イーコンプライアンスでは、EDCを利用した治験の品質保証と規制当局の懸念に対応するためのコンサルテーションを実施しています。
臨床試験では、これまで「紙」の症例報告書を用いて臨床試験データを取得していましたが、最近では電子的にデータを取得する方法としてElectronic Data Capture(EDC)が普及しつつあります。
日本製薬工業協会から、2007年11月1日付けで自主ガイダンス「臨床試験データの電子的取得に関するガイダンス」が公開されました。
しかしながら規制当局は、EDCの安易な運用により今後のEDC推進に悪影響を及ぼさないように慎重に経験を積んで進めていくよう、要請をしています。
EDCを利用することによって、症例報告書(CRF)を電子化し、電子CRFを原本とすることができますが、規制当局が持つ多くの懸念を払拭しなければ、電子CRFの原本化はリスクとなります。
また現在、多くのベンダーがEDCシステムを提供していますが、どのベンダーおよびシステムを選ぶべきでしょうか。
さらにCROや中央検査機関に関しても、臨床試験データを電子的に取得する際には、相応の対応が求められます。
臨床試験開始前に、CROや中央検査機関に対してどのような監査を行うべきか、どのようなCROや中央検査機関を選択するべきか、またどのような契約を締結するべきでしょうか。
EDCを利用した臨床試験の品質および品質保証を行うためには、これまでの紙ベースの手順書以外に、多くの手順書の作成・改訂が伴います。
イーコンプライアンスでは、EDCを利用する際に必要な知識とリスク、EDCを利用した臨床試験の手順書作成方法、ベンダー、CRO、中央検査機関の選び方と契約、またEDCを利用する際に必要な厚労省ER/ES指針対応や、ガイダンスの対応方法をコンサルテーションします。
さらに規制当局から指摘を受けないために実施しなければならない事項を解説します。
手順書に関しては、実際のサンプルをご提供し解説をいたします。
- EDCを利用した臨床試験の手順書(SOP)の作成コンサルテーション
- 臨床試験データの電子的取得に関するガイダンス対応手順書(SOP)の作成コンサルテーション
- EDCベンダー選択支援コンサルテーション
- CRO、中央検査機関等の監査実施支援コンサルテーション
- EDC利用に関する各種助言コンサルテーション
- EDC利用における規制当局の懸念解説
- EDCを利用するためのリスクと対応課題の解説
- 規制当局から指摘を受けないために実施しなければならない事項の解説
- 査察対応のためにしておかなければならない事項の解説
- 電子CRFを原本とできるための条件の解説
- CRO、中央検査機関等との契約の留意事項の解説
規制当局の懸念とは
日本製薬工業協会 医薬品評価委員会
「臨床試験データの電子的取得に関するガイダンス」説明会(2007.12.21)
医薬品医療機器総合機構 新薬審査第2部 井本昌克 氏 講演
- データ改ざん等が効率的かつ大規模になるおそれ
- EDCを利用した試験成績が受け入れ可能か不明
- 国内でのEDCに関する体制・制度が十分に整備されていない現状において、EDCを推進することは、開発者(製薬企業)にとって大きなリスクとなる。
- 経験の蓄積と慎重な対応によりEDCを推進すること
- 規制当局の経験不足
- 電子化することで、関係者の倫理道徳観の欠如等により、不適切な運用が意外に容易に実施され、結果として大きな問題となる恐れが潜んでいる。
- IDやパスワードの管理の徹底
- 安易な代替行為の禁止(誰かの代わりに入力等)
- EDCの安易な運用により、今後のEDC推進に悪影響を及ぼさないように、慎重に経験を積んで進めていってほしい。
- どのようなシステムも運用する者の考え次第!
EDCを利用する上でのリスク
- 規制当局の不作為と経験不足
- 規制当局からのEDCに関する通知が出されていない
- 査察事例がない
- 5年先の査察時には、その時点の基準で過去の記録を調査
- 各国の規制要件の違い(グローバル治験実施時)
- EDCベンダーおよびASPプロバイダーの品質
- 製薬業界・当局の基準を満たすバリデーションが実施可能か?
- 将来にわたって生き残るシステムか?
