品質マニュアルは、経営者が作るものである
~「QMSの最上位文書」を従業員に丸投げしていないか~
QMSの構造を簡単に説明するならば、四つの階層に分かれる。
最上位に品質マニュアル、その下に規定、さらに下に手順、最下層に様式・要領書ーーこれがピラミッドの基本形である。
ここで決定的な確認事項がある。
最上位の品質マニュアルは、誰が作るのか。答えは経営者である。
従業員ではない。
にもかかわらず、品質マニュアルを実務担当者に丸投げし、経営者は判子だけ押す、という運用が散見される。
これはQMSの根本を誤った姿である。
ISO 13485 4.2.2 は、品質マニュアルに含めるべき事項として、適用範囲、除外、QMSのために確立した文書化した手順、QMSプロセスの相互関係を挙げる。
つまり、組織がどの製品をどう扱い、何を内製化し、何を外注化し、どのプロセスを除外するかを宣言する文書である。
これは経営判断そのものであり、現場の実務担当者が単独で決められる内容ではない。
なぜ企業ごとに品質マニュアルが異なるのか。
同じ ISO 13485 を参照しているのに、内容が違うのはなぜか。
製造販売している製品が違い、リスクが違い、業態が違うからである。
設計まで自社で行う組織と、輸入と販売だけの組織では、まったく違う品質マニュアルになる。
本国で設計・製造を行い、日本では輸入販売・サービスのみという業態は、この点を正しく反映しなければならない。
実務上は従業員が起草することがほとんどであろう。
だが発行責任、説明責任は経営者にある。
これが経営者のコミットメント(5.1)と直結する。
コミットメントとは単なる約束ではなく、約束が守れなかった時に責任を取る覚悟である。
経営者が「私は品質マニュアルの内容を熟知し、その遵守に責任を負う」と言える状態でなければ、QMSは形骸化する。
明日からの運用で、経営者にぜひ問うていただきたい。
「品質マニュアルの最新改訂理由を、自分の言葉で説明できるか」と。
説明できなければ、それは経営者ではなく、誰かが作った文書を読み上げている代弁者にすぎない。
品質マニュアルは経営者が作る、経営者が背負う、経営者が改訂するーーこの原則を組織の前提にすべきである。