失敗を報告した人ほど、なぜ褒めなければならないのか
~「報告した瞬間に叱られる」組織の致命傷~
人は必ず間違える。間違わない人はいない。
だからこそQuality Cultureの最大の柱は、失敗を常に報告し合える文化である。これが医療機器業界における人的安全弁の核である。
ところが多くの組織は、失敗を報告した瞬間に叱責する。
叱られるのが怖いから、人は小さな嘘をつく。その小さな嘘を隠すために、もう少し大きな嘘をつく。それを隠すために、さらに大きな嘘を重ねる。
発覚したときには、もはや誰の手にも負えない巨大な問題に膨れ上がっているーーこれが世の常である。
正しい組織はその逆を行く。失敗を報告した人ほど、褒める。会社に対して改善の機会を与えてくれたからである。改善の提案をしたのと同じことだからである。
ISO 13485 5.5.3 は内部コミュニケーション、いわゆる情報伝達を要求する。
風通しの良い文化を構築せよ、というのが規制当局の要求事項だ。
経営者から従業員へ、従業員から経営者へ、両方向に滞りなく流れることが要件である。
失敗報告が叱責で終わる組織では、この双方向は成立しない。
リーダーの行動原則は二つに集約される。
一つ、報告者を不利益に扱わないことを明文化し、運用で守ること。
二つ、問題発生時の追及対象を「人」ではなく「QMSの欠陥」に置くこと。
「あなたが間違えた」ではなく「我々の仕組みでは、その間違いが起こり得る。その仕組みを直す」ーーこの語り方を組織に染み込ませる。
なぜ重要か。ISO 13485 8.5.2 が定める是正処置の根本は、人ではなく仕組みを直すことだからである。
報告された失敗は、実は QMS が示す改善の貴重なシグナルだ。
それを叱責で握り潰した組織は、シグナルを失い、是正処置のインプットを失う。
代わりに、隠蔽された失敗がいつか巨大な事故として顕在化する。
明日からのマネジメントレビューでは、ぜひ確認してほしい。「今期、勇気を出して失敗を報告してくれた従業員に、組織として感謝を示しただろうか」と。示していなければ、Quality Cultureはまだスタートラインに立てていない。