
GMP三原則は誰が言い出したのか
GMPの定義と三原則
GMP(Good Manufacturing Practice)は、医薬品や食品などの製造において、品質管理と製造管理に関する基準を定めたものである。
GMP三原則は、GMPを現場で実践する際の基本的な考え方を集約したものであり、日本のGMPをはじめ、諸外国のGMPもこの要件にまとめられていると考えられている。
GMP三原則は以下の3つの要素から構成される。
- 人為的な誤りを最小限にすること
- 医薬品の汚染及び品質低下を防止すること
- 高い品質を保証するシステムを設計すること
これらの原則は、WHO-GMPを参考にして発展したものと考えられている。
GMP三原則の歴史的背景
GMP三原則を最初に提唱した個人や組織は明確には特定されていない。
しかし、WHOが策定したGMPの基本的な考え方が、現在のGMP三原則の形成に大きな影響を与えたと考えられている。
GMPは1960年代のアメリカにおける薬害問題を契機として発展した。特に1962年には、アメリカ食品医薬品局(FDA)が生産管理・品質管理の基準を法制化し、これがGMPの基礎となった。この法制化の背景には、サリドマイド事件などの深刻な薬害問題があり、医薬品の安全性確認の重要性が社会的に再認識されたことが大きく影響している。
GMPは時代とともに進化を続けている。医薬品製造における品質保証の考え方は、様々な事例や経験を通じて継続的に改善され、より包括的なシステムへと発展してきた。
国際的な展開
1969年にWHO(世界保健機関)は「WHO-GMP」を策定し、加盟国に対してGMP証明制度に基づく医薬品貿易を行うよう勧告した。この勧告を受けて、各国で独自のGMP導入が進められることとなった。
日本においては、以下の段階を経てGMPが整備された。
1974年:「医薬品GMP指導基準」として公示
1980年:製剤GMPとして施行
1982年:原薬工業会でGMP委員会を発足し、原薬GMP自主基準案を作成
1988年:局長通知として原薬GMP基準が示される
1994年:原薬を含む医薬品GMPが公布
GMP三原則の基本思想
GMP三原則の根底にある思想は、「誰がいつ作業しても、必ず同じ品質・高い品質の製品を作る仕組みを構築しなくてはならない」というものである。この思想は、医薬品製造に関わる者が、いかなる場合にも医薬品を使用する患者と医薬品を製造する作業者の安全確保を最優先しなければならないという考えに基づいている。
FDAの役割と活動
FDAの前身である食品医薬品局は1906年に設立され、1930年に現在の名称となった。FDAは食品、医薬品、化粧品、医療機器、動物薬など、消費者が日常生活で接する機会のある様々な製品の安全性と有効性を確保することを目的としている。
FDAの主な活動は以下の通りである。
- 製品の審査・承認
- 市場に出回る製品の安全性確保
- 製造業者の規制監視
- 不良品のリコール命令
- メディアやSNSを媒体とした製品情報の監視
- 違反品の取り締まり
FDAによるGMP推進
FDAがGMPを推進した主な理由は、医薬品の安全性と有効性を確保し、国民の健康を守るためである。
FDAは以下の活動を通じて医薬品の品質保証を行っている。
- 医薬品の市場投入前における厳格な検査の実施
- 臨床試験の監督による、治験の倫理的実施とデータの正確性確保
- 市販薬と処方薬の適切な分類・規制
- 医療専門家の指導下での処方薬投与の確保
結論
GMP三原則は、医薬品や食品などの製造における品質管理と製造管理の基準を実践するための重要な指針である。その起源はWHO-GMPの影響を強く受けており、FDAやWHOなどの国際機関による継続的な取り組みによって発展してきた。
「誰がいつ作業しても、必ず同じ品質・高い品質の製品を作る」という基本思想は、患者の安全確保を最優先するという医薬品製造における普遍的な価値を表している。