「経営方針」と「品質方針」が乖離した会社の末路
~ISO 9001:2000 が経営者に課した、最大の宿題~
多くの会社で、経営方針と品質方針は別の文書として存在している。
経営方針には「利益追求」「売上拡大」「競合他社に勝ち抜く」といった経営の言葉が並ぶ。
一方、品質方針には「お客様目線」「社会への貢献」「品質第一」といった耳障りの良い言葉が並ぶ。
両者を並べてみると、まったく別の世界の話に見える。これが問題なのである。
ISO 9001 が 2000年版から、ISO 13485 を含めた品質マネジメント規格が経営者に求めるようになった核心要求は、これであるーー経営方針・経営目標と、品質方針・品質目標を整合させること。
乖離を放置することは規制違反であり、QMSが回らない最大の構造原因でもある。
それまで経営者の責任は経営責任のみであった。売上を上げ、利益を出し、株価を上げるーーこれが20世紀の経営者の世界だった。品質責任は現場任せ。
だが2000年を境に、経営者には品質責任も明確に課せられるようになった。
監査での確認ポイントは具体的だ。
品質方針に「顧客重視」「品質改善」と書いてあるのに、品質目標には「社内のエラーレートを下げる」のような内向きの数値しか並んでいないーーこうした事例が頻出する。
これは整合していない。顧客重視を方針に置いたなら、目標は顧客満足度の改善幅、苦情率の削減幅といった顧客側に向いた数値で示さねばならない。
整合させない組織の末路は明確である。
品質マネジメントシステム(QMS)は絵に描いた餅となり、毎年マネジメントレビューで「目標未達」が並び、経営側は品質側を「コストセンター」と見て予算を絞り、品質側は経営側を「品質を理解しない人たち」と諦め、双方の不信感が固定化する。
やがて、不適合・苦情・回収という形で経営に跳ね返ってきた時、もはや手の打ちようがない。
経営方針・経営目標を立てる場と、品質方針・品質目標を立てる場を、別々の会議体で開いていないかーーまずここを点検してほしい。
同じ場で、同じ経営者の前で、両者を並べて議論することが整合の第一歩である。
Quality Culture を構築すれば、利益も売上も給料も顧客満足度も上がるべき構造になるーーISO 13485 が経営者に託しているのは、この大きな前提そのものである。