内部監査とSelf Inspectionの違い

はじめに  

医薬品や医療機器の製造管理・品質管理においては、組織が自らの製品やサービスの品質を高めるために様々な評価手法を活用している。その中でもよく耳にするのが、「内部監査」と「Self Inspection(自己点検)」である。これらは一見類似しているように思われるが、日本の「自己点検」と国際的な「Self Inspection」では、その位置づけや実施方法に違いがある。本稿では、両者の考え方の違いを解説するとともに、真に意味のある品質システム評価の重要性について述べる。

内部監査とは

内部監査とは、品質マネジメントシステム(QMS)やGMP(Good Manufacturing Practice)などの遵守状況を、組織の内部で定期的に検証する活動である。一般的には、品質保証部門など第三者的な立場の部門が監査を実施し、手順・記録・工程の適合性や有効性を点検する。監査結果は経営層にも報告され、是正措置や予防措置といった組織改善につながる。内部監査は、ISOやGMP省令など各種規格・法規で必須の活動とされている。

日本の「自己点検」の特徴

日本独自の「自己点検(Self-Inspection)」は、GMP省令第18条に定められた医薬品製造所が自ら実施する点検活動である。その多くは、各部門の担当者が自部署の手順や作業環境について定期的にチェックリスト等を用いて確認する運用が主流となっている。部門ごとの自己評価に重きを置いている点が特徴であり、不適合の抽出よりも遵守状況の確認に重点が置かれる場合が多い。なお、2021年8月のGMP省令改正により、品質保証に係る業務を担当する組織への報告が明確化されるなど、国際整合性の向上が図られている。

国際的な「Self Inspection」の要求事項

国際的なGMP基準における「Self Inspection」の位置づけは規制により異なる。EU GMP第9章、PIC/Sガイドライン、WHO GMP、ASEAN GMPでは、Self Inspectionが明確に要求されており、独立性のある担当者による詳細な検査が求められている。これらの規制では、自社のQMSを第三者的な視点で客観的かつ徹底的に評価し、プロセス改善に結びつく具体的な推奨事項の提示、徹底したフォローアップなど、品質保証部門主導で全体を俯瞰した点検を実施することが期待されている。
一方、米国FDAのcGMP(21 CFR Part 211)には、Self Inspectionの明確な要求事項は含まれていない。しかし、FDAは規制遵守を確保し品質システムを改善するための価値あるツールとしてSelf Inspectionを認識しており、業界では品質保証の重要な活動として広く実施されている。

形骸化しない品質システム評価の重要性

日本の現場では、「チェックリストを埋める」「形式上の点検を実施する」といった内容にとどまり、重大な問題やリスクが見逃されるケースも散見される。一方、国際的なGMP基準が重視する「Self Inspection」は、組織が自主的に課題を抽出し、真摯に向き合い、継続的な改善を推進するための重要なツールである。換言すれば、「自己点検」そのものが目的化することなく、企業風土として品質文化を醸成し、現場・経営層が一体となり品質保証を追求する姿勢が求められる。

おわりに

「内部監査」と「Self Inspection」は、ともに品質システムを支える根幹であるが、その意義や実践のあり方には違いがある。特に国際規制が高度化する中で、日本の「自己点検」が意義ある品質システム評価となるためには、自らの慣習や形骸化にとらわれず、グローバルな視点で実効性のある監査体制を整備する必要がある。2021年のGMP省令改正による国際整合性の向上も踏まえ、真の「Self Inspection」を実践する姿勢こそ、持続的成長と信頼獲得につながるといえる。

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