AI同士は「ピーギャー」で会話する?
~Gibberlinkという、現実に登場したAI-AI通信プロトコル~
最近のカスタマーサービスでは、チャットボットがAI化されている。一方で、問い合わせる側もAIだったというケースが現れ始めた。AIがAIに問い合わせ、AIがAIに答えるーーそんな状況である。
興味深いのは、お互いに「相手はAIだ」と気づくと、徐々に自然言語を捨てていく点だ。途中から「ピーギャー」という、人類には理解できない、音声とも言えない通信になるのである。
これは比喩ではない。実際に「Gibberlink」と呼ばれる通信プロトコルが、エンジニアのBoris StarkovとAnton Pidkuikoによって発表されている。AI同士が相手をAIと識別すると、自然言語を捨て、音声波形に変調された構造化データで通信を始める。古いダイヤルアップモデムのような音だという。
一見すると効率化の話だが、よく考えると恐ろしい。「人間が読めない記録」が業務の中心になったとき、後から何が起きたかを再現できるだろうか。
AI同士が勝手に学習し、勝手に決着をつける時代に、すでに足を踏み入れている。
私が懸念するのは、GxP環境で人間の言語を介在しない自動化が進んだとき、トレーサビリティと監査証跡をどう確保するかという論点である。査察対応に耐えうる「人間が読める記録」を、必ず残す設計が必要である。
具体的には、AI-AI間の通信であっても、入力・出力・判断根拠を「人間可読な形式」でログ化し、Part 11/Annex 11が要求する監査証跡要件を満たすこと。これを「人間翻訳ログ」として変更管理SOPに位置付けるのが、これからのCSV設計の肝である。
読者へのアクション:システム間連携でAIを使う際は、API応答ログだけでなく「自然言語化された判断理由ログ」を併せて残す設計を、要件定義段階から要求していただきたい。