10.2 不具合報告制度
医療機器の不具合報告制度は、市販後の安全性確保において中心的な役割を果たし、製造販売業者に法的義務として課せられています。この制度により、医療機器の使用に関連する安全性情報が収集・分析され、患者保護のための適切な措置が講じられます。
不具合報告の法的根拠
不具合報告制度は薬機法第68条の10に基づくもので、製造販売業者は以下の場合に厚生労働大臣への報告が義務付けられています:
- 医療機器の使用によって死亡または重篤な健康被害が発生またはそのおそれがある場合
- 医療機器が適正な使用目的・方法で使用されたにもかかわらず、死亡または重篤な健康被害が発生するおそれがあることを示す研究報告を入手した場合
- 外国で同一の医療機器について重大な不具合等が発生し、措置が実施された場合
報告期限と方法
報告期限は不具合等の重篤度や情報入手経路により異なります:
- 15日報告:死亡または重篤な健康被害が発生した場合
- 30日報告:治療のために入院または入院期間の延長が必要な症例等
- 定期報告:その他の不具合情報(半年または1年ごと)
報告方法は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の「医薬品副作用・医療機器不具合報告システム」を通じた電子的報告が基本です。
SaMD特有の不具合報告
SaMD(Software as a Medical Device)の場合、以下のような特有の不具合が報告対象となります:
- ソフトウェアのバグやクラッシュ
- データ処理エラーや誤った結果表示
- セキュリティ脆弱性や情報漏洩
- ユーザーインターフェースに起因する操作ミス
- 他システムとの連携不良
SaMDでは不具合の検知と報告のために、自動エラー検出機能やログ分析システムの導入が有効です。
不具合報告体制の構築
ベンチャー企業においても、以下の不具合報告体制の構築が必要です:
- 不具合情報の収集窓口設置(コールセンター、ウェブフォームなど)
- 収集情報の評価・分類プロセス確立
- 報告要否判断と期限管理の仕組み
- 社内関連部門への情報共有体制
- 報告書作成と当局提出の責任者設定
リソースに制約のあるスタートアップでは、安全管理責任者を中心とした効率的な体制構築と、必要に応じた外部専門家の活用が重要です。また、早期から不具合トレンド分析を行い、製品改善につなげる仕組みの構築も有効です。