承認者はレビューをしてはいけない

~レビューと承認、似て非なる二つの責任~

文書ワークフローでよく見かける誤解がある。

「承認者は中身をきっちり読んで内容をレビューするものだ」ーーこの前提に立つと、承認のプロセスはやがて崩壊する。

正しい役割分担はこうだ。レビュー(review)は、力量のあるレビュアーが文書の内容を逐一確認し、コメントを付け、誤りを指摘する作業である。

一方、承認(approval)はレビュアーがレビューを完遂し、付けられた全てのコメントが解決されたことを見届けて、「これなら問題ない」と判断する行為である。

承認者は中身を逐一読み返さない。読み返すべきはレビュアーであり、承認者が確認するのはレビューが正しく行われた事実そのものである。

なぜこの区別が重要か。承認者にレビュー作業まで負わせれば、承認者は数百ページに及ぶ文書を毎回読破することになる。それは事実上不可能だ。結果、起きるのが俗にいう「ラバースタンプ」である。

表紙だけ持ってこさせ、機械的に判子を押すーーこれではレビューも承認も機能していない。

レビューと承認を分けて運用するための実務的なコツがある。

レビュー時に付けたコメントと、Wordファイルの変更履歴を、決して消してはならない。消してしまうと、承認者がレビューの完遂を確認する手段が失われる。承認依頼を受けた際「レビューコメントと変更履歴を見せてください」と要求できる状態を保つ。ないなら、承認できない。これが承認者としての健全な防衛線である。

規制要件では文書管理を要求し、文書は発行前に承認を受けることを定める。承認とは「自分が責任を取る」という意思表示であり、成果主義という原則に照らせば、結果に対して責任を負える状態でなければ承認してはならない。

レビュー記録という根拠なしに承認した文書は、後で何かあった時、承認者個人の判断責任が問われる。

加えて、レビュー作業そのものが部下の育成機能を持つ。

力量のあるレビュアーが「ここを直しなさい、ここを改善しなさい」とコメントを付けることで、起草者は次の文書をより良い形で書けるようになる。レビューは品質確保の機能であると同時に、組織の力量底上げの装置でもある。承認者がレビュー機能まで奪ってしまえば、この育成サイクルも止まる。

承認者と起草者の間に、必ずレビュアーを置くーーこれが文書管理の鉄則である。

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