Blind Complianceについて

Blind Complianceについて

筆者が製薬企業や医療機器企業でコンサルテーションをしていてしばしば感じることは日本の企業は盲目的にルールに従うつまり”Blind Compliance”の状態が多いということである。
日本人の特性として何らかの基準や標準を定めてもらうと楽でありその基準や標準を盲目的に遵守しようとする。
とかく日本人は基準が好きである。
日本における GMP は「医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準」と名付けられている。しかしながら GMP の条文のどこを選んでも基準は記載されていない。
筆者がセミナーやコンサルテーションを実施している際にも「何か判断するための良い基準はありますか。」といった質問をしばしば受ける。
基準を示してもらった方が楽なのであろう。自身の頭で考えることを放棄してしまっている。

リスクベースドアプローチ

現代はリスクベースアプローチの時代である。
各社が製造販売している製品のリスクやプロセスのリスクにしたがってコンプライアンスにかける時間労力コストはそれぞれ異なるものとしなければならない。
またそれらの判断基準を根拠を持って示さなければならない。
平成24年4月1日から施行された厚労省の「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」ではカテゴリー分類が示されている。カテゴリーによっては作成すべき成果物が異なるというものである。
しかしながら、諸外国のコンピュータ化システムバリデーション(CSV)に関する規制要件において、カテゴリー分類を用いている例は全くない。
ほとんどの規制当局ではリスクベースアプローチを要求しているのである。
このように何らかの基準を与えられると日本企業はそれを遵守しその通りに実行しようとする。
つまり日本の企業は自分たちが頭で考えるということが極めて不得意であると言える。
筆者がコンサルテーションを実施していて、SOP を参照した場合「何でこのようなプロセスになっているのか」を尋ねたところ、よくわからないけれども当社では昔からこのやり方を実施していると言った回答をしばしば受ける。
自身の作業や業務の目的やゴールを考えていないからである。


クリティカルシンキング

日本の企業はクリティカルシンキング(批判的思考)も不得意である。
クリティカルシンキングにおいては前提を疑ってかかるということも重要である。
当該プロセスや作業の目的は何であるかを常に考えることが重要である。
医薬品や医療機器の製造において重要なことはその品質を保証し患者の安全性を担保することである。
決していたずらに記録を多く作成することではない。記録のほとんどはその後使用されることはなく、単に査察を受けるためだけに作成することになる。
企業は査察のために仕事をしているのではなく、あくまでも患者やユーザーのために業務を遂行しなければならないはずである。
また、どの記録に署名が必要かとか、承認には手書きの署名が必要かとか、FDA査察の際には署名入りの記録を見せないといけないのかといった質問も多い。
それらの質問はナンセンスである。署名と製品の品質や患者の安全性は直接影響しない。手続きが重要なのではなく、結果が重要なのであって、自身の業務プロセスは自身がプロフェッショナルなのであるから、根拠をもって堂々と説明できれば良いではないか。
もしFDA査察官から、記録のコピーを要求された場合は、署名入りの原本のコピーを手交すれば良い。査察中に署名入り(紙媒体)の記録を探してきて、査察官に署名を見せなければならない訳ではない。

「スコッティ」のデザインはクリティカルシンキングにより決められた

ティッシュペーパー「scottie」のパッケージリニューアルのために、世界各国からおよそ20人ものデザイナーを集めて、国際コンペが開催された。
デザインの前提条件として「花柄であること」と「与えられたロゴを使うこと」が伝えられた。
松永 真氏はシンプルで何一つモノを置いていない部屋なら花柄でもいい。でも、ゴチャゴチャした部屋の中で生活用品として使うティッシュペーパーが花柄だったら邪魔だと考えた。
自分でも欲しいと思えるのは、部屋の片隅にソーッと置けるくらいの、シンプルな真っ白い箱だった。
さらに山陽スコットが用意していたロゴは、とても基準を満たすものではなかった。松永 真氏は一からロゴを作り直した。
ティッシュペーパーが持たなければならない「やさしさ」や「なめらかさ」を持つ柔らかいロゴにした。
結果的に松永 真氏が優勝し、スコッティのデザインに採用されたのである。
このように前提や既成観念(思い込み)を疑ってかかり、本来の目的やゴールは何であるかと言ったクリティカルシンキングが求められる 。

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