査察に関するリスク
- CRFの電子原本を否認されるリスク
- 電子記録・電子署名を利用したために、ER/ES指針違反により申請却下となるリスク(紙ではありえない)
- 医療機関での査察が不合格になるリスク
CRFを電子原本とするために実施すべき事項(製薬企業)
- 全社をあげて厚労省ER/ES指針に対応すること
- 厚労省ER/ES指針対応文書(ポリシー、SOP等)の作成
- 従業員教育の徹底
- 最低限、製薬協自主ガイダンスには完全対応すること
- ガイダンスで必要とされる文書の作成
- 治験関係者(責任医師・分担医師・CRC)・従業員教育の徹底
- モニタリングの徹底
- セキュリティ、監査証跡の管理の徹底
- 医療機関、CRO、ベンダー、中央検査機関等を監査すること
CRFを電子原本とするために実施すべき事項(製薬企業)
- 使用するシステムのバリデーションの実施と記録作成
- EDCシステムのバリデーションの実施と記録作成
- スタディ毎のバリデーションの実施と記録作成
- CROが使用するシステムのバリデーションの実施と記録作成
- 中央検査機関が使用するシステムのバリデーションの実施と記録作成
- 当該システムを使用するための標準業務手順書を整備すること
- データのセキュリティ・システムを保持すること
- データのバックアップを適切に行うこと
- データの修正を行う権限を与えられた者の名簿を作成し、管理すること
症例報告書の電子化に関する省令、通知、ガイドライン
臨床試験データの電子的取得に関するガイダンスとは
- 臨床試験データを電子的に取得する際に最低限注意すべき事項について、業界の有識者が中心となって策定したもの
現在、EDCに取り組んでいるリーディンググループのノウハウが盛り込まれたもの - 厚労省ER/ES指針をEDCで具現化するために、特に注意すべき点をより具体的に検討されたもの
- CRFをペーパーレス化できる要件を定義(電子CRFを原本とできる)
- ASPを利用した形態でのガイダンス
- 電子CRF原本の唯一性を要求
- 現時点で、EDCに特化した規制当局による通知等は未整備
- 試行錯誤の途上にあり、今後、詳細な要件が検討されるべき
臨床試験データの電子的取得に関するガイダンス 目次
背景目的対象範囲臨床試験データを電子的に取得するための要件 4.1. 実施医療機関で入力されるデータについての要件 4.1.1. 電磁的記録の真正性に関する要件 4.1.2. 電磁的記録の見読性に関する要件 4.1.3. 電磁的記録の保存性に関する要件 4.2. 中央検査機関から電子的に入手するデータについての要件 4.2.1. 真正性 4.2.2. 見読性 4.2.3. 保存性 症例報告書以外の周辺情報に関する留意点 5.1. クエリー情報 5.2. 導出データ用語の定義 |
臨床試験データの電子的取得に関するガイダンス 対応課題
契約およびプロトコール
- 電子症例報告書原本は、EDCシステム稼動中及びEDC サーバーからのデータ移管後の各段階で、予め定義・特定されていなければならない
※ 時系列的に「電子症例報告書原本」をプロトコール(またはSOP)で定義しておくこと
CSV
- 当該システムで作成された資料を保存する必要のある期間、当該EDCシステムに適用されているCSVポリシー及びプロセスを説明でき、かつCSV報告書等必要な資料を用意できるようにしておくこと
- 監査証跡は何人も改変することができない記録である。
- 監査証跡確認手順書の作成
- 規制当局及び治験責任医師が監査証跡をディスプレイ画面等で確認できなければならない
ベンダーおよびCRO
- ベンダー、CROに委託した業務の品質に対しても依頼者が保証する責任がある
- ベンダーオーディットを実施しておくこと
- 製薬協ガイダンスチェックリストの作成
- GAP分析の実施と改善実施
- 真正性の確保 = 機能要件(Security + Audit Trail)+運用要件
- ガイダンスの機能要件は事前(ASP契約前)にチェックしておくこと
- CSVを徹底し、ガイダンスの要件を検証しておくこと
- インターネットの複数サーバーを経由している途中で、データを盗み見られたり、差し替えられないように、SSL(セキュア・ソケット・レイヤー)や、VPN(仮想プライベートネットワーク )のような暗号化通信技術の利用が必須
治験責任医師等
- 治験責任医師、分担医師、治験協力者への教育訓練(周知徹底)の実施(操作説明ではなく、ERES等規制要件の教育)
- 特にパスワードの取扱いについて
- セキュリティを侵害するような事態の報告義務等
- 教育研修の実施をモニタリング報告書等で記録
- 関係者(治験責任医師、分担医師、治験協力者など)への電子署名に関わる教育を実施し、記録(モニタリング報告)を残すこと。
