医薬分業の理由

現在、病院で診察を受けると、医師から処方箋を受け取り、別の場所にある薬局で薬を受け取ることが一般的となっている。しかし、以前は異なる仕組みであった。なぜ、このような変化が起きたのか、その背景を解説する。

過去の医療体制

明治時代から長きにわたり、日本の医療機関では診察後にその場で薬を受け取ることが一般的であった。医師が診察し、そのまま薬を処方する仕組みであり、患者にとっては利便性が高いものであった。しかし、この仕組みにはいくつかの課題が存在していた。

公式な理由:安全性の向上

医師とは別に、薬の専門家である薬剤師が薬をチェックすることで、より安全な医療を提供できるというのが、公式な説明である。異なる医療機関から処方された薬との相互作用や重複投薬のチェックが可能となり、医療の質を高められるとされた。

本質的な理由:経済的・制度的背景

しかし、より本質的な理由が存在していた。その主たるものは以下の二点である。

第一に、医療費の適正化という課題があった。従来の仕組みでは、医師が薬を処方する際の価格差による利益が大きく、これが医療費高騰の一因となっていた。この状況を改善する必要があった。

第二に、薬局経営の規制緩和という側面があった。医療機関は医療法人という特別な形態でしか経営できないのに対し、薬局は株式会社として経営することが可能である。これにより、大手企業や外資系企業が薬局チェーンを展開することが可能となった。

分業化による影響

この制度変更により、プラスとマイナスの両面の影響が生じることとなった。

プラスの影響としては、薬剤師が薬の専門家としての役割を確立し、様々な企業の参入により24時間営業の薬局が登場するなど、サービスの向上が見られた。

一方、マイナスの影響としては、診察後に別途薬局に行く必要が生じ、患者の待ち時間が増加した。また、大手薬局チェーンの台頭により、地域の小規模薬局が減少するという課題も浮上している。

今後の展望

近年では、オンライン服薬指導や電子処方箋など、新しい仕組みが導入され始めている。今後は利便性と安全性のバランスを考慮しながら、さらなる改善が進められていくことが予想される。

医薬分業は、単なる薬の受け取り方の変更ではなく、医療の安全性、経済性、社会制度が複雑に絡み合った大きな制度変更であった。医療制度は今後も社会の変化に応じて進化を続けていくことであろう。

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