EIR(Establishment Inspection Report)とは何か

1. はじめに:EIRの概要

EIR(Establishment Inspection Report)とは、米国食品医薬品局(FDA)が実施する査察の結果を記載した公式な報告書である。特に医薬品、医療機器、食品、バイオ製品などをアメリカ国内またはアメリカ向けに製造・輸出する企業にとって、EIRは欠かせない文書である。本稿では、EIRの内容とその重要性、またEIRを受領した際に企業が取るべき対応について解説する。

2. EIRの内容:査察報告書の構成

EIRは、FDA査察官が現場で行った査察の対象、目的、手順、観察事項、企業担当者とのインタビュー内容などが体系的に記録された文書である。また、査察における逸脱事項や、指摘事項への企業の説明・対応状況も詳述されている。通常は、以下のような内容が含まれる。

  • 査察の実施日、期間、査察官名
  • 査察の対象となった製品や製造工程
  • 遵守している規制やガイドライン
  • 重大・軽微を問わず、観察された逸脱や指摘事項(FDA Form 483の内容を含む場合もある)
  • 企業からの説明、提出書類、改善計画など
  • 査察官の総括的評価および今後の展望

3. EIRの重要性:企業にとっての意味

EIRは査察の正式な記録であり、FDAと企業とのコミュニケーションの要となる。EIRが発行されることで、査察の透明性が担保されるとともに、企業は自身のコンプライアンス状況を客観的に把握することが可能となる。また、指摘事項が記載されていた場合、企業が迅速かつ適切に対応することで、行政指導や法的措置などのリスクを低減できる。逆に、EIRの内容に問題があった場合、Warning Letterや輸入禁止措置など重い行政処分に発展するケースもあるため、その内容に真摯に向き合うことが求められる。

4. EIRの受領時期:いつ届くのか

通常、FDA査察終了後、数週間から数ヶ月以内にEIRが発行される。企業はEIRを正式に受領するまでは、査察時に口頭やドラフトで伝えられた指摘事項について、予備的な対応を進めることが望ましい。正式なEIR受領後に、最終的な改善報告や是正措置を提出する流れが一般的である。

5. 企業が取るべき対応:EIR受領後のポイント

EIRを受領した際には、次のようなステップで対応する必要がある。

  • 1. 内容の精読と内部共有  
    まずはEIRの内容を正確に把握し、関係部門・担当者と情報を共有する。
  • 2. 指摘事項の分析とリスク評価  
    指摘事項の重要度、緊急度を評価し、リスクが高い項目から優先的に対応する計画を立案する。
  • 3. 是正措置(CAPA)の計画・実施  
    指摘された事項について、是正措置(CAPA:Corrective and Preventive Action)を策定・実行する。
  • 4. フォローアップ対応  
    必要に応じて、FDAへの改善報告や進捗報告を行い、継続的なコンプライアンス強化に努める。

6. おわりに:EIRへの適切な対応が企業の信頼を守る

EIRは単なる査察記録にとどまらず、FDAと企業との信頼関係を築くための出発点である。コンプライアンス遵守のためには、EIRを正確かつ迅速に理解し、必要な是正措置を実施することが重要である。EIRへの正しい対応が、企業の品質保証体制の強化と、国際的なビジネスの持続的な発展につながるであろう。

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