Able Laboratories社倒産事件

2005年5月、米国ニュージャージー州の後発医薬品メーカー Able Laboratories, Inc. は、全製品の回収と全製造の停止に追い込まれ、2か月後には連邦破産法第11章の適用を申し立てた。引き金は、品質管理(QC)試験室で長年にわたり続けられた試験データの改ざんである。本稿は、この事案を FDA の公表資料、連邦官報(Federal Register)に公示された資格停止命令、および米国証券取引委員会(SEC)への提出書類という公開記録のみに基づいて再構成し、データインテグリティが崩れたときに企業と個人に何が起きるのかを検証するものである。

本稿は当社サイトにおける本事案の本編(詳細版)である。データインテグリティの一般論の中で本事案を要約して紹介している記事が別途4本あり、記事末尾からたどることができる。
なお本稿では、連邦官報に実名が公示されている関係者についても個人名は記載せず、当時の職位のみを示す。企業名は公開記録に基づき記載する。

1. 事案の全体像 ―― 公開記録で確認できる事実

Able Laboratories, Inc.(以下「Able社」)は、ニュージャージー州クランベリー(One Able Drive, Cranbury, NJ 08512)に製造所を構える後発医薬品メーカーであった。FDA は2005年5月2日から7月1日にかけて同社の査察を実施している。この査察で明らかになったのは、単なる記録の不備ではなく、品質管理部門における組織的な試験データの操作であった。

まず、公開記録から日付を確定できる出来事を時系列で整理する。

時期 出来事 根拠となる公開記録
1999年ごろ〜2005年 品質管理部門で試験データの操作・虚偽の試験記録の作成が継続 連邦官報 資格停止命令(各命令の事実摘示)
2005年5月2日〜7月1日 FDA による査察 FDA 公表資料
2005年5月13日 全医薬品の出荷を停止 FDA 公表資料
2005年5月19日 全製造を停止 FDA 公表資料
2005年5月23日 製造停止と全製品ラインの回収を公表 SEC 提出 Form 8-K
2005年(回収規模) 3,184 バッチを回収(クラスII) FDA 公表資料/連邦官報 70 FR 51075
2005年7月18日 連邦破産法第11章の適用をニュージャージー州連邦破産裁判所(トレントン支部)に申立て SEC 提出 Form 8-K
2005年8月29日 FDA が同社の ANDA 10件の承認を取下げ 連邦官報 70 FR 51075
2005年10月19日〜12月21日 資産売却手続。競売を経て Sun Pharmaceutical Industries が落札、11月14日に破産裁判所が承認、12月21日に 23,145,000ドルで実行 SEC 提出 Form 8-K
2006年1月19日 FDA が同社の ANDA 43件の承認を取下げ 連邦官報 71 FR 3097
2012年4月・2018年9月・2021年8月 関係者に対する資格停止(debarment)命令が連邦官報に公示 連邦官報(後掲の表)

発覚から製造停止までが3週間弱、破産申立てまでが2か月弱である。データインテグリティの崩壊が企業に与える打撃は、規制対応の遅れといった緩やかなものではなく、事業そのものの即時停止として現れる。

一般に本事案の解説では、内部告発を端緒とする for-cause 査察であった、査察官は4名で29日間を要した、特定製剤の溶出試験値が30.9%から102.8%に書き換えられた、株価が1日で約75%下落した、従業員500名が職を失った、といった記述が流布している。これらは本稿で参照した公開記録では確認できなかったため、本稿では採用していない。確認できた範囲の事実のみを記載している。

2. 何が行われたのか ―― 記録が示す手口

2-1. 品質部門が電子データを見ていなかった

FDA の公表資料が指摘した中核的な問題は、品質部門(Quality Unit)の機能不全である。同資料は、品質部門がバッチ出荷判定にあたって電子データを照査していなかったこと、Waters Empower データ収集システムのコンピュータ監査証跡を確認していなかったこと、分析化学者に対する適切な教育訓練を提供していなかったことを挙げ、その結果として、工程内規格・製品規格・安定性規格に適合しないバッチが出荷されるに至ったとしている。

