監査はなぜ必要か
監査はなぜ必要か
これまで、品質管理(QC)、品質保証(QA)について解説をしてきた。
今回は監査はなぜ必要かについて考察してみたい。
監査が必要な理由は下記の通りである。
1.人が作るものに全てが完全なものはない(必ず不完全な部分を含む)。
2.自分ではみつけられない部分がある。
3.人には弱い所があり、出来心も含めてよこしまな考えが頭をもたげることがある。
監査は第三者的に確認する作業であり品質保証に必須項目である。ただし、監査は欠陥をみつけるのが仕事ではない。欠陥がないことを確認するのが本来の業務である。
例えば、監査において転記ミスや計算ミスを発見したとしよう。その場合、どのような指摘をするのが妥当であろうか。
筆者なら「監査に至るまで転記ミスや計算ミスが放置されているということは、品質管理(QC)が徹底されておらず、また品質保証(QA)が機能していないといえる。従って、それらを改善し、再発を防止するよう該当するQMSを改訂すること。」と指摘する。
つまり、転記ミスや計算ミスといったエラーそのものを指摘するのではなく、それらが発見されず放置されたままになってしまう仕組み(QMS:品質マネジメントシステム)の欠陥を指摘するのである。
ひどいケースでは、監査報告書において、文章の「てにをは」のみを指摘している場合が見受けられるが、これでは本末転倒である。文書の書き方を修正したところで、品質保証にはならない。
もちろん、万が一欠陥がみつかればそれを指摘することはひつようである。
また、よこしまな考えに対しては抑止力の発現と万が一の場合は毅然とした態度で臨むことも必要である。
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監査担当者の要件
監査担当者は、被監査部門に対して利害関係のない第三者でなければならない。
例えば、当該プロジェクトが遅延しようが、コストがかさもうが知ったことではない!というのが第三者である。遅延したり、コストがかさむと自身も困るというのでは第三者ではない。
ただし、利害関係のない第三者とはいっても、同僚である。同僚を説得できない文書や記録で顧客や規制当局が説得できるはずがないではないか。
監査担当者は、物事を第三者的に観察し、ロジカルに矛盾点や問題点、課題点の抽出と原因究明および解決策の提示を行わなければならないのである。
つまり、監査担当者は社内コンサルタントでなければならない。
そのためには、監査担当者は当該業務の経験者でなければならない。経験したことのない業務に対して、QMSの欠陥を指摘したり、リスクを抽出することは不可能であるためである。
適合性と妥当性
ISO 9000 「品質マネジメントシステム-基礎と用語」において、適合性と妥当性という用語が定義されている。
適合性の確認とは、当該企業のQMSが規制要件や国際規格を遵守しているかどうかを調査することを指す。
妥当性の確認とは、適合性のあるQMSと実施記録が整合しているかどうかを調査することを指す。
FDAの査察では、適合性の確認に25%の時間、妥当性の確認に75%の時間を使用することとなっている。このようにFDA査察では、QMSの調査を実施してから記録の調査を実施する。つまりトップダウン査察が主流である。 それに対して、日本や欧州の監査の多くは、記録の調査に90%もの時間を当て、記録に疑義があった場合に当該QMSを確認するといったボトムアップ査察が主流である。