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R-MAPとは
R-MAPとは
リスクの定義は「危害の発生の確率とそれが発生したときの重大性の組み合わせ」である。
これを2次元にプロットすると非常に単純である。縦軸に発生確率、横軸に危害の大きさを配置する。
例えば危害が大きくて発生確率も大きい場合、これはHigh×High=Very Highであるため真赤となる。逆に危害も小さくて発生確率も低いものはLow×Low=Very Lowで緑色となる。
この表のことをR-MAP法と呼ぶのである。
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このR-MAPでは、それぞれのセルにレーティングを行う。例えば重大性に関して無視できる、軽微な、きわどい/深刻な、重大な、破局的というように分類する。
確率についても、頻繁、可能性が高い、時々、僅かに、起こりそうにない、まず起きないというように分類する。赤のところがAである。黄色のところがBである。緑のところがCである。
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AとBには数字がA3、A2、A1のように振ってある。これは、あと何個下に下げたら次の領域に行くかという数字である。A3の場合、3つ下に行けばBの領域となるということを示す。なぜ下方向かというと発生確率を下げることは出来るが、重大性を下げることは困難であるためだ。
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緑色の領域(Cの領域)は、受容可能である。これは患者や消費者がこれぐらいのリスクであれば受容してもよいという範囲である。これを安全と呼ぶ。
例えば、冬に使用する携帯用のカイロがある。貼るタイプのものがあるが説明書に「直接肌身に貼らないでください、低温やけどの恐れがあります」と記載されている。すなわちリスクは低温やけどである。しかし、低温やけどというのは、ユーザーからすると受容可能である。そのぐらいのリスクであれば受け入れてよいというのが、受容可能な領域となるということである。
一方で、赤色の領域は開発中止である。ここは、当該の設備や装置システムを使用して医薬品を製造する、あるいは研究開発をすることができない領域である。
悩ましいのはこの黄色の領域である。黄色の領域は、ALARP(As Low as Reasonably Possible)領域と呼ぶ。
ALARPでは、可能な限り合理的にリスクを低減することを求める領域である。ただし、受容可能ではない。
なぜ可能な限り合理的であるかというと、費用の問題である。すなわち、資金を投じれば、リスクは低減する可能性がある。
しかしながら、過度に資金を投じると、製造コストや研究開発コストが増加する。その場合、企業が費やしたコストは薬価や医療費などに転嫁されるのである。結果的にそういった費用は患者負担となるのである。
したがって、過度の資金を投じることなくできる限りリスクを低減することを求めるのが、このALARP領域(Bの領域)となるのである。ALARP領域については、ベネフィット/リスク分析を実施する。
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ベネフィット/リスク分析というのは、例えば抗がん剤などがそうである。抗がん剤には強い副作用があるものの、当該医薬品以外には治療の選択肢がない場合は、リスクを超えるベネフィットがあるからこそ、投薬するのである。患者にインフォームドコンセントという十分な説明に基づいた同意を得て投与するのである。
ただし、ここで問題があり、Bの領域が例えば100個あった場合どうなるかという話である。Bの領域は受容可能ではない。患者やユーザーが受容できないリスクが、例えば2つや5つであれば許容されるかもしれない。
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しかしALARP領域ではあるとはいえ、受容できないリスクが100個あればこれはもはや1個上なのである。このようなものは受け入れられないということとなる。このような全体的な残留リスク評価も必要となってくるということである。