品質部門は、バッチ出荷の一環として電子データを照査せず、Waters Empower データ収集システムのコンピュータ監査証跡を照査せず、分析化学者に十分な教育訓練を提供しなかった。これらの実務により、品質部門は工程内規格・最終製品規格・安定性規格に適合しないバッチを出荷するに至った。
――FDA 公表資料(Able Laboratories, Inc. / 趣旨)

ここに本事案の逆説がある。改ざんの証拠は、システムの監査証跡としてすべて残っていた。にもかかわらず、品質部門は紙に印刷された結果だけを見て出荷を判定していた。監査証跡は導入されていたが、運用されていなかったのである。

さらに同資料は、こうした実務が、年次報告および ANDA 75-383 に係る事前承認一部変更申請(Prior Approval Supplement #004)への誤ったデータの提出にもつながったとしている。当該申請は、プロポキシフェンナプシル酸塩・アセトアミノフェン配合錠についてブレンド均一性試験の廃止を求めるものであった。試験室内の不正が、そのまま FDA への申請内容の虚偽につながった構図である。

2-2. 連邦官報の資格停止命令が記載する行為

個々の行為の具体像は、後年に公示された資格停止命令の事実摘示から読み取ることができる。命令には、次のような行為が記載されている。

  • 不合格の試験結果を FDA から隠蔽するために、試験データおよび情報を操作・偽造したこと
  • 虚偽・不正確な試験結果を作成し、保管したこと
  • GMP に違反することにより、後発医薬品の製造・流通を承認するという FDA の適法な行政機能を妨害・阻害したこと
  • 特定製剤(2002年のブタルビタール・アセトアミノフェン・カフェイン配合剤、2003年のメチルフェニデート等)について試験データを偽造したこと
  • アテノロールの定量試験結果の偽造・操作を監督し、部下の化学者に溶出試験結果の偽造・操作を指示したこと
  • プロメタジンについて製造工程の操作を監督したこと

注目すべきは、下から2つ目の記載である。自ら手を下したのではなく、部下に指示した/監督したという事実そのものが、行政処分と刑事責任の根拠になっている。組織の上位者が「自分は手を触れていない」と主張しても意味をなさない。

2-3. これは “testing into compliance” である

個々の手口は異なるが、共通する構造は一つである。合格するまで試験をやり直し、合格した結果だけを採用して、不合格の結果はなかったことにする――いわゆる testing into compliance(規格適合するまでの試験の繰り返し)である。

FDA の Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production(規格外試験結果の調査に関するガイダンス/Level 2 revision)が繰り返し戒めているのは、まさにこの行為である。OOS が出たときにまず求められるのは再試験ではなく調査であり、試験室での原因(ラボエラー)が明確に特定されない限り、当初の OOS 結果を無効化することはできない。Able社では、この順序が完全に逆転していた。

3. 関係する cGMP 条文 ―― どこに違反したのか

日本の読者が本事案を自社に引き付けて読むには、どの条文が問題になったのかを押さえておくとよい。米国の医薬品 cGMP は 21 CFR Part 211 に定められている。本事案に直接関係するのは次の各条である(条見出しは eCFR の現行条文による)。

条文 条見出し(原文) 本事案との関係
21 CFR 211.160 General requirements(Subpart I – Laboratory Controls) 科学的に妥当な規格・標準・サンプリング計画・試験手順を確立し、文書化することを求める。試験手順からの逸脱は記録し正当化しなければならない。
21 CFR 211.165 Testing and release for distribution 出荷可否判定のための試験を規定。同条(f)は「確立された標準または規格その他の品質管理基準に適合しない医薬品は不合格としなければならない」と定める。
21 CFR 211.192 Production record review 品質管理部門による製造記録の照査を義務づけ、説明のつかない矛盾または規格不適合は「バッチが既に流通しているか否かにかかわらず、徹底的に調査されなければならない」とする。調査は同一製品の他バッチ・関連製品にも及ぶ。
21 CFR 211.194 Laboratory records 試験の生データ、計算、判定を含む完全な記録の保存を求める。
すべての医薬品の製造記録および管理記録(包装・表示に係るものを含む)は、バッチの出荷または流通に先立ち、確立され承認された手順への適合を判定するため、品質管理部門により照査され承認されなければならない。説明のつかない矛盾(……)、またはバッチもしくはその構成成分が規格に適合しないことは、当該バッチが既に流通しているか否かにかかわらず、徹底的に調査されなければならない。調査は、同一医薬品の他のバッチおよび当該不適合または矛盾に関連する可能性のある他の医薬品にも及ぶものとする。調査の記録を作成し、結論および事後措置を含めなければならない。
――21 CFR 211.192(eCFR 現行条文の訳)

