医療機器の設計・開発・申請における規制要件入門 ~品質、有効性及び安全性の確保~ 2講 医療機器の種類

「これは医療機器なのか、それとも健康機器なのか」——医療機器開発の最初の分岐点は、この該当性の判断である。判断を誤れば、設計開発をやり直すか、無承認無許可品を流通させてしまうかのいずれかになる。本稿は「医療機器の設計・開発・申請における規制要件入門」の第2講として、薬機法の対象となる五つの区分、医療機器と計測機器・健康介護機器の境界、そして2026年8月時点で最も動きの大きいプログラム医療機器(SaMD)とデジタルセラピューティクス(DTx)の位置づけを整理する。制度名の誤用が実務上の混乱を招きやすい領域でもあるため、正式な呼称にも注意を払いたい。

薬機法の対象となる五つの区分

薬機法が規制する製品は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の五つである。まずこの五区分のどこに自社製品が入るのかを確定させることが出発点となる。

薬機法の対象となる五つの区分
区分考え方
医薬品日本薬局方に収められているもの、疾病の診断・治療・予防に用いられるもの、人の身体の構造・機能に影響を及ぼすもの処方薬、一般用医薬品
医薬部外品人体に対する作用が緩和なもの栄養ドリンク、染毛剤、デオドラント剤
化粧品身体を清潔にする、美化する、皮膚や毛髪を健やかに保つもの石鹸、歯磨剤、スキンケア用品、香水
医療機器人または動物の疾病の診断・治療・予防に使用されること、または身体の構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされているものコンタクトレンズ、内視鏡、ペースメーカー、単体プログラム
再生医療等製品細胞加工製品、遺伝子治療用製品など細胞シート、遺伝子導入細胞を用いた製品

再生医療等製品は、2014年(平成26年)11月25日に施行された薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で新たに設けられた区分である。同じ改正により、単体プログラム(ソフトウェア単独)も医療機器の対象に加えられた。この改正の全体像は1講 医療機器と規制要件を参照されたい。

医療機器・計測機器・健康介護機器の境界

外見や内部構造が似ていても、規制上の扱いはまったく異なる。日本において医療機器に該当するものの例としては、歯科材料、コンタクトレンズ、眼鏡、補聴器、体外診断用機器、血圧計、注射器、体温計、家庭用マッサージ器などが挙げられる。

体外診断用機器に用いる体外診断用医薬品は、名称に「医薬品」と付くものの、薬機法上は医薬品として扱われ、医療機器と併せて同じ枠組みで規制される点に注意が必要である(QMS省令の正式名称も「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」である)。なお、電子血圧計・電子体温計は、専門的には医用電気機器(ME機器)と呼ばれる範疇に入る。

紛らわしい三つのカテゴリ
カテゴリ規制上の扱い
医療機器血圧計、体温計、補聴器、コンタクトレンズ、内視鏡、家庭用マッサージ器薬機法の対象。クラス分類に応じて届出・認証・承認が必要
計測機器類体重計、運動量計、気体・液体分析計原則として薬機法の対象外。ただし使用目的の表示により医療機器になり得る
健康介護機器類車いす、杖、電動ベッド、電動歯ブラシ、コルセット、空気清浄機原則として薬機法の対象外。福祉用具等の別の枠組みで扱われる

該当性判断は設計開発の「前」に行う

見た目や構造が同じでも医療機器に該当しないことがあり、逆に、表示する使用目的次第で医療機器に該当することもある。国によっても判断が異なるため、上市を予定する国ごとに個別の確認が必要である。国内では、設計開発に着手する前にPMDAへ該当性の相談を行うことを強く推奨する。プログラムについては、令和5年3月31日 薬生機審発0331第1号・薬生監麻発0331第4号(プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン)が判断の拠り所となる。

医療機器の定義と、その広がり

医療機器とは、「人または動物の疾病の診断、治療もしくは予防に使用されること、または人もしくは動物の身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの」である。コンタクトレンズ、マッサージ器、メス、体温計、心臓ペースメーカー、放射線治療装置、CT、X線装置、ピンセットに至るまで、対象は極めて広い。

対象がこれほど多岐にわたるため、すべての医療機器を個別の要求事項で規制することは現実的でない。そこでQMS省令をはじめとする規制は、どの医療機器にも共通する一般的な要求事項のみを定めている。個々の製品のリスクと特性に応じて品質をマネジメントし、それを文書化し、審査・調査で説明する責任は各社が負う。「省令に書いていないから不要」という論法が通用しないのは、この構造による。

医療行為の四段階と医療機器

医療行為は、予防(検査)、診断、治療、リハビリテーションの四段階に整理できる。段階ごとに求められる性能も、想定されるリスクの性質も異なる。

医療行為の段階と医療機器の例
段階医療機器の例リスクの中心
予防(検査)心電計、血圧計、血液検査装置測定値の正確さ、見落とし(偽陰性)
診断内視鏡、X線装置、超音波診断装置、X線CT、MRI、PET画像・情報の信頼性、被ばく、誤診の誘発
治療レーザーメス、ペースメーカー、人工心臓、人工心肺装置、人工透析装置、人工骨直接的な侵襲、故障時の生命への影響
リハビリテーション牽引装置、マイクロ波治療器、マッサージ器過剰な負荷、熱傷、長期使用による影響

