ペストコントロールの目的
ペストコントロールの目的
筆者は仕事柄、製薬工場や医療機器製造所の監査を実施することがある。その際に必ずチェックするのはペストコントロールである。
ペストコントロールは、防虫防鼠のことである。筆者はこれに加えて防蟻を推奨している。
多くの企業では、ペストコントロール(防虫防鼠防蟻)の目的は、製造所内に昆虫や鼠などが侵入しないようにトラップを仕掛けておくことだと理解していると思われる。
しかしながら、ペストコントロールの目的はそれだけではないのである。
ペストコントロールにおいて重要なことは、常時モニタリングを実施し、捕獲した昆虫などから建屋の状況を診断することである。
例えば、通常は目の届かない場所において隙間や穴が空いていることがあるかも知れない。また排水溝などに食品の残渣があったり、汚れが溜まっているのかも知れない。白蟻が発生した場合は、建屋の柱が巣食っている可能性がある。さらにパレットなどと共に持ち込んでしまっているかも知れない。
筆者が経験した例としては、クリーンルームに鳥が侵入していた事例がある。驚きではあるが、これは排気口に穴が空いていたことが原因であった。
昆虫、鼠が建物へ侵入する原因には以下のものがある。
- 建物内に昆虫が発生している場合(内部発生型)
- 建物内に昆虫を誘引する場合(侵入型)
- 昆虫が付着して持ち込まれる場合(付着型)
- 鼠が建物内に侵入する場合
内部発生型においては、建物内に食品があったり、残渣として残っていたり、排水溝が十分に清掃されていなかった場合に、それらを餌として昆虫が発生する。内部発生する昆虫の特徴としては、同一の昆虫が多数見られたり、各生育段階の昆虫が見られることで判断できる。
侵入型においては、建物への誘引の原因は光によるもの、臭気によるもの、風向によるもの、暖気によるもの、建物の色によるもの等がある。それぞれの誘引原因によって対策は異なる。
付着型においては、資材および運搬用パレット等に紛れ込んで持ち込まれることがある。これが元となり内部発生する場合もある。
さらに鼠は主として建物の隙間、特に排水溝を介して侵入する。
侵入防止策
昆虫類、鼠の侵入防止のため、以下の方法を用いること。ちなみに、昆虫には飛行虫と歩行虫があり、それぞれトラップの種類が異なる。
- 二重ドア構造の採用(インターロック)
- インターロックタイプのものではない扉の開閉については、両側の扉を同時に開放しないこと。
- セミ・エアタイト・ドア、エアタイト・ドアの採用
- 隙間をなくす
- 外部に接した扉で内外の環境が異なる場合は、扉の隙間から昆虫類の侵入を防止するため、扉の外周を適切にコーキング等行うこと。
- ライトコントロール
(1) ガラス面への防虫フィルムの貼付
(2) 防虫シャッターの採用
(3) 防虫ライトの採用
(4) ライトトラップの設置
- 捕虫用トラップの設置
- 鼠族トラップの設置
- 網戸のメッシュサイズを20メッシュ以上にすること。
- 倉庫外に誘引灯等の光が漏れないようにすること。
- 入庫時に外側の清掃または外装を取り除ことや、チェックをすることで、付着による昆虫類の侵入を防ぐこと。
- 昆虫、鼠の作業室への侵入を防ぐため、扉の開閉、作業室への入室等については迅速に行うこと。
- 高速シートシャッターなどを取り入れ開放時間を最小限にする。
- 行政発信の異常発生の情報(クロバネキノコバエやカベアナタカラダニ等)にも注意すること。
- その他、気流のコントロール、清掃のしやすい構造(R構造、キャスター付き)など様々な対策がある。
モニタリングによって、構造設備の問題点や清掃が行き届いていない箇所(塵埃、結露、隙間など)などを把握し、生息・発生・侵入しやすい状況を作り出していないか客観的に検証すること。
昆虫相診断の目的は、製造所全体に可能な限り多くのサンプリングポイントを設けて、網羅的に調査を実施(広範囲にサンプリング)し、昆虫類の動態を把握することである。
新設・増設時に実施する。また季節変動把握のため年数回実施すること。
- 動態を把握する。
- 管理基準値を設定する。
- サンプリングポイントを決定する。
昆虫層診断によりモニタリング方法が決定された場合、定期的にモニタリングを実施すること。
定期モニタリングとは、昆虫動態の継続的な監視を目的として方法、サンプリングポイント、頻度などを定め、年間を通じて計画し、実施するものである。
定期モニタリング時のトラップ設置箇所は昆虫相診断の結果や、防虫業者と協議して決めることが望ましい。
特に異物混入のリスクが高い場所をモニタリングすること。
- 管理基準値以内であることを確認する。
- トレンドを把握する。
定期モニタリングまたは臨時モニタリングにおいて、管理基準値を逸脱した場合に逸脱エリア周辺で1週間程度実施し、問題箇所を特定する。
対策終了後は、定期モニタリングを継続する。
定期モニタリングにおいて、ブレイク時にブレイクエリア周辺で1週間程度実施し、侵入・生息虫類を把握する。
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