条番号の混同に注意

  • 211.192 は「製造記録の照査(Production record review)」であり、試験室記録の条文ではない。OOS 調査義務の根拠として引かれるのはこの条である。
  • 試験室記録そのものは 211.194(Laboratory records)が定める。
  • OOS 調査を語るときに「211.194 が調査を義務づける」と述べるのは誤りである。

4. 資格停止(debarment)とは何か ―― 本稿の核心

本事案が日本で紹介されるとき、最も誤解されるのがこの資格停止(debarment)である。順を追って整理する。

4-1. 刑事罰ではなく、FDA による行政処分である

資格停止は、裁判所が言い渡す刑罰ではない。FDA が行政庁として独自に発する処分である。根拠は連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C Act)第306条、合衆国法典では 21 U.S.C. §335a(表題は “Debarment, temporary denial of approval, and suspension”)である。

同条は次の二本立てになっている。

区分 条項 性格
強制的資格停止 §306(a)/21 U.S.C. §335a(a)
“Mandatory debarment; certain drug applications”
一定の重罪有罪判決があれば、FDA は資格停止しなければならない
裁量的資格停止 §306(b)/21 U.S.C. §335a(b)
“Permissive debarment; certain drug applications; food imports”
一定の要件を満たす場合に、FDA は資格停止することができる

Able社の関係者に対する2012年の各命令は、いずれも FD&C Act 第306条(b)(2)(B)(i)(II)(21 U.S.C. §335a(b)(2)(B)(i)(II))を根拠として発せられている。すなわち裁量的資格停止である。刑事手続とは別個の判断として、FDA が自ら処分の要否と期間を決めているという点を押さえておきたい。

4-2. 何ができなくなるのか

資格停止の効果は、しばしば「FDA への申請ができなくなる」と説明されるが、それは正確ではない。命令が定める禁止範囲は、はるかに広い。

(対象者は)承認済みまたは申請中の医薬品申請を有する者に対し、いかなる立場においても役務を提供することを、〔期間〕にわたり禁止される。
――連邦官報に公示された各資格停止命令(趣旨)

「いかなる立場においても」が意味すること

  • 禁止されるのは「申請書に署名すること」ではなく、役務の提供そのものである。
  • したがって、正社員としての雇用に限らず、契約社員・派遣・業務委託・顧問・コンサルタント・監査人など、あらゆる関与形態が対象になる。
  • 職務内容も限定されない。品質・薬事に限らず、営業・総務・IT であっても、承認済みまたは申請中の医薬品申請を有する企業に役務を提供すれば抵触し得る。
  • 禁止の名宛人は個人だけではない。資格停止中の者を用いた企業側も民事制裁金の対象になり得る。採用時の確認義務が事実上生じる。
  • 実務上、これは医薬品業界からの職業上の追放に等しい。刑期を終えても、資格停止期間が残っていれば業界に戻れない。

誰が資格停止の対象かは、FDA が FDA Debarment List (Drug Product Applications) として公表している。このリストは 21 U.S.C. §335a(e) に基づき、連邦官報に公示された命令から編纂される。実名で、恒久的に公開されるという点も、この処分の重さを構成している。

4-3. Able社事案で確認できる資格停止命令

連邦官報を検索した限り、Able社に関係する資格停止命令は6件確認できる。当社の他記事では2012年の4件を紹介しているが、本編としてはその後の2件も含めて示しておきたい。処分は、事件の発覚から7年後、13年後、16年後にも発出されている。

