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7.4 管理医療機器の申請

管理医療機器(クラスⅡ)の申請は、一般医療機器より厳格だが高度管理医療機器よりは簡素な手続きで行われます。管理医療機器は、使用に際して管理が必要とされる医療機器で、不具合が生じた場合でも人体へのリスクが比較的限定的であるものが該当します。

管理医療機器の認証制度とは

管理医療機器は基本的に「認証」という仕組みで申請を行います。認証には以下の2つのタイプがあります:

認証タイプ実施機関適用条件
第三者認証登録認証機関認証基準が定められている管理医療機器
大臣認証厚生労働大臣(PMDA)認証基準がない管理医療機器※

※大臣認証は現在はほとんど運用されていません

第三者認証のプロセス

第三者認証は認証基準が定められた管理医療機器に適用される制度で、PMDAではなく民間の登録認証機関によって審査が行われます。

  1. 認証基準の確認:対象製品に適用される認証基準があるか確認します
  2. 登録認証機関の選定:担当分野に応じた登録認証機関を選びます
  3. 認証申請前相談:必要に応じて登録認証機関に事前相談を行います
  4. 認証申請資料の作成:基本要件基準への適合性を示す技術文書を作成します
  5. 申請:認証申請書と添付資料を登録認証機関に提出します
  6. 審査:書類審査と必要に応じて実地審査が行われます
  7. 照会対応:審査中の質問に対応します
  8. 認証取得:審査に合格すると認証書が発行されます

第三者認証に必要な提出資料

認証申請には以下の資料が一般的に必要です:

  1. 認証申請書(様式63)
  2. 添付資料(技術文書)
    • 基本情報(製品概要、使用目的、構造・原理など)
    • 基本要件基準への適合性を示す資料
    • 認証基準への適合性を示す資料
    • 物理的・化学的特性に関する資料
    • 電気的安全性・電磁両立性(EMC)に関する資料
    • 生物学的安全性に関する資料
    • 安定性・耐久性に関する資料
    • 性能に関する資料
    • リスク分析に関する資料
    • 製造方法に関する資料
    • 添付文書(案)

認証審査のポイントと対応戦略

  1. 認証基準への適合証明
    • 認証基準に示された規格への適合を示す試験データを準備します
    • 自社試験と第三者試験の使い分けを戦略的に行います
  2. 同等性証明の明確化
    • 認証基準で引用されている既存品と同等であることを明確に示します
    • 相違点がある場合は、その相違が安全性・有効性に影響しないことを示します
  3. 審査期間の短縮ポイント
    • 認証基準に準拠した資料構成で申請します
    • 認証機関との事前相談を活用し、要求事項を明確にします
    • 試験報告書は該当規格の要求事項を満たす形式で作成します

認証申請の実務上のヒント

  1. 認証機関選び
    • 対象製品に関する審査実績のある認証機関を選定します
    • 手数料、審査期間も考慮して選びます
    • 事前相談の対応の良し悪しも選定基準にします
  2. 時間とコストの最適化
    • 審査期間:一般的に3〜6ヶ月(製品の複雑さにより異なる)
    • 申請費用:登録認証機関によって異なりますが、約50〜100万円程度
    • 試験費用:必要な試験により大きく異なります(数十万〜数百万円)
  3. よくある不備と対策
    • 基本要件基準適合性チェックリストでの証拠書類の不足
    • 試験基準からの逸脱箇所の説明不足
    • 添付文書の記載不備

新興企業のための認証取得戦略

  1. シンプルな製品から始める
    • 認証基準が明確で審査実績の多い製品区分から参入を検討します
    • 製品バリエーションは最初は最小限にします
  2. 外部リソースの活用
    • 試験機関への依頼と自社試験の最適な組み合わせを検討します
    • 申請書作成代行サービスや薬事コンサルタントの活用を検討します
  3. リスクベースのアプローチ
    • 製品のリスクが低い部分と高い部分を区別し、リソースを重点配分します
    • 過去の認証事例を参考にして、審査で論点となりやすい部分を重点的に準備します

製品例とその認証戦略

製品例特徴認証戦略のポイント
電子体温計測定精度が重要、患者接触あり測定精度の検証、生物学的安全性評価に注力
超音波診断装置画像処理性能が重要、操作性画像性能検証、EMC対策、ユーザビリティ評価
血圧計測定精度、耐久性が重要測定精度の検証、臨床的妥当性の確認
歯科用充填材生体適合性、材料強度が重要生物学的安全性、物理的・化学的特性評価

管理医療機器の認証取得は、高度管理医療機器の承認取得と比較して手続きが簡素化されており、スタートアップや新興企業にとって参入障壁が比較的低いことが特徴です。認証基準が整備されていることで、要求事項が明確であり、計画的な開発・申請が可能です。適切な準備と戦略により、効率的に認証を取得することができるでしょう。