
根本的原因(Root Cause)の特定方法
はじめに~「なぜなぜ分析」から始まる問題解決
製造現場やソフトウェア開発、医療、サービス業など、さまざまな業界で「不適合」や「問題」が発生することは避けて通れない。その際につい目先の解決策に頼りがちであるが、真に再発防止や持続的改善を達成するには、表面的な原因ではなく「根本的原因(Root Cause)」を的確に見極め、対策を講じることが不可欠である。本稿では、初心者にも分かり易く、かつ専門性をもって根本的原因の特定法を解説する。
表層的原因と根本的原因の違い
不適合や問題が発生した場合、人はしばしば「操作ミス」「手順書の未確認」「部品の不良」といった“目に見える原因”に注目しがちである。こうした表層的原因(Superficial Cause)は、たしかに現象を直接引き起こした要素であるが、それだけに対策を施しても、同様の不適合が時間を置いて再発する危険性が高い。
一方、根本的原因(Root Cause)は、表層的原因そのものがなぜ発生したのかという“さらに奥にある本質的な要因”である。たとえば「操作ミス」が起きた背後には、「マニュアルが現場に合っていない」「教育訓練が不十分」「作業スペースが狭く本来の作業手順が守れなかった」といった深い構造的課題が潜んでいることが多い。
根本的原因を特定するための基本手法
1. なぜなぜ分析(5 Whys)
最もシンプルかつ有効な手法が「なぜなぜ分析(5 Whys)」である。不適合や現象について「なぜ発生したのか?」を繰り返し掘り下げて問うことで、表層的原因から根本的原因へと到達することができる。一般的に5回程度“なぜ”を繰り返すと本質に近づくと言われているが、回数はあくまで目安であり、深堀が十分であればそれにこだわる必要はない。
なぜなぜ分析の実践例
不適合:出荷品に傷があった
- なぜ? —— 検品で傷を検出できなかった
- なぜ? —— 検品手順が分かりづらかった
- なぜ? —— 手順書が旧版のままだった
- なぜ? —— 手順書の更新体制が確立されていなかった
- なぜ? —— 文書管理の重要性が共有されていなかった
ここまで掘り下げて初めて、対策すべきは検品者個人だけでなく、組織全体の仕組みであることが分かる。
2. 特性要因図(フィッシュボーン・ダイアグラム)
因果関係を可視化したい場合、「特性要因図」(フィッシュボーン・ダイアグラム)が有効である。現象(不適合)を魚の頭、その要因を骨として分類(例えば「人」「機械」「方法」「材料」「環境」「測定」など)し、複数の要素を漏れなく洗い出す。そのうえで、各要因の深堀を行い、真の原因候補を浮かび上がらせる。
3. データと現場現物重視のアプローチ
推定や印象だけで分析を進めるのではなく、現場での観察(Go & See)、関連データや記録の照合が不可欠である。形式的な質問や会議室での議論にとどまらず、実際の現象が起きた現場に足を運び、事実を直接確認することで、見落としや推測の誤りを防ぐことができる。
根本的原因を活かす問題解決:効果的な対策へ
原因分析が根本的原因まで到達したら、実行する対策もまたその根本に働きかける内容でなければならない。例えば、「手順書の旧版利用」という表層的な問題に「注意喚起の掲示」を加えても本質的な解決にはならず、文書管理システムの改善や、組織全体への周知徹底といった再発防止策が必要である。対策が根本に届いているか再評価し、必要なら別の観点で分析をやり直す粘り強さが求められる。
まとめ
根本的原因の特定は、単なる現象の“応急処置”とは異なり、組織力の底上げや継続的改善への礎となる。なぜなぜ分析や特性要因図の活用、現場重視の姿勢を持ち、表層的原因と根本的原因を峻別することで、真の再発防止と付加価値の高い業務運営が可能となる。不適合発生時の原因分析は、単なる追及でなく、発展のチャンスであると捉え、組織として主体的に取り組みたい。