公示日 連邦官報 Able社での当時の職位 期間
2012年4月5日 77 FR 20638 品質管理部門の化学者(のちに同部門アシスタントマネージャー) 5年
2012年4月5日 77 FR 20639 品質保証/品質管理・薬事担当バイスプレジデント 5年
2012年4月5日 77 FR 20641 品質管理部門の化学者(のちにグループリーダー、スーパーバイザー) 5年
2012年4月6日 77 FR 20823 品質管理部門のラボラトリーマネージャー 5年
2018年9月27日 83 FR 48829 分析管理スーパーバイザー(のちに品質管理マネージャー) 5年
2021年8月2日 86 FR 41483 研究開発マネージャー(のちにテクニカルサービス担当アソシエイトディレクター) 1年

いずれの対象者も、合衆国に対する犯罪の共謀(18 U.S.C. §371)により有罪判決を受けている。2018年および2021年の命令の対象者については、罪名は「不正表示医薬品および変質医薬品の流通の共謀」であり、FD&C Act 第301条(a) および第303条(a)(2) 違反が関係するとされている。

2018年と2021年の2件は、対象者が聴聞(hearing)を請求したが FDA がこれを否認した類型である。争えば長期化するが、争ったからといって処分が軽くなるとは限らない。2018年の命令に至っては、聴聞請求は2012年1月付であり、結論が出るまでに6年以上を要している。処分が確定するまでの間も、当人は「係争中」という不安定な立場に置かれ続けたことになる。

日本企業にとっても他人事ではない

  • FD&C Act 第306条は米国内の居住者や米国企業の従業員に限定されていない。米国向け製品(ANDA/NDA を有する製品)に関与していれば、日本の企業・日本の担当者も適用対象になり得る。
  • 米国向けに輸出している、あるいは米国企業から製造委託を受けている日本の製造所は、その時点で「承認済みまたは申請中の医薬品申請を有する者」に役務を提供している
  • 採用・業務委託にあたり、FDA Debarment List の照会を手順に組み込んでいる企業は、日本ではまだ多くない。米国向け事業を持つなら、検討に値する。

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5. ALCOA と ALCOA+ ―― 用語を混同しない

データインテグリティを論じる際、日本では「ALCOA+(アルコアプラス)」がほぼ標準語として使われている。しかし、FDA のガイダンスに「+」は登場しない。ここは正確に区別しておきたい。

FDA は2018年12月に Data Integrity and Compliance With Drug CGMP: Questions and Answers を最終ガイダンスとして発出した。同ガイダンスは、完全で一貫性があり正確なデータは、帰属可能(attributable)、判読可能(legible)、同時的に記録された(contemporaneously recorded)、原本または真正な写し(original or a true copy)、かつ正確(accurate)でなければならないとし、この頭字語を ALCOA として示している。

用語 出どころ 構成要素
ALCOA FDA「Data Integrity and Compliance With Drug CGMP: Questions and Answers」(2018年12月・最終版) Attributable / Legible / Contemporaneous / Original / Accurate
ALCOA+ の「+」 英国 MHRA、PIC/S、WHO 等の文書に由来する拡張 上記に Complete / Consistent / Enduring / Available を加える

誤解しやすいポイント

  • 「FDA が ALCOA+ を要求している」という説明は不正確である。FDA ガイダンスの用語は ALCOA までである。
  • ただし FDA が「+」の4要素を求めていないという意味ではない。完全性・一貫性は cGMP 条文(211.192 の「説明のつかない矛盾」の調査義務など)から当然に導かれる。頭字語の出どころと、要求事項の実質を混同しないということである。
  • PIC/S の文書は当社サイトで対訳を公開している(記事末尾の関連記事を参照)。

6. 「上司の指示だった」は免責にならない

Able社事案から日本の実務担当者が受け取るべき教訓のうち、最も重いのはこの点である。

資格停止命令の対象者には、バイスプレジデントのような上位者だけでなく、品質管理部門の化学者、グループリーダー、スーパーバイザー、ラボラトリーマネージャーといった現場層が含まれている。指示した側も、指示された側も、等しく処分を受けている。

