2.1 薬機法(医薬品医療機器等法)の概要
医療機器を開発・製造・販売するスタートアップ企業にとって、日本の法規制体系を理解することは不可欠です。医療機器は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、旧薬事法)によって規制されています。
薬機法の目的と成り立ち
薬機法は、医薬品や医療機器等の品質、有効性および安全性を確保することを主な目的としています。2014年に薬事法から薬機法へと改称され、医療機器に特化した規制の整備が進められました。
薬機法の基本構造
薬機法における医療機器規制の基本構造は以下の通りです:
規制項目 | 内容 |
---|---|
製造販売業許可 | 医療機器を製造販売するために必要な許可(第一種〜第三種) |
製造業登録 | 医療機器を製造するために必要な登録 |
製品の分類と承認・認証・届出制度 | 医療機器のリスクに応じた分類と上市前の規制 |
QMS(品質マネジメントシステム) | 製造管理・品質管理の体制整備要件 |
GVP(製造販売後安全管理) | 市販後の安全管理体制の要件 |
薬機法における医療機器規制の特徴
医療機器規制には、以下のような医薬品とは異なる特徴があります:
- リスクに基づく分類と規制:医療機器はクラスⅠ〜Ⅳのリスク分類に基づき規制の厳しさが決定されます
- 認証制度の活用:基準が定められた医療機器は、PMDAではなく第三者認証機関による認証で市場導入が可能です
- QMS体制の柔軟性:医療機器のクラス分類に応じて要求されるQMS体制の厳格さが異なります
- ソフトウェア医療機器の扱い:SaMD(Software as Medical Device)など、ソフトウェア単体でも医療機器として規制されます
薬機法の主な規制対象
医療機器に関連する薬機法の主な規制対象は次の通りです:
- 製造販売業者:医療機器の設計から市販後までの責任を持つ事業者
- 製造業者:実際に医療機器を製造する事業者
- 販売業者/貸与業者:医療機器の販売や貸与を行う事業者
- 修理業者:医療機器の修理を行う事業者
スタートアップ企業が特に注意すべきポイント
- 製造販売業許可の取得:医療機器を市場に出すためには、製造販売業許可が必須です。許可取得には「三役」(総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者)の設置が必要です。
- QMS適合性調査:製品承認・認証取得に際して、QMS省令への適合性調査が必要です。ISO 13485認証を取得していると、一部の調査が省略される場合があります。
- 継続的な規制対応:薬機法は定期的に改正されるため、最新の法規制動向を常に把握する必要があります。
- 適合性証明の重要性:医療機器の基本要件基準への適合性を証明するための適切な技術文書の作成と保管が重要です。
改正薬機法(2019年改正、2020年9月施行)のポイント
2019年に改正された薬機法(2020年9月施行)では、医療機器に関して以下の重要な変更がありました:
- 医療機器等の特性に応じた承認制度の導入
- 医療機器の変更計画確認申請制度(PACMP)の導入
- 添付文書の電子化
- 課徴金制度の導入
- 法令遵守体制の整備