日本の産業構造としては、予防・診断領域に強みがある一方、治療機器では輸入超過の状態が続いてきたと指摘されることが多い。治療機器は患者および医療従事者に対する健康被害のリスクが格段に高く、参入にあたっての安全設計・リスクマネジメントの負荷が大きいことが背景にあると考えられる。裏を返せば、リスクマネジメントを設計プロセスに組み込める企業にとっては参入余地が残されている領域でもある。

医用電気機器(ME機器)とソフトウェア

医用電気機器(ME機器)とは、装着部を持つか、患者との間でエネルギーを授受し、または患者のエネルギーを検出する機能を有し、患者の診断・治療・監視、あるいは疾病・負傷・障害の補助もしくは緩和を意図した機器を指す。基礎安全および基本性能に関する要求はJIS T 0601-1:2023が現行版であり、社内資料が2017年版のまま止まっていないか確認されたい。

ME機器は、メカ(機構)、エレキ(電子回路)、ソフトウェアという少なくとも三つの領域から構成される。各領域の設計担当者が個別に設計を進めたうえで、デザインレビューにおいて相互の組合せを串刺しで検証し、統合された製品として有効性と安全性が確保されていることを示さなければならない。領域ごとの部分最適は、統合時の不整合として現れる。

ソフトウェアについては、医療機器ソフトウェアのライフサイクルプロセスを定めるIEC 62304への準拠が求められる。米国FDAは、ソフトウェアバリデーションの考え方を示した「General Principles of Software Validation(GPSV)」を発行しているが、そのSection 6は、2025年9月24日に連邦官報で告示されたCSA(Computer Software Assurance)最終ガイダンスにより置き換えられている。CSAが置き換えるのはGPSVのSection 6のみであり、21 CFR Part 11を置き換えるものではない点に注意が必要である。

メカの要求、エレキの要求、ソフトウェアの要求は、それぞれ準拠すべき規格が異なる。設計開発の初期段階で「この製品に適用される規格リスト」を確定し、設計インプットとして管理することが、後工程の手戻りを防ぐ最も確実な方法である。

■ 本記事に関連するおすすめ商品
書籍 [書籍] 新FDA医療機器査察・QMSR対応実務書

QSRからQMSRへの改正内容と、FDA査察で問われる点を実務目線で整理した解説書である。

価格:55,000円(税込)

書籍の詳細を見る ▶
QMS手順書ひな形 【QMS省令対応】品質管理監督システム基準書

令和3年改正後のQMS省令に対応した品質管理監督システム基準書のひな形である。

価格:99,000円(税込・ダウンロード版)

ひな形の詳細を見る ▶
ビデオ・VOD 【ビデオ・VOD】日本一わかりやすい超入門改正QMS省令セミナー

令和3年改正後のQMS省令を平易に解説する。要求事項を通しで押さえられる。

価格:77,000円(税込)〜 ※視聴形態により異なります

ビデオの詳細を見る ▶

プログラム医療機器(SaMD)をめぐる国内制度

ソフトウェア単独で医療機器となるプログラム医療機器(SaMD)については、この10年で複数の施策・制度が積み重なった。名称が似ているために混同されやすいので、根拠と対象を分けて理解しておきたい。

プログラム医療機器に関する主な施策・制度(2026年8月時点)
名称正式な位置づけ根拠・時期
DASH for SaMD「プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略」。制度ではなく施策パッケージ令和2年11月24日、厚生労働省が公表
DASH for SaMD 2「プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略2」令和5年9月6日、厚生労働省および経済産業省が公表
「二段階承認」法定の制度名ではない。通知上は「二段階承認の考え方」であり、リバランス通知を根拠とする運用解釈令和5年11月16日 医薬機審発1116第2号。第一段階=製造販売承認、第二段階=承認事項一部変更承認
IDATEN(変更計画確認手続制度)法定制度。二段階承認の考え方とは別物薬機法第23条の2の10の2、施行規則第114条の45の2・45の3。令和2年9月1日施行
条件付承認制度法定制度。令和元年改正薬機法により法制化令和2年9月1日施行。前身は革新的医療機器条件付早期承認制度(平成29年7月31日 薬生発0731第1号)

制度名の誤用に注意

「二段階承認制度」という言い方は正確ではない。通知上は「二段階承認の考え方」であり、新設された法定制度ではない。また、相談窓口の正式名称は「医療機器プログラム総合相談」であり、「プログラム医療機器総合相談」は誤りである(PMDAのSaMD一元的相談窓口で受け付けられている)。なお、PMDAでは令和6年7月1日にプログラム医療機器審査室がプログラム医療機器審査部へ改編され、2チーム体制となっている。

