第7章: 厚労省との早期相談の必要性
7.1 相談の意義
医療機器開発において、厚生労働省との早期相談は極めて重要な意味を持ちます。特に革新的な医療機器の場合、既存の規制の枠組みでは判断が難しい事例も少なくありません。このような場合、開発の早期段階から当局と相談を重ねることで、開発の方向性を確認し、必要なエビデンスを明確化することができます。
厚生労働省との相談を通じて、製品の開発方針が当局の考え方と整合しているかを確認できます。これにより、後になって大きな方針変更を強いられるリスクを軽減することができます。私の経験では、早期相談を実施した案件の方が、承認までの道筋がより明確になり、開発期間の短縮にもつながっています。
また、相談を通じて必要な試験データや評価項目を明確化することで、過剰な試験実施を避けることができます。これは開発コストの適正化にも寄与します。特に、新規性の高い医療機器の場合、どのような評価が必要となるかを事前に確認できることは、極めて重要です。
7.2 相談のタイミングと対象部署
医療機器の開発段階に応じて、適切なタイミングで相談を実施することが重要です。開発初期段階では、医療機器該当性や分類の確認から始めることが一般的です。これは製品の規制上の位置づけを明確にし、その後の開発戦略を立てる上で重要な意味を持ちます。
開発段階に入ってからは、品質や安全性に関する具体的な相談が可能です。特に重要なのは、非臨床試験の範囲や臨床試験の必要性についての確認です。これらの判断は開発期間とコストに大きく影響するため、当局の考え方を事前に確認することが望ましいと言えます。
承認申請前の段階では、申請データパッケージの充足性について相談することができます。この段階での相談は、申請後の審査をスムーズにする上で非常に有効です。不足データの追加要求などによる審査期間の延長を避けるためにも、事前の相談は重要な意味を持ちます。
相談の対象部署は、案件の内容によって異なります。医療機器の該当性や分類に関する相談は医療機器審査管理課が、承認申請に関する相談はPMDAの医療機器審査部が主な窓口となります。まずは案件の性質に応じて、適切な相談窓口を選択することが重要です。
7.3 相談準備のポイント
効果的な相談を行うためには、十分な準備が必要です。最も重要なのは、相談の目的を明確にすることです。漠然とした相談では有益な助言を得ることは難しく、貴重な機会を無駄にしてしまう可能性があります。
相談資料の作成では、製品の概要や開発状況を簡潔かつ正確に説明することが求められます。特に、製品の特徴や新規性、想定される使用方法などについて、明確な説明が必要です。また、これまでの開発経緯や検討内容についても、簡潔にまとめておくことが重要です。
相談事項は具体的に絞り込むことが効果的です。一回の相談で扱える議題には限りがあるため、優先順位を付けて臨む必要があります。また、各相談事項について、自社の見解を整理しておくことも重要です。単に質問するだけでなく、自社としての考え方を示した上で、その妥当性を確認する姿勢が望ましいと言えます。
相談後のフォローアップも重要です。相談での指摘事項や助言は、文書として正確に記録し、社内で共有する必要があります。これらの記録は、その後の開発方針の決定や申請資料の作成において重要な根拠となります。また、必要に応じて追加の相談を行うことも検討すべきです。
相談に臨む際は、開発チームのメンバーだけでなく、必要に応じて専門家のサポートを受けることも有効です。薬事コンサルタントなど、規制当局との相談経験が豊富な専門家のアドバイスは、相談の準備や実施において大きな助けとなります。
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