適合性評価(Qualification)とは

適合性の本質

あり得ないことではあるが、手術をする際にメスがなかったとしよう。近所の高級刃物店で最高級のナイフを買ってきたとする。最高級のナイフであるから品質はよいに決まっている。ここで考えるべき点がある。この最高級な品質のとてもよいナイフは手術に適しているかというと、とてもではないが、このようなナイフでは手術ができない。
これはなぜかというと、手術をする目的に対してこのナイフは適合していないからである。適用しない。たとえそのナイフ自体の品質がよいと思っても、当該の業務に対して品質が良いということではない。
このように、ヘルスケア産業は必ず目的、ユーザーの要求に対して、使用するものや製造する製品の仕様が、ちゃんと合致していなければならない。英語では「Fitness for Purpose」という。目的にちゃんと合ったものを使うこと、目的にちゃんと合わせることが大事である。

適合性の重要性

もう一つの例を挙げよう。家庭でプラスのネジを締めたいとする。しかし、プラスドライバーが見当たらない。よくあることだが、プラスネジはマイナスドライバーでも締めることができる。しかし、これは少し考えてみる必要がある。そもそもプラスネジに対してマイナスドライバーは適合していない。適合していないものでネジを締め続けると、いずれネジ穴が潰れてしまう。これを何度も繰り返せばドライバー自体が破損してしまう可能性がある。これにより事故が起きてしまうことになる。
例えば医薬品の製造に例えると、蒸気で試験管を洗うときに、口径がやや大きいまたは小さい蒸気で洗ってしまうと試験管が割れてしまう。このように、製造しようとしている製品の要求に製造設備の仕様が合っていないと事故が起きる。したがって、繰り返し述べている通り、要求に対して装置システムの仕様を合わせることが極めて重要である。

バリデーションとは

それが確かに合っていることを保証する活動のことをバリデーションという。ユーザーの要求に対して、装置やシステム、プロセス業務がちゃんと合っていることを確認する作業のことをバリデーションと言う。日本語では「妥当性の確認」と呼ぶ。

リスクと品質保証レベルの関係

別の例を考えよう。棒切れが1本あるとする。この棒切れを何に使うかによってリスクが異なる。例えばこの棒切れをアイスキャンディーの棒に使うとリスクはそれほど高くない。一方でこの棒切れを内視鏡に使うという応用になると、人体に直接接触するためリスクが高くなる。
言い換えると、使用目的によってリスクが大きく変わり、品質保証のレベルも変わってくる。わかりやすく言うと、製造販売される医薬品がビタミン剤や栄養剤、胃腸薬であればリスクはそれほど高くない。同じ製造所で同じ構造設備で製造しても、リスクはそれほど高くないので、品質保証のレベルはそこそこで済むかもしれない。
一方で同じ構造設備、同じ製剤する装置で製造した医薬品でも、抗がん剤、抗ウイルス薬、向精神薬、血液製剤、ワクチンなどは非常に患者に対する健康被害のリスクが高い。そのような場合はそれなりの品質保証をしなければならない。

まとめ

前述したように、製品そのものを要求に合わせること、そして製造プロセスや製造に使う装置を要求に合わせることも重要だが、もう一つ重要なことは、それがどのような領域の、どのような疾患に対する医薬品であるかによっても、リスクが異なり、品質保証のレベル、品質管理のレベルも変わってくる。
品質とは一体どのようなものかというと、品質とはまず顧客の対価に対する要求基準であること、そして品質が良いというのは顧客の要求を満たした状態であることが挙げられる。逆に言うと、製造者側、医薬品メーカー側がしなければならないことは、ユーザーの要求に合わせた製品を継続的に同じ仕様で、同じ品質で製造し、供給し続けることである。

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