実務的な手引きとしては、PMDAの「プログラム医療機器の薬事開発・承認申請に関する手引き」第4版(令和8年5月27日更新)が最も参照価値が高い。

直近の薬機法改正である令和7年法律第37号(令和7年5月21日公布、一部は令和8年5月1日施行)には、プログラム医療機器に関する新しい法定制度は設けられていない。「令和7年改正でSaMDの新制度ができた」という説明を見かけた場合は、根拠を確認されたい。

デジタルセラピューティクス(DTx)とは何か

ハードウェアを伴わず、ソフトウェア単体で治療に用いられる医療機器がデジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics、DTx)である。単独利用(そのソフトウェア自体が治療手段となる)と付加的利用(既存の医療機器や医薬品による治療に併用する)に大別される。いずれも、治療アウトカム(転帰)の向上を目的とする点で、単なる健康管理アプリとは一線を画す。

DTxの普及を後押ししたのはスマートフォンの一般化である。従来はパソコン上でしか動作しなかったアプリケーションが常時携帯される端末で動くようになり、医師と患者の双方向のやり取りが日常的に成立するようになった。ソフトウェア開発は物理的な製造設備を必要としないため、スタートアップや大学発ベンチャーの参入が相次ぎ、製薬企業にとっても医薬品以外の収益源として位置づけられている。

DTxの代表的な形態
形態内容典型的な例
付加的利用(併用型)医薬品や外来治療と併用し、行動変容や自己管理を支援して治療効果を高める2型糖尿病の自己管理を支援する「処方されるアプリ」。医師が処方し、解除キーがなければ利用できない形態をとるものがある
単独利用(単剤型)医薬品を用いず、アプリのみで治療プログラムを完結させる薬物依存・アルコール依存の治療を目的とし、一定期間にわたり治療コンテンツを段階的に提供するもの
国内の例2014年の法改正で単体プログラムが医療機器の対象となったことにより、治療用アプリの承認・保険適用の道が開かれたニコチン依存症治療用アプリが国内で承認・保険適用され、以降、他の疾患領域でも治療用アプリが登場している

薬事上の承認と、事業としての持続可能性は別問題である

DTxは、承認を得ることと、保険償還を獲得し、事業として継続することが別の課題である。先行する米国市場でも、規制上の許可を得た製品が事業として継続できなかった例がある。開発計画には、薬事戦略と並行して償還戦略・販売チャネル戦略を組み込む必要がある。

同じ機能でも、医療機器になるものとならないものがある。たとえば禁煙支援アプリでは、医師向けの画面や医療行為に相当する機能を備えたものは医療機器となり、機能を制限して自己管理用途に限定したものは非医療機器として提供される、という設計が実際に採られている。「どの機能を載せるか」がそのまま該当性を左右する点は、企画段階から意識すべきである。

ウェアラブル端末と一般的名称の新設

スマートウォッチの心電図(ECG)機能は、SaMDの該当性と一般的名称の関係を理解するうえで分かりやすい題材である。心電図機能は日本でも米国でもクラスIIに相当するが、日本では従来、心電計が特定保守管理医療機器(検査装置)に位置づけられ、校正・保守管理や管理者の設置が求められることが、家庭用ウェアラブルへの適用の障壁となっていた。

その後、「家庭用心電計プログラム」「家庭用心拍数モニタプログラム」といった一般的名称が新設され、家庭で使用されるウェアラブル端末の心電図・心拍数モニタリング機能が、医療機器として国内で提供される道が開かれた。現在では、この枠組みに基づく製品が実際に流通している。

一般的名称は、クラス分類・特定保守管理医療機器の該当性・認証基準の有無と直結する。新しいカテゴリの製品を企画する際には、「既存の一般的名称のどれに当てはまるか」「当てはまるものがない場合にどう扱われるか」を早期にPMDAへ相談することが、開発期間を左右する。

2026年時点で取るべき対応

  1. 該当性判断を設計開発の入口に置く医療機器か否か、どの一般的名称に該当するかを、企画段階でPMDAに相談して確定させる。プログラムについては令和5年3月31日 薬生機審発0331第1号のガイドラインを起点とする。
  2. 制度名を正確に使う「二段階承認制度」ではなく「二段階承認の考え方」、「プログラム医療機器総合相談」ではなく「医療機器プログラム総合相談」である。IDATEN(変更計画確認手続制度)と条件付承認制度は、いずれも別個の法定制度として区別する。
  3. SaMDの手引きの最新版を確認するPMDA「プログラム医療機器の薬事開発・承認申請に関する手引き」は第4版(令和8年5月27日更新)が現行である。
  4. 参照規格の版を更新するME機器の基礎安全・基本性能はJIS T 0601-1:2023、ユーザビリティエンジニアリングはJIS T 62366-1:2022が現行である。
  5. 米国向けソフトウェア関連手順を見直すGPSVのSection 6はCSA最終ガイダンス(2025年9月24日連邦官報告示)に置き換わった。ただしCSAは21 CFR Part 11を置き換えるものではない。
  6. DTxは償還戦略とセットで計画する承認取得後の保険適用・販売チャネル・継続的なエビデンス収集を、開発計画の一部として設計する。

出典

関連記事一覧