CAPAの7段階

品質管理や製造業の現場において、問題が発生した際に適切な対応を行うことは極めて重要である。そのための方法論として広く活用されているのが「CAPA(Corrective Action and Preventive Action:是正処置及び予防処置)」である。CAPAは単なる問題解決の手法ではなく、組織の継続的改善を支える体系的なプロセスとして位置づけられている。本稿では、初心者にも理解しやすいようCAPAの7段階について解説する。また、FDA QSR 820.100における7ステップについても概説し、規制対応の観点からCAPAを捉える視点も提供する。

CAPAとは何か

CAPAとは、「Corrective Action(是正処置)」と「Preventive Action(予防処置)」の略称である。これは問題が発生した際に、その問題を解決するための是正処置と、同様の問題が将来発生しないようにするための予防処置を体系的に実施するための品質マネジメントシステムの重要な要素である。特に医薬品、医療機器、航空宇宙、自動車などの品質が重視される産業で広く採用されている。

CAPAの7段階

第1段階:問題の特定と報告

CAPAプロセスの第一歩は問題を正確に特定し、適切に報告することである。この段階では、「何が」「いつ」「どこで」「どのように」問題が発生したかを明確に記録する。重要なのは事実に基づいた客観的な情報収集である。感情や憶測を排除し、具体的なデータや観察結果に基づいた報告を行うことが求められる。
例えば、「製品Aのロット番号B12345において、2025年4月15日の最終検査時に規格外の寸法誤差が3個連続で検出された」というように具体的に記述する。

第2段階:問題の重大性評価

特定された問題の重大性を評価する段階である。ここでは、問題が及ぼす影響の範囲、深刻度、緊急性などを総合的に判断する。リスクアセスメントの手法を用いて、問題の重大性を定量的に評価することも有効である。
評価結果に基づき、対応の優先順位を決定し、即時対応が必要な重大な問題には迅速に対処する体制を整える。

第3段階:緊急対応措置(コンテインメント)

緊急対応措置は、問題の拡大を防ぐために行う一時的な対策である。この段階の目的は、根本原因が特定され恒久的な解決策が実施されるまでの間、問題の影響を最小限に抑えることにある。
例えば、不良品が市場に出回るのを防ぐための製品の出荷停止、不良ロットの隔離、顧客への通知などが該当する。これらの措置は迅速に実行される必要があるが、あくまで一時的なものであることを認識しておくべきである。

第4段階:根本原因分析

問題の表面的な症状ではなく、真の原因を特定するための分析を行う段階である。ここでは5Why分析、特性要因図(魚骨図)、FTA(故障の木解析)、FMEAなどの手法を用いて、問題の根本にある原因を追究する。
単に「ヒューマンエラー」と結論づけるのではなく、なぜそのようなエラーが発生したのか、システム的な要因は何かを深く掘り下げることが重要である。例えば、「作業手順が曖昧であった」「従業員の教育訓練が不十分だった」「設備の定期点検が適切に行われていなかった」などの根本的な要因を特定する。

第5段階:是正処置の実施

根本原因分析の結果に基づき、問題を解決するための具体的な対策を立案し実施する段階である。是正処置は、既に発生した問題に対する対応であり、特定された根本原因を排除または制御するためのものである。
例えば、作業手順書の改訂、従業員への再教育、設備の修理や更新、検査方法の見直しなどが該当する。実施にあたっては、「誰が」「いつまでに」「何を」「どのように」行うかを明確にし、進捗管理を行うことが重要である。

第6段階:予防処置の実施

予防処置は、類似の問題が将来発生することを防ぐための対策である。是正処置が「既に発生した問題」に対するものであるのに対し、予防処置は「まだ発生していない潜在的な問題」に対するものである。
この段階では、今回の問題から得られた教訓を組織全体で共有し、類似のプロセスや製品にも水平展開することが重要である。例えば、他の製品ラインでも同様の不具合が発生する可能性がないか調査し、予防的な対策を講じることが該当する。

第7段階:有効性の検証と完了

最後の段階は、実施した是正処置と予防処置の有効性を検証し、CAPA活動を完了させることである。具体的には、対策実施後のデータを収集・分析し、問題が実際に解決されたかを確認する。
有効性の検証には、適切な評価指標(KPI)を設定し、十分な期間のモニタリングを行うことが重要である。例えば、「不良率が目標値以下に低減し、3ヶ月間維持されたか」などを確認する。検証の結果、対策が十分な効果を示していない場合は、第4段階の根本原因分析に戻り、再検討を行う必要がある。

