デザインレビューとデザインベリフィケーションの違い

医療機器の設計開発において、「デザインレビュー」と「デザインベリフィケーション(設計検証)」はいずれも品質を担保するための重要な活動である。しかし、両者は名称が似ているためしばしば混同されることがある。実際には、目的・実施方法・参加者の構成において明確な違いがあり、それぞれが異なる役割を果たしている。

本稿では、この二つの活動の違いをわかりやすく整理し、実務上どのように使い分けるべきかを解説する。

デザインレビューとは何か

デザインレビュー(Design Review)とは、設計開発の各フェーズにおいて、設計の適切性を体系的に審査する活動である。ISO 13485:2016 の第7.3.5項では、「設計・開発の適切な段階において、体系的なレビューを計画し、実施しなければならない」と規定されている。

最大の特徴は、多部門の代表者と専門家が一堂に会して実施する点にある。メカニカル設計、電気・電子(エレキ)設計、ソフトウェア設計、品質保証、製造、規制対応など、各専門領域の担当者が参加し、設計全体を多角的な視点から審査する。参加人数は通常 3〜10名程度であり、チームとして実施されるものである。

例えるならば、「横串を刺した総合審査」である。一つの設計に対して、異なる専門知識を持つ複数の目が同時に向けられることで、単独の専門家では見落としがちなリスクや矛盾を発見することができる。

デザインレビューで確認する主な観点は以下のとおりである。

設計インプット(要求事項)に対する設計の適合性
各部門間のインターフェースや整合性
リスクマネジメントの妥当性(ISO 14971 との整合)
規制要件(QMSRや ISO 13485 など)への適合状況
製造可能性・保守性・使用性

デザインベリフィケーションとは何か

デザインベリフィケーション(Design Verification:設計検証)とは、設計アウトプット(設計で得られた成果物)が、設計インプット(要求事項)を満たしていることを確認する活動である。ISO 13485:2016 の第7.3.6項には、「設計・開発の検証は、設計・開発のアウトプットが設計・開発のインプットの要求事項を満たしていることを確実にするために実施しなければならない」と定められている。

デザインレビューとの最大の違いは、1名の専門家からでも実施可能である点にある。ベリフィケーションは個別の設計文書や仕様に対して実施されるものであり、必ずしも多部門チームによるレビュー会を必要としない。ただし実務上は、試験実施者と承認者を分けるなど、ベリフィケーション記録に複数の担当者が関与するケースが多いことに留意が必要である。

具体的な検証方法としては、以下のようなものがある。

試験・テスト:実際に製品や部品を動作させ、規定の性能を満たすか確認する
検査:図面・寸法・外観などを基準値と照合する
分析:計算・シミュレーションによって要求事項への適合を確認する
比較:類似した実績のある設計との比較によって妥当性を確認する

例えば、「耐電圧は1500Vrms以上であること」という設計インプット(要求事項)に対して、実際に耐電圧試験を実施し、その結果が基準値を上回っていることを確認する——これがデザインベリフィケーションの典型的な姿である。

二つの活動の比較

デザインレビュー / デザインベリフィケーション

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目的  設計の適切性を体系的に審査する / 設計アウトプットが設計インプットを満たしているか確認する

参加者  多部門の代表者・専門家(3〜10名程度) / 専門家1名以上

性格  横串の総合審査 / 個別文書・仕様の検証

実施タイミング  設計の各フェーズの節目 / 設計アウトプットが確定した段階

主な手段 会議・討議・レビュー会 / 試験・検査・分析・比較

規格の根拠 ISO 13485:2016 第7.3.5項 / ISO 13485:2016 第7.3.6項

混同しやすいポイントと注意事項

両者が混同される背景には、「どちらも設計の問題を見つける活動である」という共通点がある。しかし、その本質的な目的と構造は異なる。

まず、デザインレビューはプロセスの評価である。設計が適切な方向に進んでいるかどうかを、多様な視点からチームで判断する活動である。一方、デザインベリフィケーションはアウトプットの確認である。個々の要求事項に対して、設計の成果物が確かにその要求を満たしているかどうかを客観的に確認する活動である。

また、「デザインレビューで全員が承認したから、ベリフィケーションは不要である」という誤解も見られる。しかし、両者は代替関係にはなく、相互補完的に実施されるべきものである。デザインレビューはプロセス全体を俯瞰し、ベリフィケーションは個別の要求事項との整合を客観的に証明する。この二つが揃って初めて、堅牢な設計管理が成立する。

さらに実務上の注意点として、ISO 13485:2016 第7.3.5項はデザインレビューの参加者について「当該段階に関連する機能の代表者、ならびに他の専門家」の参加を要求している。したがって、デザインレビューを特定部門のみで完結させることは規格要件を満たさない可能性がある。

なお、2026年2月2日に施行されたFDA QMSR(品質マネジメントシステム規制)は、旧QSR(21 CFR 820.30(e))が明確に義務付けていた「設計段階に直接責任を持たない独立したレビュアーを1名以上含めること」という要件を削除し、ISO 13485:2016の参照に移行している。ただし、FDAは「他の専門家」の参加規定が独立的な視点の貢献を含みうると解釈しており、独立レビュアーを参加させることは業界の良慣行として引き続き推奨されている。

まとめ

デザインレビューは、多部門の専門家が集まって設計全体を「体系的に審査する」活動であり、横串を刺した総合的な評価の場である。一方、デザインベリフィケーションは、個々の設計アウトプットが設計インプットの要求事項を満たしているかを「客観的に確認する」活動であり、専門家1名からでも実施できる。

医療機器の開発において、この二つの活動を混同せず、それぞれの目的と役割を正しく理解した上で計画・実施することが、製品の品質と規制適合性を確保するための基本となる。

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