
QC、QA、監査の違い
前回は品質について明らかにしたので、次に品質管理(QC)、品質保証(QA)、監査について述べる。これらは品質を保証していく過程で非常に重要なプロセスであるが、この三つは明確に異なる役割と責任を持っている。これらの違いを正確に理解することが、効果的な品質マネジメントの基盤となる。
品質管理(Quality Control:QC)
最初に、品質管理(Quality Control)について考察する。
ここで一つの疑問がある。読者の組織では本当にコントロールしているだろうか。筆者が多くの製薬企業で監査やコンサルテーションを実施する中で、よく見受けられるのはチェックばかりが行われていることである。しかし、QCは単なる「チェック」ではなく、「管理」であることに注意が必要である。
なぜコントロールというのだろうか。これが最初に考えるべきことである。
コントロールとは、野球のピッチャーを想像すると分かりやすい。ピッチャーがストライクゾーンにめがけて投球し、その結果をみて次の投球を調整する。同様に、QCとは製品やプロセスを「測定」し、「評価」し、そして「調整」するという一連の活動である。つまり、単にチェックして問題を発見するだけでなく、継続的に改善していくためのPDCAサイクルを回す活動全体を指す。
QCの特徴は以下の通りである。

QCは自己点検に代表されるように、自ら品質を管理する活動である。したがって、QCは他者にやってもらうというのは本来の姿ではない。自らが自らの作業をきちんと管理する必要がある。
品質保証(Quality Assurance:QA)
次に、QAはQuality Assuranceの略である。
このアシュアランス(Assurance)とは一体何だろうか。非常に重要かつ包括的な概念である。QAは「製品やサービスが所定の品質基準を満たしていることを保証する体系的な活動」であり、製品の企画段階から販売後のアフターフォローまで、長期的・全体的な視点で品質保証体制を構築・運用するものである。
QAの特徴は以下の通りである

QA担当者は必ずしも別部門である必要はない。QAはむしろ当該プロセスに深く関与して品質を保証しながら業務を継続するものである。自らの業務を自らがコントロールし品質を管理し、自らが保証するというのはある意味当然のことである。したがって品質保証は当該部門に所属している者でも構わない。自らがその品質を保証することは非常に良いことである。
ただし、QAはQCよりも広い視野で、より体系的・組織的に品質を確保するための活動であり、多くの場合、QAの中にQCが内包される形になっている。
監査(Audit)
最後に監査(Audit)について述べる。もう一つわかりづらいのが、品質保証(QA)と監査の違いである。品質を保証するということと、監査をするということは一体何が違うのだろうか。
監査は「品質管理や品質保証のプロセス・システムが適切に機能しているかを、独立した立場で抜き取り的に調査・評価する活動」である。重要なポイントは、監査は独立した部門が定期的または不定期に、プロセスや成果物を抜き取りで調査することである。
監査の特徴は以下の通りである。

注意すべきことは、QCもQAも非監査部門であるということである。監査はQC部門に対しても実施するし、品質保証部門に対しても実施するものである。多くの企業で誤解されていることは、品質保証部門が監査部門であり、それ以外の部門が被監査部門であるという考え方である。これは誤りである。
QCとQA、そして監査の大きな違いは、QAはオンゴーイング(継続的)で実施するが、監査は事後的な評価であるという点である。監査で問題が発見された時点ではもう手遅れである可能性もある。
よく「監査に合格すれば品質保証がされている」と考える人もいる。そのため「監査に合格したから我々の責任は終わった」と言う人もいるが、決してそうではない。
もう一つ誤解されているのは、監査は品質保証だと思っている関係者がいることである。しかし実際はそうではない。前述したように、監査は抜き取りであり、すべてをチェックするわけではない。QCやQAのように全てに対して網羅的にチェックをするわけではないのである。したがって、監査をしたイコール品質が保証されたということではない。
監査は品質保証活動の一部ではあるが、全てではないということに注意が必要である。
QC、QA、監査の総合比較
以下に、QC、QA、監査の主な違いをまとめる。

これらの三つの概念を正確に理解し、適切に運用することが品質マネジメントシステムの効果的な構築と運用には不可欠である。QC、QA、監査はそれぞれが品質確保のための重要な役割を担っており、その違いを認識した上で、相互に連携していくことが重要である。