バックアップとアーカイブの違い
コンピュータシステムを導入した場合、バックアップ機能とアーカイブ機能が備え付けられている場合がある。
これらの違いをご存知であろうか。
バックアップとは
バックアップはアクティブなデータベースの複製のことである。
その目的は障害や災害などで、システムやデータの一部または全部を失った場合に復旧させるためである。
通常、バックアップは日々更新され、最新のもののみが維持される。つまり使い捨てである。
バックアップデータは、直接アクセスはしないため、検索機能は不要である。
バックアップしたメディアは、サーバーと同じ部屋や建屋に保管してはならない。火災などの際に共に消失してしまうためである。
少なくとも隣の建屋などに保管することが望ましい。
アーカイブとは
アーカイブは、古くなったデータ(例:更新不要なデータ)をアクティブなデータベースからインアクティブなデータベースに移動させることである。
これにより、アクティブなデータベースの容量が小さくなり、検索スピードが向上し、また日々のバックアップ時間と容量が削減できる。
なお、アーカイブされたデータは、検索できることが必須である。
ただし、変更することはないため、Read Onlyで構わない。
規制要件の観点から
バックアップは、最新のもののみが有効でそれ以前に作成されたものは効力を持たない。
バックアップは、GLP、GCP、GMPなどの規制要件においても要求されている非常に重要な機能である。
ER/ES指針においてバックアップは『真正性』の要件である。これは、バックアップによって“監査証跡”を消失させないためである。
バックアップがなければ監査証跡は二度と復元できなくなってしまうのである。
したがって、多くの規制要件でバックアップを必須の要件としているのである。決して老婆心によりバックアップをとることを推奨している訳ではない。
万が一、障害や災害によってデータベースが失われた場合、一時的にバックアップデータを正と位置付ける。
過去にバックアップの機能がないだけでFDAからワーニングレターが発行された事例があった。
また、バックアップテープを社員が自宅に持ち帰ったケースにもワーニングレターが発行されている。
バックアップは真正な記録であるためである。
年に1度はバックアップから復元(リストア)できることを確認するためのテストを実施することが望ましい。
アーカイブは規制要件で義務付けられている訳ではない。
しかしながら、もしシステムがアーカイブ機能を持っている場合、定期的に読み出してみるテストの実施が要求されている。当該テストにおいては、読み出せること、検索できること、データの正確性などをチェックしなければならない。 その理由は、アーカイブしたメディアの経年劣化、システムの更新に伴うアクセス不良などである。