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第8章 :資金調達と事業計画

8.1 医療機器ビジネスの資金需要の特徴

医療機器ビジネスの資金需要は、一般的な製造業とは大きく異なる特徴を持っています。最も重要な点は、製品化までの期間が長期にわたることです。薬事承認の取得から保険収載まで、製品の市場投入には通常3年から5年程度の期間を要します。この間、継続的な開発投資が必要となります。

研究開発費に加えて、医療機器特有の支出項目も見逃せません。品質管理体制の構築、各種試験の実施、薬事対応など、一般的な製品開発では発生しない費用が必要となります。例えば、品質管理システムの構築には、文書体系の整備から、設備の確保、人材の育成まで、まとまった投資が必要です。

私の経験では、特に臨床試験の実施が必要となる場合、想定以上の費用が発生することが少なくありません。臨床試験は、試験計画の立案から実施、データ解析まで、多大な時間と費用を要します。これらの費用を適切に見積もり、必要な資金を確保することが、事業の成否を分ける重要な要素となります。

8.2 調達手段

医療機器ビジネスの資金調達には、複数の選択肢があります。開発段階に応じて、適切な調達手段を選択することが重要です。

ベンチャーキャピタルからの資金調達は、特に開発初期段階で有効な選択肢となります。近年は医療機器分野に特化したベンチャーキャピタルも増えており、資金提供だけでなく、業界特有のノウハウ提供も期待できます。ただし、投資家の期待に応える事業計画と、確実な実行が求められます。

公的支援制度も、重要な資金源となります。AMEDやNEDOなどの支援機関では、医療機器開発に特化した支援プログラムを提供しています。これらのプログラムでは、資金面での支援に加えて、薬事戦略や知財戦略についてのアドバイスも得られます。特に、革新的な技術を持つ企業にとって、有効な選択肢となるでしょう。

開発が進み、製品化が視野に入ってきた段階では、金融機関からの借入も検討に値します。ただし、医療機器ビジネスの特殊性を理解している金融機関は限られています。開発の進捗状況や、市場性の説明など、金融機関を説得するための綿密な準備が必要です。

8.3 事業計画策定

医療機器ビジネスの事業計画では、技術開発の進捗だけでなく、薬事承認や保険収載などの重要なマイルストーンを明確に示す必要があります。市場分析では、医療機器特有の市場構造を理解し、具体的な数値に基づいた予測が求められます。

特に重要なのは、開発期間中の資金需要と、上市後の収益構造を明確に区分して検討することです。開発期間中は、研究開発費に加えて、薬事対応や品質管理体制の構築にかかる費用を適切に見積もる必要があります。製品化後は、保険償還価格を踏まえた収益性の検討が重要です。

リスク分析も、事業計画の重要な要素です。開発リスク、規制リスク、市場リスクなど、様々なリスク要因を特定し、その対応策を明確にする必要があります。特に、承認審査の長期化や、競合製品の参入など、医療機器特有のリスク要因については、慎重な検討が求められます。

また、開発の各段階で必要となる経営資源についても、具体的な計画が必要です。特に人材の確保は重要な課題です。薬事担当者や品質管理責任者など、専門性の高い人材の確保には、時間とコストがかかることを考慮に入れる必要があります。

事業計画は、資金調達の重要なツールとなります。投資家や金融機関に対して、事業の実現可能性と収益性を説得力のある形で示すことが求められます。そのためには、医療機器ビジネスの特殊性を踏まえた、綿密な計画策定が不可欠です。

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