資源の運用管理(その1)
【連載】ISO-13485:2016対応の要点
【第4回】資源の運用管理(その1)
資源(リソース)とは何か
資源(リソース)とは、人・もの・金のことである。
ISO-13485:2016の6章は「資源の運用管理」であり、人(6.2 人的資源)、もの(6.3 インフラストラクチャー)について記載されている。
また「6.4 作業環境および汚染管理」も「6 資源の運営管理」に記載されており「6.4.1 作業環境」と「6.4.2 汚染管理」から成る。
ISO-13485:2013では、汚染管理は作業環境に含まれていたが、独立した箇条となった。
6 資源の運営管理
6.1 資源の提供
6.2 人的資源
6.3 インフラストラクチャー
6.4 作業環境および汚染管理
6.4.1 作業環境
6.4.2 汚染管理
人的資源
ISO-13485を実践し、医療機器の安全性および品質を確保することは大切である。
品質マニュアルやQMSを文書化するだけの形骸化された品質管理・品質保証活動ではその目的は達成できない。
プロセス(QMS)と要員(人)は、車の両輪である。
どちらかが欠けても良い結果にはならない。
医療機器各社では力量表(Skill Map)を作成しているものと思われる。
しかしながら「力量」の意味をほとんど理解していないケースを多く見かける。
ISOでは「力量」(competence)を「意図した結果を達成するために知識及び技能を適用する能力。」と定義している。
つまり力量には知識(knowledge)のみならず技能(skill)が必要である。
知識は座学(教育)で得ることができる。しかしながら技能は、訓練(OJT)や経験を積むことによって修得するのである。
自動車の免許に例えてみよう。
学科教習で得られるものが「知識」である。しかしながら交通標識や交通ルールを覚えたからといって自動車を運転することはできない。
路上教習(訓練)によって「技能」を身に付けるのである。
しかしながら初心者では安全に公道を運転することは困難である。
何が必要かというと「経験」である。ペーパードライバーでは困る。
また注意したいのは、「知識」や「技能」をもっていたとしても、「意図した結果を達成」できなければ「力量」はないと言わざるを得ない。
筆者がコンサルティングをしている中で、各社の力量表(Skill Map)をレビュする機会が多い。
多くの場合、「QMS省令を理解している」「SOPを理解している」などと記載されている。
これでは全く力量にはならない。
QMS省令を理解したり、SOPを理解することは当たり前である。
それらは教育を受け、知識を付けるだけのものである。
力量表では、「~できる」という表現を使用する。
例えば「リスク分析ができる」「半田付けができる」「苦情に相当するかどうかを識別できる」などである。