
15分ルールとは何か
概要
FDA査察における「15分ルール」とは、査察官からの文書要求や質問に対して15分以内に対応を開始するという非公式な業界慣行である。これは法的な規定ではなく、FDAの公式ガイダンスにも明記されていないが、査察を円滑に進めるための実務上のガイドラインとして業界で広く認識されている。
ルールの実態
非公式な業界慣行としての位置づき
この「15分ルール」は
- 実際に明文化されているわけではない
- 業界の実務上のガイドラインとして機能
- 査察官の要求に対し15分以内に適切な資料等を提示しなければならないという暗黙のルールである
ルールの具体的内容
査察官が文書の提出や情報の提供を求めた際、企業側は
- 15分以内に何らかの対応を示す必要がある
- 文書をすぐに提供できない場合でも、「確認中である」「○時までにお渡しする」などの回答をする
- いつまでに資料を提示できるかを説明し、次の質問に移ってもらうよう要請する
- 15分以上査察官を待たせることは「査察妨害」と捉えられる可能性がある
FDAの公式見解との相違点
公式ガイダンスでの表現
FDAの公式ガイダンス「Circumstances that Constitute Delaying, Denying, Limiting, or Refusing a Drug or Device Inspection」(2024年6月改訂版)では
- 特定の「15分ルール」についての明記はない
- 「合理的な時間枠」という表現が使用されている
- 具体的な時間制限ではなく合理性を基準としている
合理的な説明が考慮される場合
以下のような合理的な説明がある場合は考慮される
- 記録の翻訳が必要
- 製造作業中で記録にアクセスできない
- 大量の記録で時間が必要
- 記録が遠隔地に保管されている
実務における重要性
査察対応への効果
15分ルールが非公式であっても、実務上は以下の重要性がある
- 査察官との信頼関係構築:迅速な対応は協力的な姿勢を示し、査察官との良好な関係を維持
- 査察の効率化:スムーズな情報提供により査察期間の短縮につながり、双方にメリット
- 組織的な対応能力の実証:規制遵守への真摯な取り組みを示すことができる
効果的な実践のための準備
- 文書・記録をすべて査察会場の近くに配置
- 各部署の担当者が即座に適切な文書・記録を見つけて届けられる体制
- 電子化された文書管理システムの構築
- 査察対応チームの明確な役割分担
- 事前の査察準備とシミュレーション
注意:他の「15日ルール」との混同を避ける
FDA査察後のForm 483への対応には「15営業日ルール」が存在する。これは査察後の指摘事項に対する回答期限であり、査察中の「15分ルール」とは全く別の規定である。
まとめ
重要なポイント
- 15分ルールは業界のベストプラクティスとして有効
- FDAの公式要求ではない
- あくまで業界が自主的に採用している実務慣行
- FDAは「合理的な時間枠」での対応を求めており、具体的な時間制限は設けていない
この15分ルールは査察成功のための有効な指針であるが、その非公式な性質と、FDAの公式見解との違いを正しく理解した上で活用することが重要である。
