医療機器申請における添付資料とSTED形式

医療機器申請における添付資料とSTED形式

医療機器業界における国際化の波は、申請プロセスにも大きな変革をもたらした。薬事法から薬機法(医薬品医療機器等法)への移行に伴い、「添付資料概要」が「添付資料」へと名称変更された。この変更は単なる呼称変更にとどまらず、国際標準への適合という大きな意味を持つものである。
平成27年1月20日付けの薬食機参発0120第9号参事官通知によって、この変更が公式に定められた。これは、国際的な規制の整合性向上、申請資料の標準化、審査プロセスの効率化という三つの目標を達成するための重要な取り組みの一環である。

STED形式とは

STED(Summary Technical Documentation)形式の導入は、医療機器申請における画期的な変革といえる。この形式は、医療機器規制国際整合化会議(GHTF)で合意され、世界標準の技術文書形式として認識されている。
STED形式による文書は、以下のように包括的で構造化された内容を含む。
品目の総括:申請品目の概要、開発経緯、類似医療機器との比較、外国での使用状況、安全性に関する規制当局の決定などを網羅。
基本要件への適合性:適合宣言、チェックリスト、参照規格一覧などを通じて、基本的な要件への適合状況を明確化。
機器に関する詳細情報:原材料、性能、安全性に関する規格、製造方法、品質管理方法など、技術的な情報を詳細に記述。
設計検証および妥当性確認文書:安全性や性能を裏付ける試験データ、必要に応じた臨床試験データを提示。
この構造により、医療機器の特性や適合性を体系的に説明することが可能となり、申請の透明性と効率性が向上する。

実務における重要な留意点

STED形式による文書作成においては、以下の点が重要である:
一貫性の維持:セクション間での記述の整合性、用語の統一、参照文書の適切な管理が求められる。
データの裏付け:性能や安全性を主張する場合、それを支持する試験データとの対応関係を明確に示す必要がある。
リスク管理との整合性:リスクマネジメントファイルと内容が一致していることが重要である。特に、特定されたリスクに対する安全策の明確化、残留リスクの評価根拠の提示が求められる。
申請区分に応じた対応
新医療機器では、開発経緯や技術的特徴の詳細な説明。
改良医療機器では、既存品との相違点の説明や変更の影響評価。
後発医療機器では、同等性や同質性を示すデータの提示。

高品質な添付資料作成のための実践的アプローチ

添付資料の品質を確保するためには、以下の実践が重要である。
文書管理体制の構築:版数や改訂履歴の管理、引用文献の明確な記載、定期的な内容の見直し。
内部レビューの実施:技術文書管理責任者による確認、内容の妥当性確認を通じて、文書の精度を向上させる。
これらの取り組みにより、審査がスムーズに進み、申請の成功率が高まる。

医療機器申請の未来

STED形式の導入は、医療機器申請の国際化における重要な一歩である。この形式により、日本の医療機器メーカーは国際市場への展開が容易になり、審査プロセスの効率化を通じて、革新的な製品を迅速に市場に投入することが可能となる。
申請実務に携わるすべての者にとって、これらの変更を正確に理解し、質の高い添付資料を作成することが、今後の成功の鍵となる。常に最新の規制動向を把握し、グローバル基準に適合した文書作成を心がけることが求められる。

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