「教育訓練を徹底します」と言う経営者は、必ず再発させる

~根本的原因と、それらしく見える原因の混同~

不祥事の謝罪会見で、経営者が決まり文句のように口にする一言がある。「このような事故が二度と起きないよう、社員教育を徹底してまいります」ーー。だが、こう述べる企業ほど、同じ事故をまた繰り返す。

理由は明快である。

教育訓練不足は「原因」ではあっても「根本的原因」ではないからだ。

ISO 13485 8.5.2 は是正処置を「再発防止のため、不適合の原因を除去する処置」と定義する。鍵は「除去」にある。除去されるべきは根本的原因であって、表層の原因ではない。

教育訓練を是正処置に据えてしまう誘惑は強い。

原因を個人の理解度や規律に押し付けるのは、何より楽だからだ。

ミスをした担当者を厳しく叱責し、再教育を施せば、その人は二度と間違わないかもしれない。

だが組織は人が変わる。新しい担当者が来れば、同じ間違いがまた起きる。組織として再発しているのに、個人を相手に決着をつけているから、いつまでも止まらない。

正しい問いはこうだ。「なぜ教育が不足している人にその仕事を任せたのか」「その人がエラーを起こした時に、なぜ社内の仕組みがそのエラーを検知できなかったのか」。

問いの矛先がQMSという仕組みに向いた瞬間、初めて根本的原因にたどり着く。

是正処置は必ずQMSの変更へと行き着くべきものだ。

仕組みの変更を伴わない是正処置は、是正処置の名に値しない。

ちなみに、設計変更も「是正」ではなく「修正」である。

図面を変更しただけでは、なぜそのような設計をしてしまったかという根本原因が残ったままだ。次の機種で、また別の場所で、同じ性質の設計ミスが顔を出す。同じく、洗濯機のホースが破けた時にテープを巻くのは修正である。なぜ破けるのかを掘り下げ、設置角度・材質・温水使用などの根本原因を潰してこそ、是正処置と呼べる。

謝罪会見で正しく述べるなら、こうなる。「再発防止のため、当該事象が発生し得ない仕組みへとQMSを見直し、その有効性を確認するまで報告いたします」。重い言葉である。だがCAPAの本質はこの重さにある。教育訓練を「徹底」しても、人が入れ替われば組織は同じ間違いを繰り返す。仕組みを直してこそ、組織は学ぶのである。

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