
ボーイングとエアバスの設計思想の違い
初めてでも分かる!ボーイングとエアバス、航空機設計思想の違いについて
読者は飛行機に乗るとき、その機体の製造元について意識したことはあるだろうか。実は、世界最大の航空機製造会社ボーイングとエアバスは、同じ目的を持ちながらも全く異なる設計思想で飛行機をつくり上げているのである。
基本的な設計思想の違い
まずは基礎から入ろう。ボーイングとエアバスの最も大きな違い、それは「人間判断優先」と「コンピュータ判断優先」という設計思想である。
ボーイング:人間判断優先
ボーイングは古くから「人間判断優先」の思想を採る会社であった。つまり、パイロットが飛行機を操作する際、操縦桿にどれだけ力を加えるか、どの程度操作するかを自由に決定できるというものである。これは例えるなら、普通車を運転するようなものだ。例えば、ハンドル(方向盤)を右に大きく切れば、車は大きく右に曲がる。これと同じで、ボーイングの航空機はパイロットの意思がダイレクトに反映される形となるのである。
エアバス:コンピュータ判断優先
一方、エアバスは「コンピュータ判断優先」の思想を重視する。つまり、航空機のコンピュータがパイロットの入力を受けて、飛行機が安全な範囲内で動くように自動的に調整するのである。これは安全性を重視する思想であり、操縦ミスから起こり得る事故を防ぐための措置と言えるだろう。
設計思想と航空事故:エールアンテール148便の教訓
しかし、新しい技術の導入初期には、パイロットの不慣れや操作インターフェースの問題が事故につながることもあった。具体的な事例を挙げると、1992年1月20日に起きたエールアンテール148便墜落事故はまさにその一つである。
事故の経緯
エアバスA320-111型機が、フランスのストラスブール空港への着陸進入中に墜落し、乗員乗客96人中87人が犠牲となった。事故調査の結果、この事故はパイロットの入力ミスが原因と結論付けられた。
事故の原因
パイロットが飛行制御ユニット(FCU)で降下角度(FPA)「-3.3度」に設定するつもりが、実際には降下率(V/S)「-33」(毎分3,300フィート降下)と誤入力してしまった。これにより、通常の4倍以上の急降下となり、山の尾根に激突したのである。
このような入力ミスが生じた背景には、同じスイッチで「経路・降下角度モード」と「針路・降下率モード」を併用しており、上下でそれぞれのモードを選択する仕組みになっていたことと、パイロットがモード設定を確認しないまま入力したことが指摘されている。また、当時最新鋭機のエアバスA320に両パイロットとも十分に慣熟していなかったという問題もあった。
事故後の改善
この事故を受けて、エアバス社はFCUの操作パネルのデザインを誤入力しにくいものに変更し、新造機への搭載と既存機の改修を行った。また、フランスでは対地接近警報装置(GPWS)の搭載が義務化された。
両社の設計思想は今も継続
このような事故の教訓から、両社とも安全性の向上に努めているが、ボーイングとエアバスの基本的な設計思想の違いは現在も維持されている。
- ボーイング:パイロットに最終的な判断権を委ね、機械はそれを支援する
- エアバス:コンピュータによる安全性の確保を優先し、パイロットの誤操作を防ぐ
両社は現在も激しい競争関係にあり、それぞれの思想に基づいた航空機開発を続けている。2025年現在、エアバスはA320ファミリーで市場をリードし、ボーイングは737 MAXや787ドリームライナーなどで対抗している。
まとめ
このように、設計思想の違いを知ることは、航空事故を防ぐだけでなく、どのようにして航空機が安全性を獲得し、優れた技術が生まれて行くのかを理解する上でも非常に有用である。両社の異なるアプローチが、それぞれの長所を生かしながら航空安全の向上に貢献しているのである。
次回飛行機に乗る際は、その背後にある設計思想もぜひ考えてみてはいかがだろうか。
関連商品
