データ分析と称して、グラフを持ってくる人へ
~Why と So What がない資料は「分析」ではない~
監査の場で「データ分析の結果を見せてください」と頼むと、ほとんどの組織が綺麗なグラフを持ってくる。
棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフーー色とりどりに整っている。
だが、それを見ても何も分からない。それは分析ではなく、可視化に過ぎないからである。
データを可視化する作業は、英語で言えば statistics、すなわち統計の段階である。
グラフを描いて並べた時点では、データはまだ「見えるようになった」だけだ。
分析とは、その先に二つの問いを置く作業を指す。
Why と So What である。
Why ーーなぜそのグラフがそうなったか。なぜ顧客苦情はこの月だけ増えているのか。なぜ修理件数が劣化傾向にあるのか。グラフから読み取れる傾向の背後にある要因を特定する。ここで初めてデータは情報になる。
So What ーーだから何をするのか。問題の傾向が判明したならば、組織として何を変えるのか。仕組みを変えるのか、教育を強化するのか、リソースを追加投入するのか。次のアクションを引き出してこそ、分析は完結する。
ISO 13485 8.4 はデータの分析を要求する。
インプットとして、フィードバック、製品要求事項への適合性、プロセスと製品の特性および傾向、供給者、監査、サービスレポート等を例示する。
これらをグラフに落として終わるのではなく、Why と So What を導き、それを 8.5(改善)のインプットへ橋渡しする。これがデータ分析の本来のフローである。
マネジメントレビューに提出する資料も同じ原理が貫かれる。経営者は時間がない。膨大なデータの束を渡されても理解できるはずがない。報告は三行にまとめる、経営者が興味を示したらA4一枚を出す、それでも足りなければA4三枚を出すーーこの順序で結論から差し出す。三行にまとめられないということは、自分自身が分析できていない証である。
「データ分析やりました、グラフはこちらです」と差し出す前に、二行を必ず添えてほしい。「Why はこうである、So What はこうである」ーーこの二行があって初めて、それは分析と呼ばれる。