SSM(Site Selection Model)による査察対象選定

医薬品業界に携わる企業にとって、FDA(アメリカ食品医薬品局:Food and Drug Administration)による査察は避けて通れない重要なプロセスである。近年、FDAは査察対象を効率的かつ公正に選定するため、Site Selection Model(SSM)を活用している。本稿では、初心者にも分かりやすく、かつ専門性を保ったまま、SSMがどのような仕組みで査察対象となる企業を選定するのか解説する。

SSM(Site Selection Model)とは何か

SSMとは、FDAが査察を実施するべき製造施設(サイト)を特定・選定するために用いる統計的かつリスクベースのモデルである。すべての医薬品製造施設を同じ頻度で査察することは現実的ではなく、リスクの高い施設ほど優先順位を高くする必要がある。こうした背景から、SSMは客観的な基準に基づき、査察対象の最適化を図っている。

SSMの基本的な構成要素

SSMは主に以下のような要素で構成されている。

1. リスク評価指標

  • 製品のリスクプロファイル
    薬剤の剤型(無菌製剤、経口剤など)や適応疾患の重篤度、患者に与える影響などを基準として評価する。
  • 企業の査察履歴
    過去の査察で指摘されたGMP違反や是正状況を重視する。
  • 製造業者の規模と活動状態
    生産量や市場シェア、製造工程の複雑性も重要なポイントとなる。

2. データ収集と分析

SSMの基礎となるのは、FDA内部データベースや製造業者からの報告、国際的な情報共有(例:EMAなど欧州規制当局)である。集められた大量のデータを元に、アルゴリズムでリスクスコアを算出する。

SSMによる査察優先順位の決定プロセス

SSMは単なる「チェックリスト」ではなく、動的かつ総合的にリスクを評価する。以下のフローが一般的である。

  1. データ入力
    施設ごとのリスク関連情報を収集・整理。
  2. リスクスコアリング
    モデルによって各施設にリスクスコアを付与。
  3. 優先順位付け(Ranking)
    スコアの高い順に施設リストを作成し、優先的に査察計画を立てる。
  4. 担当官による調整
    モデルの結果だけに依存せず、担当官が現地の最新情報や特殊事情を加味して修正する場合もある。

Model Governanceと継続的改善

SSMは導入した時点で完成するものではない。製造現場や流通環境の変化、新しい医薬品技術の登場、国際協調の深化などを反映し、年々アップデートされる。アルゴリズムの妥当性を検証し、必要に応じてモデルパラメータや評価指標を見直す「ガバナンス」が重視されている。

SSMのメリットと今後の展望

SSMを用いることで、FDAによる査察の透明性・公平性が向上し、企業側にとっても予見性が高まる。今後はAIや機械学習の活用も視野に入り、ますます精度の高いリスク評価が期待される。業界関係者は、SSMを正しく理解し、適切な品質マネジメント体制を構築することが求められる。

おわりに

SSMは、FDA査察の対象選定プロセスに科学的根拠と客観性をもたらしている。本コラムが、医薬品業界の初心者と現場担当者にSSMの全体像と重要性を理解してもらう一助となれば幸いである。

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