
PAI(承認前査察)の重要性
医薬品や医療機器が市場に登場するまでには、厳格な規制と多層的な審査が存在する。その中でも、PAI(Pre-Approval Inspection、承認前査察)は極めて重要なプロセスである。本コラムでは、PAIの目的とその内容、さらに商業生産の準備状況とデータインテグリティ(データ完全性)監査の重要性について、初心者にも分かりやすく、かつ専門性を保ちつつ解説する。
PAI(承認前査察)とは何か
PAIは、薬事承認前の段階で規制当局(FDAやPMDAなど)が行う、製造所に対する現地査察である。目的は、申請された製造方法や品質管理体制が、実際に現場で適切に運用されているかを確認する点にある。これは製品が適切な品質で恒常的に製造できる体制であるかの最終的なチェックと位置付けられる。
PAIの主要な目的
PAIには大きく2つの目的がある。一つは、商業生産の準備状況を確認すること。もう一つはデータインテグリティ、すなわち提出された申請データや記録に信頼性があるかを監査することである。
商業生産の準備状況の確認
新薬や新規製品の申請時には、試験生産(スケールダウンした生産)が実施されることが多い。しかし、認可後には大規模な商業生産へと移行するため、準備状況が万全かどうかは極めて重要である。PAIでは、設備、工程管理、担当者の教育状況、原料の受け入れ態勢など、多岐にわたる項目が精査される。これにより、生産品質を恒常的に維持できる体制がとれているかが問われる。
データインテグリティ監査の重要性
近年、とりわけ重視されるのがデータインテグリティ(データ完全性)である。データインテグリティとは、「いかなる時においても記録が正確かつ改ざんされていないこと」を指す。承認申請時に提出されたデータや、製造現場で記録されるデータが、真実、正確、完全であることは、製品の品質保証の根幹である。PAIでは、この記録・データが適切に管理・保存されているか、操作履歴が追跡できるかなどが厳格にチェックされる。不正や記録改ざんが発覚した場合、承認そのものが見送られる場合もある。
PAIがもたらす業界への示唆
PAIによる現地査察で問題が見つかった場合、承認審査は停止もしくは大幅に遅延する。したがって、早い段階から生産体制とデータ管理の両面で高い水準を維持する姿勢が求められる。特にグローバル展開を目指す企業においては、各国の規制基準への遵守も無視できない課題となる。
まとめ
PAI(承認前査察)は、医薬品・医療機器の製造現場の現実を規制当局が直接確認するための、極めて重要な工程である。商業生産の準備状況や、データインテグリティの確保が焦点となり、これらに不備があれば製品は市場に出ることができない。一方で、PAIを適切に乗り越えることで、企業は高品質な製品を安全に届ける信頼を勝ち得ることができる。PAIの意義とその対応の重要性を理解することが、今後さらに求められるであろう。

