洗浄バリデーションの重要性
洗浄バリデーションの重要性
滅菌医療機器について、滅菌を保証するためには残留した異物が人体に対して影響を与えないよう確実に滅菌を保証する必要がある。
そのためには、洗浄によって付着物を可能な限り分解・除去することが重要である。
洗浄バリデーションによって確立した洗浄プロセスで意図する洗浄効果が得られることを事前に検証し、現場における確実な洗浄の実施に繋げることが肝要である。
特に 「再製造単回使用医療機器」(Reuse single-use device:R-SUD)は医療機関での使用時の汚染を適切に除去できるよう分解・洗浄し、再組み立てを行うことで、原型医療機器と同等の品質、有効性及び安全性をもったSUDとして再流通させるものである。
SUDの再製造にあたっては、対象となるR-SUDに適した洗浄・消毒・滅菌方法が必要であり、洗浄プロセスについてのバリデーションが要求されている。
医療機器製品の洗浄は、残留物/汚染物質/微生物などの除去を目的とする。
洗浄が必要な医療機器は下記の2種類である。
1.製品を、滅菌又はその使用に先立ち、組織によって清浄する場合
2.製品を、非滅菌で供給し、滅菌又はその使用に先立ち清浄する場合
2015年にはFDAが日本の内視鏡3社にワーニングレターを発行したことがある。米国において、内視鏡が媒介となって、強力な耐性菌による7人の院内感染が発生し、うち2人が死亡したためである。
議論の焦点は内視鏡の洗浄作業にあてられた。十二指腸内視鏡は先端に可動部があるため形状が複雑で、細菌はここに残留した体内組織から感染した可能性が高いとされる。メーカーは適切な洗浄マニュアルを示す責任を負うが、洗浄装置や病院職員の訓練度などに幅があり、リスクをゼロにするのは難しい面もある。 FDAは書簡で「マニュアルに厳密に従っても感染した事例があることは把握している」とした。
医療機器企業が医療機関へ洗浄等に付いて提供しなければならない情報の要件については、ISO 17664-1:2021 『ヘルスケア製品の処理-医療機器の処理に関して医療機器製造業者が提供すべき情報』にまとめられている。
取扱説明書に洗浄/消毒/滅菌等に係る注意事項等を記載しなければならない。
自動洗浄、用手清浄等の洗浄方法を医療機関で実施した場合、特定の清浄度が保証されるように洗浄バリデーションを実施しなければならない。
用手洗浄には、切創、血液・体液など医療従事者の曝露などのリスクがあるため、自動洗浄が望ましい。
感染予防に効果的でもある。
洗浄の実施主体は、
1.医療機器製造業者
2.再製造医療機器製造業者
3.医療機関
に分類される。
1.医療機器製造業者による洗浄バリデーションの実施
医療機器製造業者は、必要に応じて洗浄バリデーションを実施しなければならない。
しかしながら、ISO13485:2016には、洗浄バリデーションの直接的な要求はない。
ISO13485:2016 「Practical guide」において、洗浄プロセスは「個別にバリデーション実施要否を判断すべきプロセス」とされている。
またASTM F3127-16 「Standard Guide For Validating Cleaning Processes Used During The Manufacture Of Medical Devices」が唯一のガイドラインである。また、FDAのRecognized Consensus Standard(認知規格)となっている。
ただし、ASTM F3127-16は、再使用可能な医療機器(つまり医療機関で洗浄されるもの)は対象としていない。
一方で、滅菌を確実にし、滅菌時間を短縮するために滅菌前に洗浄を実施する必要がある。
2.再製造医療機器製造業者による洗浄バリデーションの実施
「再製造単回使用医療機器」(R-SUD)の場合は、血液、体液などに汚染されており、原型医療機器よりも洗浄バリデーションが重要である。
2021年のQMS省令改正により、第5章の2『再製造単回使用医療機器の製造管理及び品質管理』(81条の2~81条の2の4)が付け加えられた。
QMS省令では「再製造単回使用医療機器」(Reuse single-use device:R-SUD)について、再製造工程に係る洗浄バリデーションが要求されている
「再製造単回使用医療機器」(R-SUD)の洗浄バリデーションに係るガイドラインには、以下がある。
1.再製造単回使用医療機器に係る事業者向け洗浄ガイドライン及び質疑応答集(Q&A)について(令和元年6月17日付事務連絡)
2.Reprocessing Medical Devices in Health Care Settings: Validation Methods and Labeling (最終改訂:2017年6月9日)
3.医療機関による洗浄バリデーションの実施
用手洗浄、浸漬洗浄、超音波洗浄、ウォッシャーディスインフェクターによる洗浄を実施する。
洗浄・消毒により菌を無毒化するまでが多く、滅菌まで実施できるとは限らない。滅菌処理ではなく、当面は高水準消毒を容認している状況である。
機器の老朽化などにより、間隙、ひび割れなどが発生し、完全に洗浄できないケースが発生する。
ドイツ滅菌学会(DGSV)等の策定したガイドラインの日本語版が存在する。
1.医療用具の用手洗浄と用手消毒のバリデーションガイドライン
2.医療機器の自動洗浄及び熱水消毒プロセスのバリデーションと日常的なモニタリングのためのガイドライン
医療現場において、滅菌バリデーションや洗浄バリデーションにおけるPQの実施が求められる。