FDA QSR 820.100における7ステップ

医療機器業界において、CAPAは単なる品質改善ツールではなく、法的要件でもある。FDA(米国食品医薬品局)は医療機器品質システム規制(QSR: Quality System Regulation)21 CFR Part 820.100において、CAPAプロセスに関する具体的な要件を規定している。以下に、FDA QSR 820.100におけるCAPAの7ステップを概説する。

第1ステップ:データの分析と問題特定(820.100(a)(1))

FDA QSRでは、品質データの分析を通じて問題を特定し、是正処置および予防処置を必要とする潜在的な製品および品質問題の原因を特定することを要求している。このステップでは、様々な情報源(苦情、返品、監査報告書、不適合報告書、プロセスデータ、サービス記録など)からのデータを収集・分析し、傾向や異常を検出することが必要である。

第2ステップ:問題の調査(820.100(a)(2))

特定された問題に対して、その範囲と影響を評価するための調査を実施することが求められる。この調査では、問題の詳細な状況、影響を受ける製品やプロセス、潜在的なリスク、問題の発生頻度などを明確にする必要がある。

第3ステップ:影響の特定(820.100(a)(3))

調査結果に基づき、問題が品質システム、製品、プロセス、およびユーザーに与える影響を特定することが求められる。このステップでは、問題の重大性に基づいて適切な対応レベルを決定し、緊急性の高い問題には迅速に対応する体制を整える。

第4ステップ:根本原因の特定と是正処置の実施(820.100(a)(4))

問題の根本原因を特定し、再発を防止するための是正処置を実施することが要求される。根本原因分析には、適切な科学的手法を用い、単なる症状対応ではなく、真の原因に対処することが重要である。是正処置の実施においては、変更管理プロセスに従い、変更による新たなリスクを評価することも必要である。

第5ステップ:予防処置の実施(820.100(a)(5))

潜在的な問題を特定し、発生を防止するための予防処置を実施することが求められる。このステップでは、類似製品やプロセスにおける同様の問題の発生可能性を評価し、予防的な対策を講じることが重要である。また、リスク管理プロセスと連携し、製品ライフサイクル全体にわたるリスク低減策を実施することが望ましい。

第6ステップ:変更の検証と有効性確認(820.100(a)(6))

実施した是正処置と予防処置の有効性を検証することが求められる。このステップでは、対策実施後のデータを収集・分析し、問題が実際に解決されたか、新たな問題が発生していないかを確認する。有効性が確認されなかった場合は、対策を見直し、必要に応じて新たな対策を実施する。

第7ステップ:文書化と情報共有(820.100(a)(7)および(b))

CAPAプロセスのすべての活動を文書化し、関連部門に共有することが要求される。記録すべき事項には、問題の特定と報告、根本原因分析の結果、実施した是正処置と予防処置、有効性確認の結果などが含まれる。また、管理者による定期的なレビューを通じて、CAPAシステムの有効性を評価することも求められる。

CAPAを成功させるためのポイント

CAPAプロセスを効果的に実施するためには、以下のポイントに留意することが重要である。

  1. 経営者のコミットメント: CAPAは組織全体の取り組みであり、経営層の強いサポートが不可欠である。
  2. 適切な文書化: すべての段階において、判断や行動の根拠を明確に文書化することが重要である。
  3. チームアプローチ: 多様な視点から問題を捉えるため、関連部門の担当者を含めたチームで取り組むことが効果的である。
  4. 時間管理: 各段階に適切な時間を配分し、全体のプロセスが長期化しないよう管理することが必要である。
  5. 教育訓練: CAPAの手法や考え方について、組織全体で理解を深めるための教育訓練を継続的に実施することが重要である。

おわりに

CAPAの7段階およびFDA QSR 820.100における7ステップは、問題解決と品質改善のための体系的なアプローチである。これらは単なる規制対応のためのツールではなく、組織の品質文化を形成し、継続的改善を推進するための重要な枠組みである。
初心者にとっては煩雑に感じられる部分もあるかもしれないが、各段階・ステップの目的と意義を理解し、実践を重ねることで、より効果的な問題解決能力が養われていくだろう。重要なのは形式的な実施ではなく、真の問題解決と再発防止に向けた真摯な取り組みである。
組織全体でCAPAの考え方を共有し、日々の業務に活かしていくことが、製品やサービスの品質向上につながり、最終的には顧客満足度の向上と組織の持続的な成功に寄与するのである。

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