データインテグリティと手順書の役割
データインテグリティと手順書の役割
データインテグリティを確保するための手順書は、企業全体で1冊作成すれば良いというものではない。むしろ、全ての部門の全ての手順書にデータインテグリティの要素を組み込んでいく必要がある。
例えば、データの転記が発生するプロセスにおいては、転記ミスのリスクに対応するためのダブルチェック手順を組み込む。
計算を行う場合は、計算ミスを防ぐための検算手順を追加する。
入力作業が発生する場合は、入力チェックの手順を明確にする。
手順書は単なる規制対応のためのものではなく、現場での具体的なミスを防ぐための実践的なツールである。現場の実態に即した、実効性のある手順を策定することが重要である。
また、定期的な見直しと更新を行い、新たなリスクや問題点に対応していく必要がある。
ヒューマンエラーと教育の重要性
ヒューマンエラーの防止には、適切な教育訓練が不可欠である。
特に注目すべきは、熟練者ほどケアレスミスを起こしやすいという点である。これは、熟練者がSOPを確認せずに作業を行う傾向があり、また作業スピードが速いために、エラーの発見が困難になるためである。
一方、初心者は作業が遅く、周囲の注意も行き届きやすいため、エラーが発見されやすい。しかし、熟練者は重要なデータを扱うことが多いため、そのエラーがデータインテグリティに与える影響は大きい。
このため、教育訓練は新人だけでなく、熟練者に対しても継続的に実施する必要がある。特に、新しいシステムや手順の導入時には、全ての従業員に対して適切なトレーニングを提供することが重要である。
紙記録と電子記録の管理
紙記録と電子記録は、どちらもデータインテグリティにおいて同等の重要性を持つ。紙記録の改ざんと電子記録の改ざんは、患者の安全性に対して同じ重大性を持つものである。
特に注意が必要なのは、ハイブリッドシステムの管理である。電子記録を作成し、それを印刷して手書きの署名を行う場合、多くの企業は印刷された紙の記録を原本と考えているが、これは誤りである。電子記録と手書きの署名の組み合わせがハイブリッドシステムであり、電子記録も紙記録も同等に重要な原本として扱う必要がある。
このため、電子記録を削除してはならず、両方の記録を適切に保管し、内容の一致を確認する必要がある。また、日付の整合性も重要であり、電子記録の作成日時と紙記録の署名日時の一致が求められる。