命令の事実摘示が「共謀(conspiracy)」の構成で書かれていることの意味は大きい。共謀とは、合意して関与した者は全員が責任を負うという構成である。「自分は言われたとおりにデータを差し替えただけだ」という弁解は、この構成のもとでは成り立たない。

現場の担当者が知っておくべきこと

  • データを改ざんすれば、指示した上司と並んで自分も処分対象になる。
  • 処分は雇用主に対してではなく、個人に対して下される。会社が消滅しても処分は残る。
  • 資格停止は実名で公表され、期間が満了しても「期限切れ資格停止リスト(Expired Debarment List)」として記録は残る。
  • Able社の事案では、会社の消滅から16年後にも新たな処分が発出されている。時間が解決してはくれない。

7. 日本のGMP省令との関係

本事案は米国の事案であるが、日本の GMP 省令(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)にも同種の要求は存在する。2021年(令和3年)4月28日に公布され、同年8月1日に施行された改正 GMP 省令では、医薬品品質システム、品質リスクマネジメント、データインテグリティ(データの信頼性確保)の考え方が明確に取り込まれた。

改正時の施行通知(令和3年4月28日 薬生監麻発0428第2号「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の一部改正について」)では、記録の同一性・完全性を確保するための具体的な措置――記録への日付・ページ番号の付与、変更内容が識別できる形での修正、権限のない者によるアクセスの制限など――が示されている。Able社で欠けていたのは、まさにこれらであった。

改正 GMP 省令の全体像については、当社記事「「GMP施行通知」から改正GMP省令へ ― 2026年版アップデート」で解説している。

8. 実務として何をすべきか

  1. 監査証跡を「見る」手順を定める監査証跡機能があることと、それをレビューしていることは別である。誰が・どの頻度で・何を見て・何を記録するのかを手順書に落とし込む。Able社の品質部門に欠けていたのは機能ではなく運用であった。
  2. バッチ出荷判定を電子データで行う紙の印刷物だけで判定してはならない。分析機器が生成した電子的な生データこそが一次記録であり、紙は二次的な写しである。判定の根拠を電子記録に置き換える。
  3. OOSは「再試験」ではなく「調査」から始める21 CFR 211.192 が求めるのは徹底した調査であり、ラボエラーが特定できない限り当初の結果は無効化できない。再試験の実施条件・回数・判定基準をあらかじめ手順書で規定しておく。
  4. 試験室担当者への教育訓練を記録するFDA が Able社について指摘した項目の一つは、分析化学者への教育訓練の不足であった。何を教え、理解を確認し、記録したかが問われる。
  5. 米国向け事業があるなら Debarment List を確認する採用・業務委託の手順に、FDA Debarment List の照会を組み込む。資格停止中の者を用いた企業側にも制裁が及び得る。
  6. 「言えない」空気をなくす不合格結果を報告した担当者が責められる組織では、testing into compliance は必ず再発する。不都合な結果を報告した者を評価する仕組みが要る。

まとめ ―― この事案が示す3つのこと

  1. データインテグリティの崩壊は、企業の存続に直結する2005年5月2日の査察開始から、5月19日の全製造停止、7月18日の破産申立てまで、わずか2か月半である。同年12月には資産が売却され、FDA は2005年8月から2006年1月にかけて同社の ANDA 計53件の承認を取り下げた。是正の機会は事実上なかった。
  2. 責任は組織にとどまらず、個人に及ぶ連邦官報で確認できるだけで6名が資格停止処分を受け、いずれも共謀罪(18 U.S.C. §371)の有罪判決を受けている。FD&C Act 第306条(21 U.S.C. §335a)に基づく資格停止は刑事罰とは別の行政処分であり、対象者は承認済みまたは申請中の医薬品申請を有する者に対して、いかなる立場でも役務を提供できなくなる。
  3. 「上司の指示だった」は免責にならない処分対象には、バイスプレジデントから現場の化学者までが含まれている。指示した側も、指示に従った側も、等しく責任を問われた。日本の企業であっても、米国向け製品に関与していれば無関係ではない。

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本事案を、データインテグリティの一般論の中の事例として要約している記事は次のとおりである。

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参考・出典(一次情報源)

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