
SOPとは
SOPは、スタンダードオペレーションプロシージャの略である。日本語では標準業務手順書という。これは、野球でいうところのストライクゾーンにあたる。
筆者は長年製薬業界で各社のSOPを見てきたが、特に日本の企業では、SOP違反やSOPからの逸脱を嫌って、SOPを変更することがよく見られる。つまり、逸脱が起きないように、違反が起きないように、SOPを緩くしたり、あらゆる例外ケースを記載したりするのである。
しかし、SOPを頻繁に変更すると、ストライクゾーンが変わることになる。ストライクゾーンが頻繁に変更されるというのは問題である。昨日までのストライクゾーンが今日は変わっているとなれば、昨日までの業務は一体何だったのかということになる。
SOPに例外事項を含めてあらゆることを記載しようとする企業も多いが、ストライクゾーンを際限なく広げてしまうと何が起きるだろうか。どこを投げてもストライクになってしまう。ストライクゾーンが広すぎると、どこに投げてもストライクになり、コントロールの意味がなくなる。
したがって、SOPはある意味、狭めに設定しておき、その狭いストライクゾーンにいかに業務品質を収めるかということが大切である。
このような説明をすると、「例外が発生した時にSOP違反になってしまう」「逸脱になってしまう」と心配する人が多い。そのような場合には、正しい例外処理の方法を理解することが重要である。
もしSOPに例外処理等を含めて何でも記載するなら、それはSOPではない。筆者はよく揶揄して「これはSOPじゃないですね、OPですね」と言う。そこにスタンダード(標準)が記載されていないからである。
正しい例外処理の方法とは何か。例えば、バリデーションであれ製造であれサービスであれ、何かを実施しようとする際に計画を立てる。その計画書に「今回はSOPの通りできない」という状況がある場合、なぜSOPを遵守できないか、その理由を記載してQA担当者などの第三者にレビューしてもらい、合意を得ることが重要である。
ここで注意すべきことは、都度都合に合わせてSOP側を変更してはならないということである。SOPは、規制要件が変わったり業務形態が変わったり組織が変わらない限り、あまり変更すべきではない。むしろSOPは狭く記載しておいて、例外が発生しそうな場合は、QA担当者と協議する。
その場合になぜSOPを遵守できないか、遵守しなくても品質保証上問題ないかということの理由を記載する必要がある。その理由を英語で「ジャスティフィケーション(Justification)」という。正当化できる根拠という意味である。これが重要である。
ここで注意したいのは、これは言い訳ではないということである。「できない」という言い訳ではなく、なぜ今回はSOPを一部変更してどのような活動をするのかという、正当化できる根拠を作ることが重要である。
QA担当者がこのジャスティフィケーション(正当化できる根拠)に対して合意し、お墨付きを与えた上で、責任者が計画を承認するのが、正しい例外処理の方法である。もちろん例外は発生しないに越したことはないが、めったに起きない、または稀にしか起きないことに対して、SOPに全て記載してしまうことは適切ではない。
SOPはクオリティコントロールするために、ある程度狭さを持った標準を示すべきである。
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