- パスワード等の厳重な管理、モニタリングの徹底
- 本人確認は機能要件(バイオメトリックス等)または運用要件の併用
- アカウント管理表の随時更新
- アカウント管理表は、署名・印影一覧表に相当する
医療機関
- 記録媒体を介して実施医療機関内の一部の電子データを取り込む場合、受け渡されるデータの信頼性・品質保証に関する責任範囲を契約等に明示し、またデータの信頼性を確認するなど品質の確保を図る
契約等で合意された品質管理に関する事項が実施医療機関において遵守されていることを確認すること- 提供されるデータを点検し、品質に問題がないか確認すること
- 医療機関に電子症例報告書(写)を電子的にCD-Rで提供すること
- 電子症例報告書(写)の見読性、保存性を担保すること
- 医療機関に対し、保存性確保のための手順書(取り扱い方、保存環境等)を交付
- 規制当局が調査できるためには、ドライブと当該バージョンを読み出せるソフトウェアが医療機関に必要
中央検査機関
- 治験依頼者は、この中央検査機関から報告された検査結果に基づいて治験責任医師等が臨床的判断を行い、被験者の安全を確保し、治験における評価に検査所見を反映することを保証する必要がある
- 中央検査機関で測定されたデータであっても、治験責任医師等が正確なデータであることを確認した上で臨床的判断を行ったことを保証する必要があり、検査結果と臨床的判断のデータはこれらの関連も含め、併せてその真正性を担保する必要がある
- 治験依頼者が実施医療機関を経由せず、中央検査機関から直接検査データを入手し、治験依頼者のサーバー又はEDC サーバー等に取り込む場合、当該データと中央検査機関から実施医療機関に報告されたデータとの同一性を保証する一義的責任は治験依頼者にある
- 治験依頼者は中央検査機関との契約等により、実施医療機関に報告されたデータと治験依頼者が直接中央検査機関から入手したデータの同一性を担保する方策を講じる必要がある
- 受け渡される電子データの品質に関する責任範囲、データの信頼性を確保するために、中央検査機関が遵守すべき事項を契約等文書により取り決める。
- 検査結果の正確性及び実施医療機関に送付される検査報告書と治験依頼者に送付される電子データが一致することを、中央検査機関が保証する
- 中央検査機関における電子データの受け渡し方法の手順及び責任範囲を取り決める
- 治験実施計画書等に実施医療機関、中央検査機関及び治験依頼者の間の検査データの報告手順、入力方法等を定義しておく
- 治験依頼者におけるデータの受け入れ・確認方法、データの取り込み・確認方法についての作業手順書を事前に作成する
- 治験依頼者、中央検査機関ともに手順どおり作業を実施したことが記録によって確認できる
- 原資料である実施医療機関に保存される検査報告書と治験依頼者に受け渡される電子データが同一であることを確認する
- SDVによって患者ID、日付等を確認し、他の原資料との整合性を確認する
- 治験責任医師等が検査結果に基づき臨床的判断を行い、被験者の安全を確保し、治験における評価に検査所見を反映していることを各種記録により確認する
- 検査結果に変更があった場合、モニターは、治験責任医師等が確定された検査結果を元に評価を行い、入力データに反映されていることを各種記録により確認する
- 中央検査機関において、各種手順書が整備されていること、及びこれらに基づき全ての作業が実施されていることを記録に基づき確認する
ガイダンス対応課題(製薬企業)
タスク | 作成文書 | 備 考 |
---|---|---|
厚労省ER/ES指針対応文書の作成 | 厚労省ER/ES指針対応ポリシー | 指針に対応するための、会社としての方針を記載する。 |
厚労省ER/ES指針対応役割と責任 | 対応のための組織、役割とそれぞれの果たすべきアクティビティ(責任)を記載する。 | |
厚労省ER/ES指針対応ガイドライン | 指針を遵守するための具体的事項を記載。教育にも利用する。 | |
チェックリスト | 既存システム、新規システムに関するGAPを分析するためのツール | |
EDCの選定 | ベンダーオーディット(EDCベンダー) | |
ベンダーオーディット(開発サイト) | ||
ベンダーオーディット(データセンター) | ||
EDCのCSV実施 | CSV記録(EDC本体) | ASP利用の場合は、ベンダーオーディットで代用 |
CSV記録(ライブラリー) | ロジカルチェック | |
CSV記録(スタディ毎) | 入力画面、帳票、DB | |
CSVポリシーの作成 | CSVポリシー | (4.1) |
CSV報告書の作成 | CSV成果物 | (4.1) |
ユーザ管理と権限設定が、事前に設定した規則の作成 | システムアクセス計画書 | (4.1.1) |
