
CAPAシステムの本質
1. CAPAとは何か
CAPA(Corrective Action and Preventive Action)は、日本語で「是正措置・予防措置」と訳される品質管理の根幹をなすシステムである。その名称が示す通り、CAPAは、問題が発生した際の是正(修正)措置と、同様の問題が発生しないよう事前に策を講じる予防措置の両輪から成り立っている。「起きたことへの対応」と「起きうることへの備え」を区別しつつ、両者が相互に連携するプロセスが特徴である。
2. FDAが注目する理由
CAPAシステムは米国食品医薬品局(FDA)が定める品質システム規制(QSR: Quality System Regulation)において最重要事項の一つとされている。FDAがCAPAに強い関心を持つのは、単なる欠陥修正にとどまらず、企業の製品およびプロセスの品質保証体制そのものが、問題の再発防止と継続的改善を実現する力を有しているかを評価する基準となるからである。CAPAが効果的に機能していれば、品質問題が再発するリスクを大幅に減らすことができる。逆に、CAPA活動が不十分であれば、FDA査察時に重大な指摘を受けることになりかねない。
3. 基本概念と実装の流れ
CAPAシステムの基本は、「問題の識別」「原因の解析」「是正・予防措置の立案と実施」「効果の確認」の4ステップに集約される。
まず、製品異常や顧客苦情、不適合データなど“シグナル”を見逃さず、問題として特定することから始まる。次に、単なる表面的な対症療法に留まらず、「そもそもなぜ起きたのか」という根本原因(Root Cause)を解析する。これに基づき、適切な是正措置(既に発生した問題の修正)と予防措置(再発や類似事例の未然防止)を計画・実施しなければならない。最後に、取られた措置が“本当に効果的だったのか”を検証し、継続的改善サイクルへと繋げる作業が不可欠である。
4. 専門性を支える設計思想
CAPAシステムには、単なるチェックリスト的な運用ではなく、システム思考が求められる点が重要である。個々のミスや不適合の修正のみならず、工程全体や組織の構造的な脆弱性、情報共有の不備、人材教育の不足、標準化の徹底度合いなど、組織の体質そのものへアプローチする必要がある。そのため、CAPAのレビューやフォローアップには複数部門の専門家が関与し、文書化やトレーサビリティの確保、定期的な監査も求められる。
5. 初心者が意識すべきポイント
CAPAに取り組む際、初心者が陥りやすいのは、「是正措置=その場しのぎの修理や対応」に終始してしまう事である。CAPAの本質は、根本原因への対策と、その知見を全社的な予防措置へと昇華させる点にある。まずは問題点を体系的に記録し、原因追及のために5Whysや特性要因図(フィッシュボーンダイアグラム)などの手法を用いること、実施した措置は必ず評価し、繰り返しがないことを確認することを基本とすべきである。
6. まとめ
CAPAシステムは、単なる「問題対応マニュアル」ではなく、品質保証の文化そのものを反映する重要な枠組みである。FDAが最も重視する品質システム要素であることは、CAPAが企業の品質レベルや組織能力を如実に示す指標となることを意味している。初心者であっても、是正措置と予防措置の違いを意識し、体系的かつ再現性のある運用を心がけることで、高い品質文化の実現に寄与できるのである。

