第1章 GMPの概要
プロセス産業とディスクリート産業
製薬業界はプロセス産業と呼ばれています。プロセス産業とは液体を原材料とする製造業のことです。たとえば鉄工、石油、塗料、医薬品などが該当します。一方、ディスクリート産業は個体を原材料とする製造業で、自動車、電子部品、医療機器などが該当します。
プロセス産業では液体を使用するため、1トンの原材料を投入しても製品として出るのが時に1.1トン、時に0.9トンとなります。これは季節変動が原因となっており、夏場は温度が高く湿度も高い、冬場は温度が低く湿度も低いという変動要因があるのが、プロセス産業の特徴です。ディスクリート産業では、たとえばねじ1本の数が変わることはありません。
医薬品はプロセス産業であり、かつ装置産業でもあります。医療機器はドライバー1つで組み上げることも可能かもしれませんが、医薬品は人手だけで作ることはほぼできず、装置が必須となります。これを構造設備と呼びます。原薬では反応槽や発酵槽、製剤設備では混合機、打錠機、滅菌機、乾燥機、PTP包装機などの装置があって初めて製造が可能な産業です。
医薬品の規制目的(厚生労働省、FDA等)
医薬品の規制目的は、厚労省、米国FDA、EUも同じです。良質高度な医療製品の国民への提供というミッションと、医薬品の安全性と有効性規制担保による国民の健康被害防止というミッションがあります。
上下のミッションは矛盾する面があり、上は自動車でいうアクセル、下はブレーキのような関係です。良質高度な医療製品を迅速に国民に届ける必要がある一方で、営利目的や、うっかりミス、ポカミス、ヒューマンエラー、設備の故障などで安全でない医薬品を出荷することは避けなければなりません。
What と How
第11条で「製造業者等は、品質部門に、手順書等に基づき、次に掲げる製品の品質管理に関わる業務を計画的かつ適切に行わせなければならない」と定められています。しかし、「計画的」とは何か、「適切に」とは何か、具体的な記載はありません。省令本文を読んだだけでは、具体的に何をどうすればよいかはわかりません。