
Compliance Programとは何か
FDA査察の根拠となるCompliance Programとその活用
1. はじめに――コンプライアンス・プログラムの重要性
医薬品や医療機器などの分野では、規制当局による査察が不可欠である。中でもアメリカ食品医薬品局(FDA)の査察は国際的にも大きな影響力を持つ。この査察の実施において根拠となるのが「Compliance Program(CP)」である。本稿では、Compliance Programの詳細や、査察官がどのような基準で査察を実施するのかを初心者にも分かり易く、専門性を維持した形で解説する。
2. Compliance Programの概要
Compliance Program(以下、CP)とは、FDAが査察や監督活動を計画・実施する際の詳細なガイダンス文書である。CPは、査察官が査察対象となる施設や製品の具体的な検査方法、評価基準、指摘事項の判断材料を提供する目的で作成されている。CPは一般にFDAのウェブサイトで公開されており、誰でも閲覧可能である。
CPは薬事法規(FD&C法など)の該当条項を遵守しているかどうかを判定するための実践的なツールとなっている。これには医薬品の製造業者にとっても、査察準備や自己点検、是正活動の重要な参考資料となる。
3. Compliance Programの構成と内容
CPの構成は標準化されており、通常以下のような要素で構成されている。
- 対象の目的と範囲(Objectives and Coverage)
どの法令やガイドラインに基づく査察か、どのような業種・対象品目に適用されるかが明記されている。 - 背景(Background)
査察実施に至る背景や過去の事例、リスク要因などが記載される。 - 査察手順(Inspectional Procedures)
査察官が現場で確認すべき事項や、書類・記録の具体的な査察方法が詳細に記載されている。 - 報告およびフォローアップ手順
査察後の報告作成方法や、不適合事項への対応手順がまとめられている。
CPはこのように、査察の現場で使われる実践的かつ体系的な指針である。
4. 査察官が遵守する基準と査察の進め方
査察官はCPに従い、事前に査察対象の情報を精査した上で現場に臨む。CPに記載された「査察手順」に基づき、施設の構造、品質管理システム、人員の教育状況、帳票管理など多岐に渡るポイントを逐一チェックする。
特に指摘の根拠となるのはCP内で強調されている「重点項目(Focus Points)」である。ここでは、過去の査察で問題となった箇所や、規制要件上のキーポイントが明記されている。査察官はこれらの基準に基づき、客観的かつ一貫性を持った判断を下すことが求められる。
査察途中に確認された疑義事項や不適合事項については、CPに基づき所定の手順で工場責任者へ指摘し、必要に応じて追加の資料や説明を求める。
5. Compliance Programの実務的な利用方法
医薬品製造業者や医療機器メーカーは、自社の品質管理体制や業務プロセスがCPの要求基準に適合するか事前に自己点検を行うことができる。CPのガイダンスに沿って、必要な記録・証拠書類を準備したり、改善すべき点を洗い出しておくことで、査察時の指摘リスクを低減できる。
さらにCPを理解することで、査察官とのコミュニケーションも円滑になり、査察の目的や意図を正確に把握した対応が可能となる。—
6. まとめ――CP理解の意義
Compliance Programは、FDA査察の現場における典拠であり、査察の質と透明性を担保する重要なツールである。査察官だけでなく、企業側もCPを理解し運用することで、コンプライアンス向上や品質保証体制の強化につなげることができる。規制当局との建設的な関係を築くためにも、CPの内容を的確に把握し、実務に活かしていくことが推奨される。

