修正、是正処置、予防処置の違いについて

品質管理の世界では、問題が発生した際の対応方法として「修正」「是正処置」「予防処置」という三つの概念が重要である。これらは一見似ているように思えるが、その目的と適用範囲には明確な違いがある。本稿では、これら三つの概念の違いを初心者にも理解しやすく解説する。

修正とは

修正(Correction)とは、発見された不適合(問題や欠陥)そのものを取り除く行為である。言い換えれば、目の前の問題を解決するための即時的な対応のことである。
例えば

  • 製品に傷があれば、その傷を研磨して取り除く
  • 書類に誤字があれば、その誤字を訂正する
  • 機械が停止していれば、再起動させる

修正は、問題そのものに対処するものであり、問題の原因を探ることや、同様の問題が再発することを防ぐことは目的としていない。いわば「対症療法」に近い概念である。
重要な留意点: 修正のみで対応を終えてしまうと、根本的な原因が解決されていないため、同じ問題が再発する可能性が高い。例えば、単に製品の傷を研磨しただけでは、製造ラインの問題が改善されないため、次の製品でも同じ傷が発生するだろう。このため、修正だけでなく、是正処置まで進めることが品質管理において重要である。修正は問題の応急処置であり、恒久的な解決策ではないことを認識すべきである。

是正処置とは

是正処置(Corrective Action)とは、発見された不適合の原因を特定し、その原因を取り除くことで、「同じ場所で同じことが起きない」ようにするための活動である。つまり、是正処置の本質は、過去に起きた問題の再発を特定の場所や状況において確実に防止することにある。
例えば

  • 製品に傷が頻発する場合、製造ラインの問題点を調査し、設備の改善を行う
  •  書類に誤字が多い場合、チェック体制の見直しやダブルチェックの導入を行う
  • 機械が頻繁に停止する場合、停止原因を分析し、部品交換や設定変更を行う

是正処置は「なぜ問題が発生したのか」という根本原因を追求し、その原因を取り除くことに焦点を当てる。これにより、同じ問題が同じ状況下で再発することを防ぐ。是正処置の有効性は、特定された原因に対して適切な対策が講じられ、実際に「同じ場所で同じ不適合が発生しなくなる」ことで評価される。

予防処置とは

予防処置(Preventive Action)とは、まだ発生していない潜在的な不適合を予測し、その発生を未然に防ぐための活動である。是正処置が過去の問題に対する対応であるのに対し、予防処置は将来発生する可能性のある問題に対する先手の対応である。
重要な点として、この「起こり得る不適合」はすなわち「リスク」と同義である。つまり、予防処置はリスク管理の一形態と捉えることができる。
例えば

  • 類似製品で発生した問題が自社製品でも起こる可能性があると予測し、事前に設計変更を行う
  • 季節変動による品質問題が予測される場合、事前に製造条件を調整する
  • システムの負荷増大が予測される場合、事前にキャパシティ増強を行う

予防処置は「何が問題になり得るか」を予測し、問題が顕在化する前に手を打つことで、問題の発生そのものを防ぐ活動である。

ISO 9000における定義

ISO 9000(品質マネジメントシステム – 基本及び用語)では、これらの用語は以下のように明確に定義されている。

修正(Correction)の定義

ISO 9000:2015 の定義 3.12.3 によれば
「検出された不適合を除去するための処置」
注記として「修正には、例えば、再加工又は等級変更がある」とされている。

是正処置(Corrective Action)の定義

ISO 9000:2015 の定義 3.12.2 によれば
「検出された不適合又はその他の検出された望ましくない状況の原因を除去するための処置」
注記として以下の3点が示されている。

  1. 不適合には複数の原因があり得る
  2. 是正処置は再発防止のためにとる
  3. 是正処置と予防処置は区別する

予防処置(Preventive Action)の定義

ISO 9000:2015 の定義 3.12.1 によれば
「起こり得る不適合又はその他の起こり得る望ましくない状況の原因を除去するための処置」
注記として以下の3点が示されている。

  1. 起こり得る不適合には複数の原因があり得る
  2. 予防処置は発生防止のためにとる
  3. 予防処置は起こり得る状況に対して是正処置は実際の状況に対してとる

三者の関係性

これら三つの概念の関係性は以下のように整理できる。

  1. 修正:目の前の不適合を解消する(問題対応)
  2. 是正処置:発生した不適合の原因を取り除き、再発を防止する(再発防止)
  3. 予防処置:潜在的な不適合を予測し、発生を未然に防ぐ(未然防止)

