER/ES 指針の正式名称は「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について」(平成17年4月1日 薬食発第0401022号)である。CFR の構造を理解することは、グローバルな規制環境を理解する第一歩となる。
公式リソースの活用
CFR の全文は無料で閲覧できる。用途別に使い分けるとよい。
| サイト | 運営 | 取得できるもの | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| ecfr.gov | OFR+GPO | 日次更新の CFR、日付指定版、改正履歴、XML API | 現行条文の確認、施行前後の比較 |
| govinfo.gov | GPO | CFR 年次版(1997年〜)、U.S.C.、LSA、原文 XML/PDF | 「何年版でどうだったか」の確認、U.S.C. の原文 |
| federalregister.gov | OFR+GPO | 連邦官報の全文、提案規則、コメント、API | 規則制定の経緯(preamble)の調査 |
| fda.gov | FDA | ガイダンス文書、Q&A、コンプライアンスプログラム | 条文の解釈・当局の運用方針の確認 |
とくに Part 11 については、FDA が2003年8月に発行したガイダンス「Part 11, Electronic Records; Electronic Signatures — Scope and Application」が、実務上の解釈を理解する上で重要である。ただし、ガイダンスは規則ではない。ガイダンスは FDA の「現時点の考え方(current thinking)」を示すもので、法的拘束力を持つのは CFR の条文の側である。
社内での知識共有
CFR の体系的理解は、品質保証部門だけでなく、製造、研究開発、IT など様々な部門で必要とされる。定期的な社内研修を実施し、関連部門が CFR の基本構造と自部門に関連する規則を理解できるようにすることが望ましい。
特に、新たな電子システムを導入する際には、システム開発担当者が Part 11 の要件を正確に理解していることが成功の鍵となる。教育の場では、条文そのものを読ませるより先に「引用の読み方」を教えたほうが定着が早い。「§11.10(a) の (a) は第1レベルの段落で、これがバリデーション要求である」と説明できる状態を目指したい。
まとめ――CFR を読むための7つのポイント
- CFR は「規則を編纂した法典」であり、規則が出る場所ではない規則が公示されるのは Federal Register。CFR はそれを主題別に並べ替えたものである。法律の側では Statutes at Large と U.S.C. が同じ関係にある。
- CFR は50のタイトルに分かれるが、Title 35 は欠番番号は1〜50だが、実際に規則が収録されているのは49タイトルである(2026年8月17日 eCFR API 実測)。
- 「Title 21=FDA」ではない。FDA は Chapter I だけであるChapter II は DEA(司法省、Part 1300〜1399)、Chapter III は ONDCP。電子処方箋を扱う 21 CFR Part 1311 は DEA の規則であって Part 11 とは別体系である。
- 引用に現れない階層(Chapter・Subchapter・Subpart)が意味を決めている「21 CFR §11.10(a)」=Title 21/(Chapter I=FDA)/(Subchapter A=General)/Part 11/(Subpart B=Electronic Records)/Section 11.10/Paragraph (a)。段落は (a)→(1)→(i)→(A) の順で最大6段。
- Title 21 は毎年4月1日現在の内容に、年1回改訂される「年4回更新」は誤り。1 CFR §8.3(a) は「各巻は各暦年に少なくとも1回更新される」と定め、同(b) が時期をずらした刊行(staggered publication)を定めている。基準日が1月1日/4月1日/7月1日/10月1日と4つあるだけで、各タイトルは年1回である。
- 条番号は動く。eCFR の日付指定 URL で「当時」を再現せよQMSR 施行(2026年2月2日)で 21 CFR §§820.20-820.30 は[Reserved]となり、旧 §820.30(Design controls)は条文ごと消滅した。
https://www.ecfr.gov/on/2026-01-15/…のような日付指定 URL を使えば、施行前の条文をそのまま示せる(Title 21 は2016年12月31日まで遡れる)。 - eCFR は「権威はあるが非公式」。公式版は紙版と govinfo.gov である1 CFR §8.6 が公式形態として認めているのは「Paper」と「Online on www.govinfo.gov」の2つのみ。日常の条文確認は eCFR でよいが、法的根拠として引くときは公式版で裏を取る。
規制環境は常に変化している。CFR の構造を理解し、継続的に最新情報を追跡することが、製薬・医療機器業界で活躍するすべての専門家に求められる基本的なスキルである。技術の進化とともに規制も進化していく中で、その根幹となる CFR の理解は、今後ますます重要性を増していくであろう。そして、その第一歩は「条番号を記憶で書かず、必ず原典で確かめる」という単純な習慣である。
参考・出典(一次情報源)
- eCFR「Title 21 — Food and Drugs」(Chapter I=FDA、Chapter II=DEA、Chapter III=ONDCP の構成)
- eCFR「21 CFR Part 11 — Electronic Records; Electronic Signatures」(Authority/Source/Subpart 構成)
- eCFR「21 CFR 11.10 — Controls for closed systems」((a)〜(k) の段落構成)
- eCFR「21 CFR Part 820 — Quality Management System Regulation」(現行。§§820.20-820.30 [Reserved])
- eCFR「21 CFR Part 820 (Jan. 15, 2026) — Quality System Regulation」(日付指定 URL の実例。旧 §820.30 Design controls を収録)
- eCFR「21 CFR Part 1311 — Requirements for Electronic Orders and Prescriptions」(DEA=Chapter II の規則)
- eCFR「1 CFR Part 21 — Preparation of Documents Subject to Codification」(§21.7〜§21.11:CFR の階層単位と段落指定レベルの法的根拠)
- eCFR「1 CFR Part 8 — Code of Federal Regulations」(§8.3 年次更新/§8.6 公式な公表形態/§8.9 引用形式)
- eCFR「1 CFR Part 5 — General(The Federal Register)」(§5.5:連邦官報は CFR の日次追補である)
- eCFR「About This Site — Legal Status」(”The content of eCFR is authoritative but unofficial.”)
- GovInfo「44 U.S.C. §1510 — Code of Federal Regulations」(CFR 刊行の法的根拠。公表された条文は prima facie evidence とされる)
- GovInfo「Code of Federal Regulations」(50タイトルの構成、年1回・staggered な改訂サイクル、引用の構造)
- GovInfo「21 U.S.C. §301 — Short title」(FD&C Act は 21 U.S.C. Chapter 9 に編入)
- GovInfo「21 U.S.C. §351 — Adulterated drugs and devices」(FD&C Act 第501条との対応)
- Office of the Federal Register「Document Drafting Handbook」August 2018 Edition (Rev.2)(Table 2-3:CFR units and numbering/Table 2-4:List of paragraph levels)
- Federal Register「Electronic Records; Electronic Signatures」(62 FR 13430、1997年3月20日公示・同年8月20日発効)
- Federal Register「Medical Devices; Quality System Regulation Amendments」(89 FR 7496、2024年2月2日公示・2026年2月2日発効=QMSR)
- FDA「Part 11, Electronic Records; Electronic Signatures — Scope and Application」(2003年8月)
- 厚生労働省「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について」(平成17年4月1日 薬食発第0401022号=ER/ES 指針)