
Affidavit(宣誓供述書)への対応
医薬品や医療機器を米国市場へ導入する際、FDA(米国食品医薬品局)による査察は避けて通れない重要なプロセスである。査察の過程で、査察官からAffidavit(宣誓供述書)への署名を求められるケースがあるが、安易に署名をすることは大きなリスクを孕む。本稿では、Affidavitの基本的な概要に触れた上で、FDA査察時における署名のリスクと、適切な対応について解説する。
Affidavit(宣誓供述書)とは何か
Affidavitとは、公的な証拠書類として用いられる書面であり、供述者が「記載内容が真実である」と法的に宣誓した証明書である。裁判所や規制当局に対し、事実関係や経緯を証拠として提出する際に活用され、米国法では非常に重い法的効力を持つ。内容に偽りがあった場合は偽証罪に問われることもあり、サインの重みは日本の一般的な確認書以上と認識せねばならない。
FDA査察におけるAffidavitへの署名の場面
FDA査察の終盤や、何らかの問題・違反事項が指摘された場面において、Affidavitへの署名を求められることがある。例えば、
- 指摘事項に対する当事者の見解
- 問題発生時の経緯や原因
- 社内での是正処置の内容
などが宣誓供述書という形で記録され、署名を要求されることが多い。
署名のリスクとリスク管理の観点
Affidavitに署名をするということは、供述内容が事実であり、後々裁判や行政手続でも不変の証拠として取り扱われることを意味する。仮に署名後に事実関係に誤りや認識違いが発覚した場合、その内容が修正できなくなるのみならず、会社や個人が法的責任を問われる可能性がある。
特に米国法では、「知らなかった」「誤記だった」といった釈明は非常に受け入れられにくく、たとえ善意のミスでも重大なペナルティに発展するリスクが高い。加えて、内容を十分理解できない英語での署名、即断的な対応は後悔を招きやすいという点も留意すべきである。
適切な対応策
リスクを回避するため、基本的にAffidavitへの現場での署名は避けるべきである。査察官から署名を求められた場合には、
- 内容を持ち帰って慎重に検討することを申し出る
- 社内の法務部門や専門家(米国弁護士等)との相談を約束する
- やむを得ず署名が必要な場合でも、署名者の立場や内容範囲を明確にし、限定的な内容にとどめる
ことが肝要である。
場合によっては、「事実のみ」を淡々と記載し、見解や評価、将来の約束を盛り込まないことや、「英語を十分に理解していない」旨を署名時に添えるなど、自己防衛的措置も有効である。
まとめ
Affidavitへの署名は、後戻りできない重大なリスクを伴うため、安易に応じてはならない。内容の十分な理解とリスク評価、専門家の助言を得ながら、冷静かつ慎重に対応することが、企業および担当者自身のリスク管理の基本である。FDA査察に臨む際は、この点を常に念頭に置き、備えることが求められる。