時間軸でみると、修正は「現在」の問題に対応し、是正処置は「過去」に起きた問題の再発を防ぎ、予防処置は「将来」起こりうる問題の発生を防ぐという違いがある。

ISO規格との関連

品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001においても、これらの概念は重要な位置を占めている。注目すべき点として、ISO 9001:2015では、是正処置は要求事項として残されているが、「予防処置」という項目そのものはなくなった。これは予防的な考え方が「リスクおよび機会」という概念に発展的に統合され、規格全体の各箇条に配置されたためである。
つまり、ISO 9001:2015では予防処置という個別の要求事項ではなく、リスクベースの思考(Risk-based thinking)が規格全体を通じて組み込まれている。組織は品質マネジメントシステムの計画段階からリスクと機会を考慮し、それに基づいた対応を行うことが求められるようになった。これにより、予防処置の概念はより包括的かつ統合的に適用されることとなったのである。
このような変更は、品質マネジメントシステムがより戦略的でビジネス指向となり、組織の本来の目的達成に直接的に貢献するものとなったことを意味している。

具体例:飲酒運転による死亡事故の場合

品質管理の概念を社会的問題にも適用してみると、理解がより深まる。ここでは飲酒運転による死亡事故の事例を用いて、応急処置、修正、是正処置、予防処置の違いを具体的に解説する。

応急処置

応急処置とは、発生した緊急事態に対して即座に対応し、被害の拡大を防ぐための一時的な措置である。

  • 負傷者の出血を止める、心肺蘇生を行うなどの救命処置
  • 救急車や警察への通報
  • 二次事故を防ぐための周囲への注意喚起

これらは緊急事態に対する即時的な対応だが、事故の原因そのものを取り除くものではない。

修正

修正とは、問題そのものを解消することである。

  • 事故車両と人を路肩など安全な場所に移動させる
  • 飲酒運転者を現場で拘束し、危険な状態を解消する
  • 破損した道路標識や防護柵を修理する

これらの行為は事故による異常状態を正常な状態に戻すための対応だが、同様の事故が再発する可能性を減らすものではない。

是正処置

是正処置とは、問題の原因を特定し、同じ場所・状況で同じ問題が再発しないよう対策を講じることである。

  • 当該運転手の免許を取り消し、再び同じドライバーが飲酒運転をできないようにする
  • 事故を起こした運転手に対する飲酒運転の危険性教育の実施
  • 事故現場の道路設計に問題があれば、カーブミラーの設置や道路形状の改良を行う
  • 飲酒検問の強化や取り締まりの厳格化

これらは「なぜ事故が起きたのか」という原因に対して、特定の場所や状況において再発を防止するための対策である。

予防処置

予防処置とは、まだ発生していない潜在的なリスクを予測し、問題の発生そのものを未然に防ぐための活動である。

  • 危険運転致死傷罪の新設など、法律の強化
  • アルコール検知器を用いた車両イグニッションロックシステムの義務化
  • 飲酒運転の危険性に関する社会全体への啓発活動
  • 代行運転サービスの普及促進や公共交通機関の夜間運行の拡充

これらは起こり得る全ての飲酒運転事故に対して、発生そのものを防ぐための予防的措置である。ISO 9001:2015の考え方では、このような予防処置はリスク管理として体系的に取り組まれるべきものとなる。

時間軸と適用範囲の違い

この例から明確に見えるのは、時間軸と適用範囲の違いである。

  1. 応急処置と修正:現在の緊急事態・異常状態に対する即時的対応(事故直後の対応)
  2. 是正処置:特定の原因に対する再発防止策(特定のドライバーや特定の場所における対策)
  3. 予防処置:潜在的リスクに対する未然防止策(社会全体における飲酒運転リスクへの対応)

効果的なリスク管理のためには、これらすべてのレベルでの対応が必要であり、それぞれの概念の違いを理解することが重要である。

実務での適用

実務においては、この三つの概念をバランスよく活用することが重要である。

  1. まず目の前の問題に対しては「修正」で対応する(短期的対応)
  2. 次に問題の原因を分析し「是正処置」を講じる(中期的対応)
  3. さらに類似の問題が将来発生する可能性を予測し「リスク管理(予防処置的アプローチ)」を検討する(長期的対応)

この三段階のアプローチにより、問題への包括的な対応が可能となる。

まとめ

  • 修正:目の前の不適合を解消する即時的対応(ただし、これだけでは再発する可能性が高い)
  • 是正処置:不適合の根本原因を取り除き、同じ場所で同じ問題が再発しないようにする対応
  • 予防処置:潜在的な不適合(リスク)を予測し、発生を未然に防ぐ対応(現在のISO規格ではリスクベースの思考として規格全体に統合)

これら三つの概念を理解し、適切に使い分けることが、効果的な品質管理および継続的改善活動の基盤となる。問題が発生した際には、単なる修正で終わらせるのではなく、是正処置まで進め、さらにリスク管理の観点から予防的なアプローチも検討することで、組織の品質文化は着実に成熟していくのである。

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