契約書への追記 | 契約書等 | (4.1.1. 1)記録媒体を介して実施医療機関内の一部の電子データを取り込む場合、受け渡されるデータの品質保証に関する責任範囲 |
プロトコール(または手順書)への記載 | プロトコールまたは手順書 | ・電子症例報告書原本を時系列的に予め定義・特定する(4.1) ・電子症例報告書が原資料となるデータの特定(4.1.1. 3) |
運用手順通りのプロセスが実施されたことを保証する | システムアクセス計画書 | (4.1.1. 3)システムでの入力制御を運用手順で補完する場合は、予め定められた運用手順通りのプロセスが実施されたことを保証 |
手順書の作成 | 電子症例報告書が原資料となるデータの作成、修正の方法等について説明する文書 | (4.1.1. 3) |
バックアップ・リカバリー手順書 | ASPの場合はベンダー資料で代用 | |
電磁的記録の維持方法に関する手順書 | (4.1.3.1) | |
監査証跡確認手順書 | ||
規則の作成・運用 | ユーザ管理と権限設定の規則 | (4.1.1) |
アカウント管理表 | (4.1.1. 3)署名・印影一覧表に相当するもの | |
電子署名に関わるアカウント管理規則 | (4.1.1. 4)ID、パスワードの取扱い | |
チェックリストの作成 | 製薬協ガイダンスチェックリスト | ベンダーに送付し回答を得ておく |
監査 | ベンダーオーディット | DM部門にQA部門が同行 |
厚労省ER/ES指針対応文書 | ||
CSV実施記録 | ベース、ライブラリー、スタディ | |
モニタリング報告書 |
関連法令、レギュレーション
- 「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(厚生省令第28号) 平成9年3月27日
- 「電子署名及び認証業務に関する法律」 平成12年5月31日 法律第102号
- 「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」平成16年 法律第149号
- 「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の一部改正(医薬品GCPの一部改正)」 (厚生労働省令第172号)平成16年12月21日
- 「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」(厚生労働省令第44号)平成17年3月25日
- 「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について」(薬食発第0401022号) 厚生労働省医薬食品局長 平成17年4月1日
- 「医薬品の臨床試験の実施の基準の運用について」 (薬食審査発第0921001号) 厚生労働省医薬食品局審査管理課長 平成18年9月21日
- 「Title 21 of the Code of Federal Registers Part 11, “Electronic Records; Electronic Signatures”」 FDA 1997.8.20
- 「Guidance for Industry; Computerized Systems used in Clinical Trials」 FDA 1999.5
- 「General Principles of Software Validation; Final Guidance for Industry and FDA Staff」 FDA 2002.1.11
- 「Guidance for Industry Part 11, Electronic Records; Electronic Signatures – Scope and Application」 FDA 2003.9. 5
主なEDCシステム
会社名 | 製品名 |
---|---|
Phase Forward | InForm |
Medidata Solution | Rave |
DATATRAK | eClinical |
Oracle | Oracle Clinical RDC |
DSG | eCaselink |
OmniComm | TrialMaster |
eTrials | eTrials EDC |
DataLabs | Datalabs Clinical |
Phoenix Data Systems | PDS Express |
NexTrials | Prism |
Ninaza | Ninaza EDC |
Lifetree | Lifetree ICTM |
eClinics Solutions | eClinics Solutions |
maaguzi | maaguzi |
※製品名は各社の商標です。