
健康食品GMPとは
現代社会において、健康食品やサプリメントは多くの人々の日常に欠かせないものとなっている。しかし、これらの製品が安全に製造され、一定の品質が保たれているのかという点については、消費者が知る術は限られている。健康食品GMPとは、この課題に対応するための製造基準であり、消費者が安心して健康食品を選ぶための重要な指標となるものである。本コラムでは、健康食品GMPの基本概念から最新の動向まで、わかりやすく解説していく。
GMPとは何か
GMP(Good Manufacturing Practice)とは、「適正製造規範」と訳され、人の健康や安全に関わる製品の製造において、品質と安全性を確保するために定められた基準のことである。健康食品GMPは、健康食品の製造過程における品質のばらつきや、汚染・有害物質の混入を防ぐために厚生労働省が定めた基準だ。原材料の受け入れから製造、出荷までの全工程において、製品が「安全」に作られ、「一定の品質」が保証されるよう管理することを目的としている。
GMPの三原則
健康食品GMPは以下の三原則に基づいている。
- 人為的な誤りを最小限にすること
- 製品の汚染及び品質低下を防止すること
- 高い品質を保証するシステムを設計すること
これらの原則を満たすために、従業員の教育やマネジメントなどのソフト面と、設備や機器の配置などのハード面の両方に関する指針が示されている。
医薬品GMPと健康食品GMPの違い
医薬品と健康食品では、GMPの位置づけが大きく異なる。医薬品GMPは1980年に厚生省令として施行され、1994年には医薬品の製造許可要件となった。一方、健康食品GMPは2005年の厚生労働省通知により導入されたが、長らく「推奨」に留まり、法的強制力はなかった。
健康食品は食品衛生法に基づきHACCPによる衛生管理が義務づけられているものの、品質管理(GMP)は法規制の対象外で、製造事業者の自主性に委ねられていた。しかし、近年の健康被害問題を受け、2026年9月からサプリメント形状の機能性表示食品に対してGMPが義務化されることが決定している。
健康食品GMP認証機関と基準
日本国内で健康食品GMPの認定を実施している主な機関は以下の2つである。
- 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会(JHNFA/日健栄協)
- 一般社団法人 日本健康食品規格協会(JIHFS)
この2つの機関が、厚生労働省の「健康食品GMPガイドライン」の基本的要件に基づいて、健康食品製造企業の工場を監査・審査し、認定を行っている。健康食品GMPには、大きく分けて原材料工程と製品工程の2つがあり、近年では輸入原材料に対するGMP認証も始まっている。
健康食品GMPの管理体制
健康食品GMPは以下の4つの要素で構成されている。
- 人的要素
製造担当者の教育訓練と衛生管理を徹底し、作業者の責任や権限を明確化することでミスを防ぐ。健康状態の確認や手洗い、適切な作業着の着用などが含まれる。 - 物的要素
製造工場や機器の設計と清掃、保守、交差汚染防止の徹底を行う。設備や機器の校正(キャリブレーション)を定期的に実施し、常に正確な製造環境を維持する。 - 方法的要素
SOP(標準作業手順書)を策定し、プロセスを定型化する。また、製造工程の妥当性確認(バリデーション)を実施し、製造方法の有効性を確認する。 - 管理的要素
製造記録と文書管理を徹底し、トレーサビリティを確保する。定期的な内部監査を行い、問題点を特定し、改善策を講じる。
これらの取組みを通じて、製品の品質を「計画段階から出荷段階まで」一貫して管理している。
GMP認定取得のプロセス
健康食品GMPの適合認定を取得するためには、認証機関に申請し、厳格な審査を受ける必要がある。そのプロセスは以下の通りである。
- 認定申請書の提出(前提として「GMPに基づいた管理の実績が3ヶ月程度」必要)
- 調査員による書類調査
- 書類調査における指摘事項の改善
- 調査員による実地調査
- 実地調査における指摘事項の改善
- GMP工場認定審査会による審査
- 認定
この認定プロセスは厳格で、およそ6ヶ月~1年と多くの時間をかけて調査・審査が行われる。また、認定期間は3年のため、認定を継続するには3年ごとの更新申請が必要となる。
GMPマークと消費者への安心提供
健康食品GMP認定工場で製造された製品には、「GMPマーク」を付けることができる。このマークは、原材料の受け入れから製造、出荷まですべての工程において製品が安全につくられているという証であり、一定の品質が保証されていることを示している。
消費者は健康食品を選ぶ際に、このGMPマークを目安にすることで、より安心して製品を摂取することができる。
近年の動向と今後の展開
GMP義務化
2024年に発生した機能性表示食品による健康被害問題を受け、消費者庁は機能性表示食品制度においてサプリメント形状の製品に対するGMPを義務化することを決定した。2026年9月1日からは法的に義務化され、製品の安全性と品質の確保が強化される。
原材料GMPの強化
各認証機関では原材料GMPの強化が進められている。特に輸入原材料に対するGMP認証が開始され、輸入される原材料の製造ロット毎に国内で分析試験を実施することが要件となっている。
微生物関連原材料の管理強化
2024年末には、藻類を含む「微生物等の培養又は発酵工程を経て生産される原材料」を使用するサプリメントの製造や品質の管理に関わる規定が新たに盛り込まれ、より厳格な管理が求められるようになった。
国際的なGMP要件との整合性
健康食品の海外展開においては、健康食品GMPは必須条件となっている。米国の「ダイエタリーサプリメント法」やEUの「フードサプリメント法」、ASEANの「ヘルスサプリメント法」などの下でGMPが義務化されており、国際的な整合性も重要な課題となっている。
まとめ
健康食品GMPは、健康食品の品質と安全性を確保するための重要な基準である。2026年9月から機能性表示食品に対するGMPが義務化されることで、日本の健康食品業界の品質管理体制はさらに強化されると予想される。
消費者は健康食品を選ぶ際に、GMPマークを一つの目安とすることで、より安心して製品を摂取することができるだろう。製造事業者にとっても、GMP認証を取得することで製品の信頼性向上や差別化につながり、ビジネス上の大きなメリットがある。
健康食品の安全性と品質の確保は、国内外で重要視されており、今後もGMP基準はさらに進化していくと考えられる。消費者も製造者も、この動向に注目していく必要があるだろう。
